彬子女王/PHP文庫
先般の天皇皇后両陛下のイギリス王室訪問を契機に、天皇陛下の著作とともに話題になっている本だと聞く。
本作は単に皇族の方の留学日記というだけでなく、研究者としての苦労や発見という点でも大変読み応えのある作品となっている。
英国で、日本美術の研究をする意義・・つまりその昔、日本人は自国の美術の価値を知らず、たくさんの美術品が海外に流出してしまうのであるが、日本の中でだけ研究していると、流出してしまったものと出会えない。大英博物館をはじめ、ヨーロッパの博物館の中にまだ眠っていて世に出ていない日本の美術品も結構あるのだ・・ということを改めて認識した。
そうした研究や大学生活以外にも、英国人はお皿を洗った時に洗剤をよくすすがず、洗剤がついたまま皿を拭いているなどいう驚愕するような情報も含まれていたりする。また留学をする時や、留学期間が伸びる時の、亡きお父上とのやりとりなどは心を打たれる。必ず留学記を書けというのもお父君の言葉だそうだ。
とても良いものを読ませていただいたという気持ちでいっぱいである。