kissing disease（キスによって広がる病気）と呼ばれるウイルスがある。Epstein-Barrウイルスがそれである。EpsteinとBarrはともに、このウイルスを発見した科学者のなまえである。私が興味を引いたのはもちろん、kissingというところで、結果、全人類の９５％以上が感染しているということである。通常はこの病気にかかっても、すぐに治る。だが、問題なのは、治っても、非常に長い潜伏期間を持って、このウイルスは人間の細胞の中で生き続けるのである。この間に、このウイルスは細胞を破壊しない程度に、さまざまなウイルスRNAやタンパク質を作り続け、少しずつ細胞内外の環境を変化させ、さらに潜伏感染細胞のヒト染色体に変異を蓄積させていく。これらが積み重なることで、細胞ががん化してしまうらしい。こうして、このEpstein-Barrウイルスは、感染した人に、がんを含むさまざまな病気を起こすことがある。だが、がんが怖くて、キスをためらうことなんてできるわけがない。（くちなし亭、2024.05.04）
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