一応、冷房のかかった部屋にいるはずなのに、水分を摂っても摂っても体から水分が失われていく。そして、一人暮らしなのに馬鹿みたいに洗濯機を回さなければならない季節がやってきた。
オリンピックも佳境。コロナ感染者も急拡大。日本の蒸し暑さにもみんなが苦しんでいる。
心臓の弱い私はスポーツ観戦ができない。それに時間もないのでオリンピックと向き合うのは主にネットニュースを通じてしかない。一応学生時代に体は動かしてはいたものの、そんな私がオリンピックについて語る資格などない。
それでも、選手たちの頑張る姿は、夏バテでなめくじのようになっている私に、何某かの活力をくれるのである。
コロナ禍かつ灼熱の今の季節にオリンピックを開くことの是非に関する議論とは切り離した上で、やはり努力の報われていく人たちの姿は輝いている。一方、メダルを期待されながらも敗退した人達についても、彼ら・彼女らの人生の中でそれをどう乗り越えていくのか、応援し続けたいものである。
開会式後、何となくだらっと結果だけを追っていた私の中に急に涼風が吹いたのは、卓球の混合ダブルスで水谷選手と伊藤選手が金メダルを獲得した時のことである。優しい顔をした高校生の水谷君におんぶされる、目力強い幼稚園児の伊藤さんの写真が心にズギュンと来て、以来2人が登場するネットニュースから目が離せなくなった。
混合ダブルスっていうのは、男子選手の球を相手チームの女子が受ける順番になった時、男子選手は相手チームの女子を潰しにかかるのが普通らしいね。だが決勝戦では男子でも受けるのが大変な中国の許選手のサーブを伊藤選手が見事に返している。許選手は試合後、伊藤選手を称えるコメントをしている。まさに一流は一流を知ると言われるが如く。
またどんなに伊藤選手の攻撃力が凄くても、それを相手チームに返されてきた時の球を男子選手が打ち返せないと諸刃の剣になってしまう。どんな球でも対応できる水谷選手と組んだからこそ、伊藤選手は存分に自分の技を出すことができた。混合ダブルスで以前伊藤選手と組んでいた別の男子選手が「悔しいけれど、僕ではあそこまで引き出せない。」とコメントしている。逆もしかりで、混合ダブルスとは両方ともが男女のトップクラスの選手でないと、力が発揮できないスポーツなのだな。
男女ペアの競技っていうとついついフィギュアスケートを連想してしまうのだけれど、日本は伝統的に男女ペア競技は苦手だというイメージがある。しかしまあ、12歳差の兄妹のようなペアが世界のトップに立てたというのはとても感慨深い。
金メダルを獲った余韻に浸る間もなく伊藤選手は女子シングルで戦い続け、日本の女子シングルでは初めてのメダルを獲った。銅メダルじゃ不服だろうけれど、混合ダブルスに続き、女子シングルでも分厚い扉をこじ開けたのである。
さて、このような情報をスポーツ観戦のできない私でも瞬時に得ることができるのは、ネットのおかげではあるのだが、ネットは反面あらゆる雑音の流れる場所でもある。SNSのダイレクトメッセージを使って、日本の金メダリストに激しい攻撃文が届く。また審判の判定等への誹謗中傷が各国のSNSで語られる。これは闇の側面だわね。
体操でも卓球でも柔道でも、二位の国の選手が日本の金メダリストをリスペクトし、褒め称えるシーンが映し出されていた。つまり強豪選手同士は国境を超えてお互いを認め合っているのである。アーチェリー団体の表彰台に登った韓台日9人が和気あいあいと自撮り写真に収まっている姿は大変微笑ましかった。
うるさいのは外野だ。かくいう私も外野なのであるが。
ということで、結果がどうであろうと、外野としては誰かを攻撃することなく、あたたかく見守っていきたいものである。