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カクレマショウ

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体験活動の意味って。

2012-09-13 | └キャリア教育
今日の「学校と地域の協働実践セミナー」。



佐藤晴雄先生の講演「地域の力が子どもを成長させる~キャリア教育と教育支援プラットフォームの視点から~」は、東京の三鷹市の小学校の実践の紹介に始まりました。「アントレ教育つまり起業教育とキャリア教育の2つを生き方教育の柱に掲げた学校独自の取組です。アントレ教育の一環で、銀杏をコンビニの前で販売することになった子どもたち。最初、1袋150円で販売していたが、商売の「プロ」から、「こういう時は大人の財布のヒモも緩むんだからもっと値上げしていいんだ」と言われ、168円にしたというエピソードが面白かった。佐藤先生曰く、こういうことは学校の先生は教えてくれない…と。子どもたちは、状況を見て臨機応変に対応することの大事さを学んだことでしょう。

また、理論的なお話では、「体験」をキャリア教育に生かす意味について、

抽象的認識(「働くことは大切だ」など)
  ↓↑
半抽象的認識(「働くことは汗をかくことだ」)
  ↓↑
具体的認識(「親が会社で仕事をしている」)

この3つの段階を、「たとえば」というキーワードで「降ろして」いったり、逆に「ようするに」というキーワードで「昇って」いくことが大切だとおっしゃいます。今の学校では、この3つがうまくつながっていないと。

たとえば、「働くことは大切なんだよ」(抽象的概念)と先生が言葉で言っただけでは、子どもたちは本当にそのことを理解するまでに至らない。まず、働くことは汗をかいて生活を維持することなんだよといった半抽象的な認識まで降ろした上で、親が毎日会社に行って仕事をしていること、畑で汗水流して作物を育てていることといった具体的な事実に思いをはせる。そうすれば、子どもたちも「働くこと」が「大切だ」ということを、より実感を伴って理解することができます。あるいは、具体的認識をさらに深めるために、職場体験活動なり販売体験といった「体験」が重要な意味を持つ。

なるほどね。体験の意味をきちんと理論づけるとこうなるわけですね。

後半のパネルディスカッションでは、学校(中学校長)、企業(自動車ディーラー社長)、コーディネーター(教育支援プラットフォームの教育支援活動推進員)の三者が登壇し、佐藤先生のコーディネートで、それぞれの立場からキャリア教育の現状と課題について議論が行われました。

校長先生は、職場体験活動を中心としたお話をされていましたが、「職業」を体験するというよりも、「仕事」とか「働くこと」の大切さを知ってほしいというスタンスで行っているとおっしゃっていました。だから、職場についても子どもたちの希望ではなく、振り分けていると。このやり方には深く共鳴します。希望職種を選択させたとしても限りはあるわけだし、中学生に「職業」を選ばせる必要はないと私も考えています。むしろ、「したくない仕事」を選ばせるのも一つの手かと。葬儀屋さんに体験に行った子が二度と行きたくないと言ったそうですが、それは、葬儀屋さんの仕事がいかに大変で気を遣う仕事であるかということがよくわかったということの裏返しだと思うからです。校長先生もおっしゃっていましたが、どんな職業でも、「働く」ということがいかに大変かということを身を持って感じることが、中学生の職場体験の最大の目的だと思います。

自動車ディーラー(青森トヨペット)の安田社長のお話も非常に興味深いものでした。安田社長は、最近の新入社員は、「単一の価値観」でしか物事を判断できない傾向があり、働くことに対するモチベーションも低くなっているのではないかと危惧されておられます。職場体験に来る中学生たちを見ても、いったい何がしたいのか、何を体験したくて来ているのか、はっきり言わない。こうした中、社長は、あえて異なる価値観の人たちと交流できるような状況を作ったり、あるいは親を巻き込むなど、若い人たちの働くことへの意識を変えるべく地道な努力をされています。そういう努力をされていながらも、そういう動機づけを学校でももう少ししてくれたら…と注文もつきましたが。最後におっしゃっていた、会社のOBと中学生が一緒に職場体験をするというのは、すごくいいアイディアだと思いました。

推進員の方も含め、それぞれに含蓄のあるお話が聞けたパネルディスカッションでした。ただ、佐藤先生の前半のお話にあった、体験活動の意味づけという点まで掘り下げられなかったことが残念といえば残念。特に、中学校のキャリア教育として、またもや職場体験活動だけがクローズアップされていたことも。職場体験だけじゃないんだけどなあ…。職場体験活動を中学校3年間、あるいは小中高校12年間の発達段階の過程でどう位置づけるのか、それが一番大切だと思うんだけどなあ…。そして、それを企業側にもきちんと伝えること、つまり、学校がどんな子どもを育てたいのかを両者が共有することで、初めて、子どもたちにも企業にもWIN-WINの職場体験活動が成り立つと思うんだけどなあ…。

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