さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

【読書録】彩雲国物語(6)~欠けゆく白銀の砂時計~

2011-12-30 23:32:56 | 読書録
雪乃紗衣 作/角川ビーンズ文庫

何だか、恥ずかしいほど読み進むね。

読みながら色々思う。作者の雪乃紗衣という人は、いったいどういう略歴の人なんだろうかと。歳は私より17歳下。星座と血液型は同じだ。会社勤め経験があるのかどうか、色々略歴をサイト検索して調べようとしても、何も出てこない。ライトノベル作家だが、まだこの「彩雲国物語」シリーズしか書いていないようだ。
少女趣味とはいえ、お姫様で終わる話ではなく、官吏として出世していこうとする女性の物語である。組織の根回しや官職の上下関係などに関する記述が多いが、もし宮仕え経験なしで書いているとすると大したものである。だが宮仕え経験をしすぎると逆にこのように大胆な展開は書けないだろう。ある案件を通すために、工部(公共工事担当)尚書への面会を申し出るが、13回門前払いを食らう。でも結果的に彼女は頑張って、工部攻略に成功した。その方法とは、塀をよじのぼり、窓から工部に突入し、工部尚書と飲み比べをして勝利・・というものであったが、会社勤めが長いと、現実にはそううまく運ばないはずなので、そんな大胆なことは書けないだろう。

私はむしろ、社会人になってからの出世を夢見る少女達が、この作品を信じて、見通し無き飲み比べに走ったりしないだろうか心配である。今の私なら大丈夫だけど、もし17歳頃にこの作品と出会ってしまったら、単細胞な私は妙な方に突っ走るかもしれない。

今まで30年以上、小説を読むことに何の意義も見出さず、ずっと逃げ続けてきた私であるが、去年だったか「小説を沢山読むことで、人生をシミュレーションすることができ、それがもたらす効果について力説する著書」に出会ったことがある。確か池上彰氏のものだったと思う。それを読んでから私は小説を笑えなくなった。この作品について言えば、確かに少女趣味的ライトノベルかも知れないが、著者がいかに人間観察と人生シミュレーションを繰り返し、中国古典をよく読みこんで着想を得ているか、ということがうかがえて、頭が下がる思いである。ファンタジーだよね・・・とか笑う前に、「自分にこの作品が書けるかどうか」を自らに問うてみると、私には到底書けないと思われる。

秀麗の朝賀での衣装や雰囲気、それに対する国王・劉輝の様子などはなかなかよく描写されていた。お互いに仕事を通じて成長し、言葉や身振りが少ない中でも通じ合う何かが感じられる場面であり、大変ほほえましい場面であった。
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