ユゴー/著 、佐藤朔/訳、新潮文庫
レ・ミゼラブル・・ダイジェスト版なら子供の頃に読んだし、大人になってからも読んだし、ミュージカルや映画なので知っているのであるが、原作を読むのは初めて。
原作は相当に政治的な話が含まれる・・というのは大人になって読んだダイジェスト版に書かれていたことであったが、いやはや・・ジャン・ヴァルジャンの登場する前、ミリエル司教の話に100ページも費やされるとは・・。しかも司教にはビヤンヴニュ閣下という別名もあり、ボーッと読んでるといつの間にか主語がビヤンヴニュ閣下になってて話を見失いそうになった。
ジャン・ヴァルジャンが登場してからはサクサク読み進んだが、そのあとファンチーヌが捨てられる話も前段が長くて疲れたが・・捨てられた瞬間の話には血も凍る思いがした。いい思いをさせて遊ばせて、子供まで孕ませて、急にいなくなるなんて本気で酷い。
ジャン・ヴァルジャンは姉の子ども達のために、1本のパンを盗んだ罪で投獄されたが、余罪として密猟もやってたから罪が重くなったんだな。かつ途中何度も脱獄を企てているから、19年間も牢にいることになった。
しかしようやく正式に出獄し、解放されたのに、黄色い身分証のせいで、宿にも泊まれず、前科者として様々な差別を受ける。マドレーヌという偽名で資産を作り、街の人のために働き、何度拒絶しても何度も乞われて市長になり、市民の生活を向上させ・・・でも執拗に追ってくるジャベール警部。確かに偽名で市長担ったのは悪いことかもしれないが、許されて出獄した人をそこまで追う? 暇なの?
色々あるが、当時の社会は前科者に厳しすぎ、犯罪捜査面でも非常に未熟で不公平であったことがわかる。自分と見間違えられて裁判にかけられている男を助け、自分こそがジャン・ヴァルジャンであると言うために、無理な距離を馬車で行こうとするジャン・ヴァルジャン。行けば全てを失い、自分が助けようとしている女性も助けられないのに、自分と葛藤しながら急ぐ様子はまるで走れメロス。そして、ジャン・ヴァルジャンだと決めつけられる別の男に対する酷い誘導尋問。顔が似てないのに、雰囲気で本人だと証言する人々・・・。
酷い時代だわ・・・こんな時代に生まれなくてよかった・・と思いながら1巻目を返却期限ギリギリで読み終わった。