今日は、オケの練習が、自分が降り番のものの練習だったので、その時間を使って「Ryu's Bar Museum 松茸が食べられて美術鑑賞が256倍楽しくなってしまう会」という会に行ってきた。7月末に行ってきた、お食事とオペラの解説がセットになっていた会と同じシリーズの、講義付きお食事会である。
ちょっと私、疲れていて体調が本調子ではないこともあり、スマホを忘れて行ってしまったので、お食事の写真はなく、私が書いたメモだけ一部UPしているのだが、本当に勉強になり、参加してよかったと思う。
かく言う私、今のように音楽活動に夢中になる以前の若い頃、つまり文京区の独身寮に住んでいた頃、バス一本で上野に行けたので、やたら展覧会巡りをしていたのである。美術展で好きな絵を見つけ、その絵葉書を買ってきて、日記帳の表紙にすることで西洋絵画に親しんでいたのだ。またミッションスクール出だからキリスト教にも詳しいし、ギリシャ・ローマ神話には子供の頃から親しんでいる・・・そういう私でも、今日の解説を聞いて、ホント自分は何を見ていたのか・・と頭をガツンとやられた気分であった。
特に目から鱗だったのはアトリビュートとシンボルの話。
アトリビュートとは聖人や神々を区別する目印、トレードマークのことだが、最初に出てきた聖人の例を見て、「あっ!」と驚いた。
それは
聖カタリナ。
実は6月の蝶々夫人の公演で、ケイトの役をいただいた時、名前に込められた意味を考えて役作りに生かそう‥なんていう話が出て、早速自分で調べてみたところ、「ケイト(Cate, Kate)はキャサリン(Catherine, Katherine)の愛称の一つで、ギリシア語で「純粋」という意味を持つ「カタロス」(καθαρός, katharos)という言葉に由来するほか聖女アレクサンドリアのカタリナにも因む。ケイティ(Katie, Katy)、キャシー(Cathy, Kathy)、キティ(Kitty)などもキャサリンの愛称なので、同様。」などということが分かった。私が受けたのはプロテスタント教育だから、カトリックの聖人には疎いところがあり、その時は「カタリナって誰」と思いつつ、彼女が描かれた絵を見て「結構美人じゃん」としか思わなかったのであった。
今日、あらためて解説を聞きながら絵を見ると、横に車輪があり、自らは剣を持っている。車輪と剣が聖カタリナのアトリビュートであり、それは彼女が車輪にしばられて転がされて拷問を受け、最終的には剣で斬首されたことを象徴しているのだという。あ゛ぁぁぁ~、美人だとしか思わなかった私・・恥ずかし・・。
同じように聖人は、殉教した時どのように殺されたかということが、アトリビュートになっていて、例えば聖セバスティアヌスは、たとえ殉教の場面じゃなくても裸で体中に矢が刺さっている形で描かれるんだそうだ。聖人ってみんな同じように見えると思っていたけど、こういうことを知っておくと、絵を見ていて楽しいかもしれない。
キリスト教の世界だけでなく、ギリシャ・ローマ神話を題材とした絵にも同じようなアトリビュートがある。幼いころから好きだったボッティチェリの春。私はこの絵を見る時、三美神とフローラ、ゼフュロスに抱きつかれるクロリスしか視界に入ってこないでいたのだが、ヴィーナスとクビドとヘルメスもいたのね・・・って私は何を見てたんだか。ヘルメスは伝令の会だから翼が付いた帽子とサンダルがアトリビュート。これを知らないと単に果物をもぎとろうとしている野郎にしか見えない・・・。
宗教ではなく、観念が擬人化されていることもある。大鎌を持った翼のある老人は「時」を表している・・とか。
こういうアトリビュート以外にシンボルと呼ばれるものがある。なんとなく脈絡のないものが一緒にぐしゃっとおかれている静物画・・特にドクロなんかが描かれていると怪しい・・例えばドクロや火の消えたランプ、時計などは虚しさを表し、高価な輸入品(日本刀、外国の貝殻等)は富、書物は知識を表す等。西洋絵画にありがちなヴァニタス(「人生の空しさの寓意」を表す静物画)には、それを象徴するシンボルが描き込まれる。
ブロンズィーノ作の「愛のアレゴリー」は難解な作品で、周囲に描かれたさまざまなものにいろんな意味が込められているというが、私が以前この絵を目にした(実物ではなく本だったかもしれないが)時は、単なる妖しい絵だとしか思わなかったので、とても損をしていた気分になった。
なので、ルネッサンス期から19世紀半ばごろまでの西洋絵画(特に歴史画(含む宗教画)、風俗画、静物画)を見る時は、人物の持っている小物や背景、普通はなさそうな脈絡のないものはないか等に気を配ってみると、その絵に隠されたメッセージに気付きやすいということだろう。
若い頃知りたかった話であるが、逆に今だからこそじ~んと来る話なのかもしれない。興奮してメモりまくりの講義であった。
そのあとはおいしいお食事タイム。オーブンで焼いた松茸をそのまま手で割いて、塩コショウやオリーブオイルをつけて食べたり、ダチョウ肉のステーキ(ちょっと牛肉に似てる)を食べたり、通常の2倍くらい濃いプリンを食べたりと、楽しい時間を過ごした。
ダチョウのの羽や卵(空になったもの)も触ってみた。ダチョウの卵の殻って分厚いのね・・びっくり。両手の平を広げてダチョウの卵を持ってみると、何だかとても癒された。返す返すもスマホを忘れてきたのが残念だが、次回もこういう会に参加できたらいいなと思った。