さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

金曜ロードショー「22年目の告白ー私が殺人犯ですー」を見て

2022-01-31 22:18:03 | 映画・番組等、各種鑑賞録

藤原竜也と伊藤英明と仲村トオル・・・3人の熱演の光る映画だった。

1995年、殺人の控訴時効が撤廃される前日までに起こった、連続殺人事件。時効経過後、自分が連続殺人犯の犯人だ・・と名乗り出た美青年役を藤原竜也が演ずる。告白本を出し、被害者の神経を逆撫でし、反省のかけらもない・・とんでもない冷血漢なのか・・・。

と、サスペンスなので、これ以上は描かないでおくが、ストーリーとしては面白く、後味も悪くなかった。

ただ、震災を生き残った人間や、外国の戦闘の死地をかいくぐった人間の心情として描かれる部分は本当だろうか? との疑問が残った。


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【読書録】隋の煬帝

2022-01-30 23:04:51 | 読書録

宮崎市定 / 中公文庫

この本はすごい面白い。あっという間に読んでしまった。

隋という国が起きる前の南北朝末期の状態や、唐の建国までを扱っている。南北朝の各王朝は、短命に終わったが、いずれも淫乱暴虐天子の出現によって滅びている。いくら歴史が勝者によって描かれ、前王朝の末期は悪い王だったからこそ新王朝にとって変わられたのだと描かれがちであることを割り引いて考えても、南北朝時代は暴力天子というか非行天子が多すぎなのである。それは時代の風潮であり、煬帝もその中の1人にすぎなかったということなのだそうだ。なので、隋は中国の南北を統一したという偉業を達成しながらも、まだまだ南北朝的というか、中国では時代区分的に、隋を南北朝末期に位置付けているそうな。

隋は北周を滅ぼして建国された。今、韓国ドラマの「王女ピョンガン」を見ているが、ピョンガンのいた頃の高句麗は、北周に朝貢していたようだ。北周って556ー581年という短命な王朝だったが、ちょうど、高句麗でピョンガンの父である平原王が王位についていた頃に相当する。北周は、華北を統一した4代目の武帝まではまともだったが、5代目の宣帝がとんでもない暗君で暴力・奇行天子だった。宣帝の皇后の父である楊堅は、皇帝に暗殺されそうになりながらも、権力を手に入れ、宣帝没後に残された8歳の静帝から禅譲を受けて皇帝に即位し、隋王朝を開いた。これが隋の文帝である。

文帝は優れた事績も残しているが、独孤皇后の言いなりで、長男を廃嫡し、次男の楊広(のちの煬帝)を皇太子にした。だが晩年、病の床でで、その選択が誤りだったことに気づいた文帝は長男を呼び寄せようとした直後に死亡した。煬帝が父を暗殺したのかどうかは定かではないが、唐代にできた「隋書」の中でも、本紀と列伝では書かれていることが異なり、列伝の方は暗殺説を取っているのだという。

煬帝の事績で有名なのが大運河であるが、この運河の長さは日本で言えば、青森から山口にまで達する長さだという。部分的にあった運河はつなぎ合わせたにせよ、想像を絶する大工事である。しかも作ったのは運河だけではない。高低差のないところは水が流れないため、船を動かすために綱で引っ張る必要があり、運がに平行に道路もつけられている。その道路には日除けになるように柳が植えられ、沿線に40箇所も離宮が作られた。そうして出来上がった大運河を使って豪華絢爛たる大行列を、何度も煬帝が行う・・・。

南北の水路を持たぬ中国にとって、運河は確かに誰かがやらなければならぬ事業であったとも考えられるが、そのやり方が相当に問題であり、労役に徴発されたら2人に1人は生きて戻れなかったという難工事。男だけでは足りず、女性も駆り出されたという。

外国に対しては、積極策をとった煬帝。朝貢国に対しては、王自ら来させるのが基本方針であったが、日本は小野妹子だけで済ませ、しかも隋から攻め込まれることもなかったのはいかに幸運というべきか。

そして、隋の息の根を止めることになった、3度の高句麗遠征。まるで先日読んだナポレオンのロシア遠征みたいである。煬帝は命運が尽き、南方へ逃げるが、そんな状態でも豪奢な生活がやめられなかった。ほとんどノイローゼ状態で、統治能力はなく、家臣2人に首を絞められて殺された。

その後のごたごたはなかなか面白く、特に、烏合の衆を集めて戦った李密という人物は非常に面白いが、最終的には李淵・李世民に降ることになる。李淵はどちらかというとぼーっと生きている感じの人で、息子である李世民に焚き付けられて挙兵したという印象をずっと持っていたが、李淵もなかなかやる人であることを知った。特に突厥式の騎馬戦術を真似て自軍を訓練し、騎兵の精鋭部隊を持ったことは、天下平定に対して大きな力になったはずである。李淵と煬帝とは母方のいとこ同士。そんな話も以前見た「武則天」のドラマに出てきたな。

ということで、とても書ききれないが、とても面白い本だった。


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遅まきながら・・ニューイヤー・・

2022-01-29 20:57:54 | ただの日記

今日はこちらのコンサートに出演しました。

歌ったのは、グノーの「ロメオとジュリエット」より「愛よ私を勇気づけて」。初めて人前で歌う曲。

2年前に初めてこの曲を聴き、すぐに歌いたいと思ったけれど、歌わせてもらえず、1年我慢。

ようやく昨年10月頃からレッスンで見てもらえるようになり・・でもフランス語の歌詞がやたら多く、特に冒頭と中間部に2箇所あるレチタティーヴォの言葉捌きがなかなか難しくて、音域も、たかだかハイC止まりなのに、曲全体が重いせいで、相当に難儀した。

今日は、この曲を何とか形にすることが出来たが、本番を意識していつも以上に感情を込めすぎて舞い上がってしまった箇所があり、まだまだ磨かなきゃいけないところが沢山あるなぁと思った。

あと、欲を言えば、もう少し痩せた状態で本番を迎えたかったけど・・・・

同窓同期入社の男性がお嬢さんと一緒に応援に来てくれた! お嬢さんはつい最近学校でロメジュリの劇をやったんだそうで、興味を持ってきてくださったそうだ。だがコロナ禍の感染対策で、ロビーでの挨拶は禁止。

素敵なプレゼントもいただいたので、ぜひお礼を言いたかったのだが、出演者が他の人の演奏を客席で聴くことはならず、ロビーに入る手段はなし。寂しいけれど、オミクロン株拡大下では、その方が正解だわね。お嬢さんが喜んでくれてるといいんだけど。デブなおばさんが歌ってた・・という印象が残ってしまわないことを祈っている。

毎年出ていると、知った顔もちらほら。でも少し言葉をかわした程度で、ほとんど他人と接触することのない本番だった。


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「オスマン帝国外伝〜愛と欲望のハレム」〜シーズン4(37〜41)を見て

2022-01-28 23:42:57 | ドラマ鑑賞

先週はムスタファを売ったフリージハンに驚きましたが、バヤジットはムスタファに会い、自分は裏切っていないと主張し、ムスタファも犯人がフリージハンであることを知ります。つまりバヤジットについては妻よりも兄が大事ということでしょうね。母は違っても、ムスタファを慕うバヤジットとジハンギル。セリムだけは孤立していますが、スレイマン遠征中の留守を守る皇帝代理として頑張っています。ヒュッレム妃は、次の王座にはバヤジットよりもセリム・・と初めて思ったようです。

このドラマでは、シーズン3に出てきた子役の方が肖像画のセリムのイメージに近いですね。シーズン4で登場する大人のセリムにイケメンが起用されたことを考えると、このドラマの作者はセリム贔屓なのでしょうか。今週も、ファトマ皇女に対してサラッと言い返すセリムを見て、セリムやるじゃん・・と応援してしまう私なのでした。

しかしヒュッレムは落石により暗殺されそうになるし(代わりにアフィフェが亡くなった)、スレイマンは遠征先で暗殺されそうになるし、生き延びたと思ったら倒れるし、なかなか波乱の週でした。遠征の原因となったサファービー調イランのアルカス王子・・役に立たなかったですねぇ。本当、みんなの命を縮めるだけの無駄な遠征になってしまいました。

しかも、スレイマンの病状は重篤で・・痛風と熱病のダブルパンチのようですが、今週は、病名は明かされていません。彼はまた健康を持ち直すでしょうが、明らかに判断力が鈍っていますね。父を暗殺から救ったのに疎まれるムスタファ。でも熱で朦朧としながらうわごとのようにムスタファを呼ぶスレイマン。ムスタファを認めつつも信じられないんでしょうね。後継者をしっかり定めないことがこの王朝の悲劇。幸いにも妹ばっかりで、兄弟間の争いなく帝位についたスレイマンには、見えてないんでしょうかね。


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【100分de名著】日蓮の手紙

2022-01-27 23:42:19 | 読書録

まだ放映前だけど、テキストがあまりに面白いので一気に読んでしまった。

日蓮が、こんなに筆まめで、信者に寄り添う人だったなんて知らなかった。

特に日蓮がよりどころとした法華経は、男女差別のなかった原始仏教に回帰している経典であることから、女性の信者も多い。

弁護士さながらに、裁判への勝ち方まで指南する・・・彼自身が大変な苦労をした人だったからできることである。

末法思想のはびこる中、死後の別世界を尊ぶ浄土信仰とは真逆に、今を重んじたのが日蓮。

小学校の頃、鎌倉新仏教で、誰が何宗を興した・・というのを丸暗記し、中高の歴史でもそれ以上のことを鎌倉仏教について学ばなかった。キリスト教の学校に行っていたから、親鸞の悪人正機説なんかは校長先生がよく話題にしていたこともあり、禅宗系と念仏系の違いは何となくわかったが、南無阿弥陀仏と唱えるのと、南無妙法蓮華経と唱えるのに、いかほどの違いがあるのか全くわからなかった。

なんか、このテキストで良いことを知った気分である。

 

 

 


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【100分de名著】金子みすゞ詩集

2022-01-26 23:03:20 | 読書録

詩って難しい・・・。

私も、学生時代は、詩だの短歌だの書いてたことはある。

でも、大人になってからは、生き残るために「鈍感力」を磨いてきた。

今更、歌曲を歌うためにも詩と向き合わねばならない苦痛。

角質化した自分の心の壁を、元のみずみずしく柔軟なものにするには、相当苦労をしそうである。

金子みすゞさんの詩は、私には難しい。

これは本当に童謡詩なのか?

彼女の詩は、始まりは明るくとも、シニカルで暗く、怖く感じられる。

彼女の悲劇的な人生を知ると、何でそのような詩になったか分かるような気がするし、

立派な人だということもわかった。

だが、私の心は癒されない。

一生をかけて磨いてきた「鈍感力」とどう折り合いをつけていくのか、簡単に答えは見いだせない。


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【読書録】十字屋敷のピエロ

2022-01-25 23:21:29 | 読書録

東野圭吾/講談社文庫

この本はほぼ1日で読み切ったが、フィクションが苦手な私、推理小説に出てくる登場人物の多さに閉口する。家族ものだから、苗字が同じ人が多くて、しかも女性が多くて、誰が誰で、どんな関係やら、登場人物のページに何回も戻って確認しないと、おツムの悪い私は理解できないのであった・・・。

ま、あまり推理小説読まないし、頭もよくない私だけど、殺されそうなキャラは何となくわかるし、何らかの役割を持っている人は初めから匂っている。

十字屋敷という形だからこそ生きるトリックと、ピエロ目線の記述がポイントかな。

かなり思わせぶりだったけど、そうでもなかった人物とかもいて、若干肩透かし感はあるのだが、まあ仕方ないでしょう。


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【読書録】アナトミカル・ヴィーナス〜解剖学の美しき人体模型

2022-01-24 22:49:26 | 読書録

ジョアンナ・エーベンスティン著/布施英利監修/堀口容子訳/グラフィック社

これはまた、私の尊敬する先輩が訳した本。なんとも不思議な世界観。写真だけを遠目に見てギョッとされても困るので持ち歩き辛かったが、一気に読んだ。

解剖学的に実に正確に作られた、分解できる、美しくも妊娠した女性の像。教育的にも、実習的にも役に立ち、美術品でもあり、宗教がかってもいる不思議な造形。でもこれだけがポッと突然湧いてでたわけではない。

聖人の体を一部を教会に納める習慣、土葬の習慣、ペストの流行によるメメント・モリの考え方、土葬された遺体を引き出して朽ちていく様子を観察することが尊ばれた時代もある、そして人体解剖による研究と、リアルに再現するための鑞細工の技術・・・そういうものが結びついた一つの形態の中にアナトミカル・ヴィーナスがある。

ふと思い出したのは先日読んだ「椿姫」の原作。アルマンは、マルグリットの墓を移すため、すでに一旦別の墓に葬られたマルグリットの遺体と対面するのである。その時の記述は、私にとってカルチャーショックを感じるさせるものであった。私なら美しい思い出は、美しさとともに脳裏に刻んでおきたいと思うが、この人たちはそうではないのか・・・で、この本を読んで、背景となる死生観の違いや文化を知ってしっくり来たのであった。

もちろん、それは崇高な方向に向かうこともあれば、見せものとしての娯楽や性的な意味合いを持つこともある。去年コンクールで歌った歌曲の作曲家であるアルマ・マーラーも、彼女を恋しく思う男性により、彼女の等身大人形を作られてしまい、その人形が色々と連れ回されることで、アルマも恥をかかされたようである。ホフマン物語に出てくる人形(オランピア)とか、コッペリアとか・・そういえば、西欧には男性が人形に恋する話って多いね・・なんてことはこの本には書いてないけど、ついつい連想してしまった。

この本に書かれていることはとても壮大で、一言ではコメント出来ないけれど、最初から最後まで異文化を感じまくりだった。逆に自分が目をつぶってきた世界とも言えるわけで、体のあちこちにガタがきている今日この頃、改めて自分の身体を考える切っ掛けにもしていきたいと思う。


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ラズベリー・ビール

2022-01-23 22:38:15 | 飲めない奴のビール探訪

カルディで見つけたビール。昔、ラズベリー味のベルギービールを飲んだことがあるので、つい懐かしくなって、買ってしまった。

でもこれはスペインのビール(発泡酒)なのね。

飲んで見て、懐かしくも甘酸っぱいほろ苦さ・・・なんか人生みたいだ。


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映画「新解釈・三國志」を見て

2022-01-22 23:04:11 | 映画・番組等、各種鑑賞録

金曜ロードショーでやっていた「新解釈・三國志」を見た。

いやぁ〜とってもふざけている。佐藤二朗とムロツヨシが出てるだけでその展開は予想出来たが、大泉洋と小栗旬も悪ノリ、なんか、「レッドクリフ」と「鎌倉殿の13人」の壮大なパロディを、「今日から俺は!!!]」のノリでやってる感じ。っていうか、賀来賢人が演じる周瑜がまるで三橋なんだけど。金髪を長髪に変えただけなのか〜!

渡辺直美が、董卓と呂布をたらし込み、争わせる、時代考証的・絶対美女の貂蝉役だが、時代考証を言うなら、この時代は存在しない紫禁城でふんぞりかえってんじゃねぇよ・・董卓! とツッコミを入れて欲しかったんだろう・・きっと。

私も、奈良時代に生まれていればきっとモテたはずと言われたことあるんで、渡辺直美さんには同情致しますが。

と、ふざけてはいても、それなりにポイントを抑えている。ふざけすぎてて三國志ファンもいるかもしれないいけど、ほぉぉぉ〜ここで笑いを取りに来たかと、ちょっと感心しながら見ていた。

っていうか、ふざけてはいても、大泉洋の演技力はさすがである。最後、酔って将軍らしく振る舞う彼の演技は、さすが頼朝に抜擢されるだけのことはある堂々としたものだった。


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きなこ餅の新しい食べ方

2022-01-21 23:26:59 | 下手くそ料理帖

 

まるでタモリさんが好きな岩場のような形になったけど、これ、きな粉餅なのよ。

参考にしたサイトはこちら↓

https://www.buzzfeed.com/jp/maorikato/crispy-kinako-mochi

こんなふうに、フライパンに切り餅を押し付けて、薄いひらひらを作り、きなこを振りかけて黒蜜をかけただけ。

切り餅さえあれば、あっという間にできる信玄餅って感じ。

フライパンが空焚きにならないように、火加減注意だけどね。

たまにはこんな食べ方もいい。


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「オスマン帝国外伝〜愛と欲望のハレム」〜シーズン4(32〜36)を見て

2022-01-21 22:05:09 | ドラマ鑑賞

今週は、何と、フリージハンがバヤジットの元に留まるために、ムスタファを売った! 何て浅はかなのだろう。ま、イブラヒムとハティジェ皇女は史実では結婚していなかったのだから、その娘という設定のフリージハンもまた架空の人物ということになるのだが。

スレイマンの息子達はどいつもこいつも・・・オスマン帝国がスレイマン1世没後に下り坂になるのはあれじゃ仕方がないね。

その中で一応頑張っているのはセリムなのだが・・・彼はどうも酒と女をやめられず、今度は美人局というかハニートラップめいたものに引っかかり、金をせびられ続ける。せっかく皇帝代理に任命されたのに。すでに一番で商人を衛兵に殺させてしまったことで、大変評判を落としているセリム。今回も実からでた錆。悩むセリムにヌルバーヌーは、「あなたはこれから良心の呵責を背負って生きるのです」と告げ、セリムは自分を騙した夫婦を殺させ、家に火をかける・・・。気持ち良いまでにヌルバーヌーの言いなり。

しかし何故か私はセリムを応援してしまうのである。ヌルバーヌーは嫉妬深く、ヴェネツィア育ちであるから、トルコの皇子が後宮を持ち、自分以外を愛することを許さない。これまで打首になっても文句を言えないようなことをしでかしながら、セリムはヌルバーヌーを許すのである。強権を振りかざすこともできるのに、それはせずにヌルバーヌーの言うことを聞いている。二度も窮地を救われて、今後ますます尻に敷かれるだろうが、そんなセリムを見て「よし、セリム、よく我慢した」とか「よく決断した」とか無意識にエールを送ってしまう。最近「女房の尻に敷かれる」と言うような表現をあまり言わなくなったが、これはひょっとして賛辞なのでは・・と思い始めてきた。男性側に、心の広さと忍耐力と頭の柔らかさが無ければ、できないことなのであるから。

今週もう一つ不思議に感じたのは、スレイマン1世(1494-1566)の頃のトルコでは、まだコーヒーは一般的ではないらしいと言うこと。「イエメンから買い付けたのだが全然売れない」と嘆く商人から、売れ残りのコーヒー豆を入手した、元宦官のスンビュル。家で試作品を色々作っているところにヒュッレム妃がやってきて試飲。あら、ロクム(頭が痛くなるほど甘い求肥のお菓子)を食べながら飲むと美味しいじゃない・・と彼女は喜美、スレイマンにも飲まそうとするが、スレイマンは警戒して口をつけない。

先週の「チコちゃんに叱られる」で食後のコーヒーのことをやっていたが、原産地エチオピアからまずはイエメンに伝わったらしく、トルコの商人がイエメンから入手した・・と言うのはそれと整合性が取れている。一方、ウィーンにコーヒーが伝わったのは1683年のトルコによるウィーン包囲攻撃失敗により、トルコ軍が撤退した時に大量に残されていたコーヒー豆を使って、1685年にウィーンに初めてカフェが出来たという話がある。

ウィキペディアを見ると、1550年代にはイスタンブールにコーヒーを提供する店舗が開かれたという。ドラマ的にはスンビュルの出す店がそれに当たると言うことか。その頃スレイマンはまだコーヒーに抵抗があるわけだが、セリム2世の代にはイスタンブールだけでコーヒー店が600軒を超えるようになったのだという。セリムはスレイマン死後帝位につくが、8年しか玉座に座らなかったことを考えると、本当に10〜20年程度で爆発的に珈琲店が増えたということになるのだな。

話をドラマに戻すと、リュステムとミフリマーフ皇女の仲は崩壊寸前で、ミフリマーフはすでに離婚を決意。口論の切っ掛けとなったミフリマーフ皇女への差出人不明のラブレターは、ファトマ皇女による偽手紙と分かって、ミフリマーフの怒りの矛先がリュステムからファトマ皇女に向かったのでひとまずは夫婦仲は小康状態。リュステムはミフリマーフから離婚を切り出されて、可哀想なほど落ち込んでいるが、どうして自分が嫉妬深すぎるせいだって気づかないのかしらね。嫌われ者のリュステムだけど、落ち込んでいる姿を見ると同情してしまう。


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【読書録】椿姫

2022-01-20 22:33:10 | 読書録

デュマ・フィス作/吉村正一郎訳/岩波文庫

お世話になった古本屋さんで買って、去年の年末読み終わったのだが、まだ感想を書いてなかったので、備忘的に書いておこう。

いやぁ、私の文学オンチも酷すぎるというか、おおよその筋はオペラに何回も出てるから知っているのだが、それなのに小さい活字と古い紙と長たらしいセリフのせいでなかなか読み進めずに閉口した。

オペラでいうヴィオレッタは原作ではマルグリット、アルフレードはアルマンであるが、オペラと違ってアルマンはヴィオレッタの死に目に会えないわけである。マルグリットの家が競売にかけられ、この作品の語り手はある本を競り落とす。それは「マノン・レスコー」で、アルマンがマルグリットに贈った本だった。その本が縁で、語り手はアルマンと出会い、アルマンがマルグリットの遺体を新しい墓に移す時にも立ち会い・・・ということで、マルグリットの死後の競売とか、お墓のなかの遺体とのご対面のような場面から始まるので、物語に入り込むのに苦労した。

総じて、オペラよりかなり悲惨である。ヴェルディがいかに、これを美化して鑑賞に耐えうるオペラにしたか・・というのがよくわかる。娼婦の生活についてもよく描かれており、彼女が暮らしていくのにどのくらいのお金がいるか、彼女の友人がアルマンに細かく説明する場面なんかも含まれる。またアルマンの収入だけはやっていけないから、老公爵にお金を貢がせて、アルマンとの愛の生活に注ぎ込むような二重生活もしばらく続けていた。なのでマルグリットはオペラより現実的である。

しかし逆に、私はアルマンに全く感情移入できないのである。あまりに幼稚で愚かだ。それこそオペラ化して、イケメンが輝かしいテノール声でカッコよくハイCを出すぐらいのことをやって、その愚かさをカモフラージュしてくれない限り、見るに耐えない・・・なんてことは言っちゃいけないのかな?

ということで、読んでて苦しかったね。

 


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【読書録】すごすぎる天気の図鑑

2022-01-19 23:56:38 | 読書録

荒木健太郎/KADOKAWA

 POPなカバーの本だし、中身も写真やイラストがふんだんに取り入れられているのであるが、正直結構高レベルで細かく、難しいと思った。日頃、私が下ばかり向いて歩いているのと、完璧インドア派であることから、興味はあるけど疎い分野なんだよね。

本を読みながら、そういえばこの話、父がよく絵を描きながら説明してくれたなぁ・・などと懐かしく思う部分も結構あった。いつぞや、父が書いた積乱雲が林立している絵そっくりの状態が、夕方の中学校の校庭から見えて、「おっ!」と思ったら、その夜は嵐のような天気になった。そうか、あれはこの本によると、「線状降水帯」というのだな。積乱雲の動く方向の後ろ側で新たな積乱雲が次々と発生することから、その仕組みは「積乱雲のバックビルディング」というのだな。日頃、空をあまり見ない私でも、積乱雲だけはついつい見入ってしまうなぁ。

雲についてかなりのページを割いてくれているが、飛行機雲のこともきちんと書いてくれている。昔父が「飛行機が高いところを飛んでるとできるんだよ」と言っていたが、確かに低温な高い空で発生するだけでなく、空が湿っているほど長生きして成長するそうだね。1つの飛行機によってできる飛行機雲の本数は、エンジンの数によって決まってくるんだね。

あと、雨の粒は、漫画などでは先がとがって涙状になっているが、それはウソで本当はおまんじゅうみたいな形なんだとか、雷の落ちた場所でキノコがよく育つとか、2メートルの積雪が6m四方の家の屋根全体に積もっていれば、小柄な力士216人が屋根に乗っているのと同じ重量だとか、興味深い話もたくさんあった。

この分野、もう少しちゃんと勉強したい。先日見たレッドクリフでの諸葛孔明のように、空の雲を見て天気を読み、戦略を立てることができたらかっこいいなぁ。


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【読書録】すばらしい人体

2022-01-18 23:58:53 | 読書録

山本健人/ダイヤモンド社

本文が366ページもある分厚い本だが、やっと読み終わった。

とても面白かった。特に医学の歴史のところが面白かった。とても盛り沢山なので、どこからコメントして良いかわからないくらいだが、特に印象に残ったのが、ロベルト・コッホ(1843−1910)の話。かつての人類は、病気の原因は体液の乱れとか、有毒な瘴気といった実態の確認できないものを病気の原因と考えていたが、17世紀には目に見えない微生物の存在が知られるようになった。でもそれが病気の原因だと理解されるまでにまだまだ時間がかかったのだ。

コッホは病気にかかった人の組織を顕微鏡で観察し、病気に特徴的な細菌を次々と見つけ出すとともに、寒天培地を発明し、一種類の細菌を培養して増やし、それを動物に感染させ、病気をひき起こすかどうかを確認することによって、細菌が病気の原因になることを示した。コッホの弟子が北里柴三郎である。サイキンが病気を起こすことがわかったのが、こんなサイキンのことだなんて・・・。

面白いのが、コッホが最近を観察するにあたり、色素を使って細菌を染め分ける方法を編み出していた。コッホの弟子のエールリヒは、化学物質で特定の細菌を染められるのであれば、化学物質で特定の細菌を殺すこともできるのでは・・と考え、日本の秦佐八郎とともに梅毒の原因菌を殺す抗菌薬を作り出したのだと。

特定の細菌を染める話が、特定の細菌を殺す話につながっているのが面白い。

痛み止めの話では、先日「アンという名の少女3」にでてきた柳の葉の鎮痛作用の研究から、アスピリンが生み出されるまでの話が詳しく書かれており、改めて、興味深く読んだ。

最近は血液をそのまま輸血するケースはほとんどなく、各成分別の血液製剤を作り、それを投与するのだとか、製剤に放射線照射を行い、白血球が増殖する力を奪雨ことにより、投与された時に、リンパ球が増殖して攻撃が始まってしまうのを防ぐ・・という話なども知らなかった。(自分は不健康なので、献血は人生で1回しかしておらず、この辺の話は不案内だったなぁ。)

ということで、大変勉強になったが、分かったと思って満足せずに、逆に無数の疑問点をもつことで初めてスタートラインに立てるのだ・・と本書が諭しているように、これからも頑張って勉強していきたいと思う。


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