徳仁親王/紀伊國屋書店
天皇陛下が皇太子時代に書かれた本で、オックスフォード大学留学時代について書かれた本を読む。
出だしは結構お堅い内容で、なかなか頭に入ってこなかったのだが、中盤から猛烈に面白くなってきた。
特にツボったのは、他の学生と同じ格好をしたいので、Tシャツジーンズ姿でいることが多かったが、それを日本人観光客に見つかり、「ウッソー」と言われたという話。最初、何を言われているか意味がわからなかった・・ってそりゃ、日本におられれば、面と向かって「ウッソー」などと言われることはないでしょうに。
確かに、私の学生時代、若い子たちがなんでもかんでも「ウッソー」というのはいかがなものか・・みたいな記事を読んだことがある。女の子が目の前で転んで、「ウッソー」と叫んで、そのまま立ち上がって去っていくような時代である。旅行者が想定外のところに想定外の格好をした陛下を見て、思わずウッソーと言ってしまうかもしれないが、しばらく意味が分からなかった・・というところにとっても上品さを感じた。通勤途中に読んでてこの箇所にツボり、午前中いっぱい楽しかった。
ちなみにそうした格好でディスコに行ったら、ドレスコードに引っかかって入れてもらえなくて、後ろの警護の人は「あなたは大丈夫です」って言われたらしいけど、そのままスゴスゴ帰ってきたっていう話も面白かった。
ヴィオラをお弾きになるので、やはり音楽系の話は充実していて、弦楽四重奏を仲間と相当たくさん弾いたようだ。ヘンデルと誕生日が同じで嬉しいっていう話とか、ベートーヴェンはここまでは弾けたがこれ以降は無理だったとか、ハイドンにはジャズの要素があるとか。ウッソー。
ヴォーン・ウィリアムスとかウォルトンとかイギリスならではの話が出てくるのも良いね。音楽だけでなく、ボートもテニスも山も・・・。イギリスにはあまり高い山はないらしいが、高緯度にあるせいか、日本より低い位置から高山植物が生えてる・・みたいな話は、山はてんで知らないけど生物部だった私には響く話だ。またテムズの水運について研究することになった理由・・そもそも道に興味があり、それはご自身が自由な外出ができない身だから・・っていうのはなるほどと思った。
いろんな失敗談も書かれており、洗濯機に詰め込みすぎて、洗剤を溢れさせた話、先生との約束をすっぽかした話なども正直に書かれている。しかしまぁ、研究も忙しいのに二年間でよくここまでいろんな経験をされましたなぁ。私自身、高校生でアメリカに1年留学した時は、学校の授業以外は、牛と遊んでるか、テレビを見てるか、絵を書いてるか、ピアノを弾いてるか、教会に行ってるか、合唱団の活動をしているかぐらいだったので、これが2倍の2年になったところで、陛下のような密な経験ができたとは思えない。本当に本当に良いご経験をされましたね・・と心から言える。