風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

桜をゆらす

2010年04月16日 | 出版
『IQ84』という、頭の悪い学生の奮闘ぶりを描いたトラジ・コメディの第3巻が発売となり、大きな話題になっているようだ。そのため昨日、某紙の記者さんから、出版不況について取材の電話がかかってきた。『IQ84』を取っ掛かりに、出版の現況をレポートしたいという趣旨のようだ。
当然ながら、『IQ84』に小生が関心を持つわけがなく、手に取ったこともない。1、2巻のオモテを眺めて、箔押しまでしていることに気がついて、新潮社装幀室はさすがにいい仕事をしているなあと感心した程度である。そのうえ、こちらは不況云々に関係なく日々呻吟している身の上なので、あらためて出版不況について話せといわれても、いささかとまどってしまう。
一応、概況的なことから始まり、大手版元ほど苦しい状況にあること、某取次の新刊配本の総量規制という問題、新刊の仮払いという制度が自転車操業の元凶とは思えないこと、『IQ』は弊社にとってまったく関係ないことなどを述べておいた。
しゃべった内容がどのように記事になるのかはやはり気になるので、本日駅の売店でその某紙を購読してみると、小生が話した部分かなと思われるものも活字になっている。抜書きしてみれば、「この本を出せる新潮社は偉いし、村上春樹は素晴らしい――というだけで、出版不況とは次元が違う出来事だ」「出版不況の根底は『大手の本が売れていない』ということ。売れないから『へたな鉄砲も数打ちゃ当たる』と新刊本を増やすが、それでも売れてない」。我ながら立派なことを話しているなあと、いささか感心した。おそらく記者さんの腕がいいのだろう。
その記者さんとの話題にも出たのであるが、最近、K文社の早期退職に応募されたたぬきちさんというかたのブログが大人気だ。記事の中にも、そのブログに触れている箇所があった。K文社の給与から、早期退職に応募した人数、給与の引き下げ額など、生々しい話が満載で、思わず笑ってしまう。
書かれているたぬきちさんは、悲愴な思いでブログを綴られているのだろうから、「笑ってしまう」という表現は失礼かもしれない。しかし、弊社のようなゴミ会社(塵社!)にしてみれば、K文社は結構な給料をもらっているわけだし、経費もそれなりに使えるだろうし、名刺のネームバリューも大きいしという夢のような職場環境の中で愚痴をこぼしているわけだから、彼らのハングリーとガッツの足りなさに「笑ってしまう」のだ。それに、しょせんは対岸の火事である。
ちなみに、2ちゃんのK文社スレッドも、めちゃめちゃ盛り上がっていて、バカバカしくて面白い。どの程度が内部の人の書き込みなのかはわからないが、どうせならば、2ちゃんとたぬきちさんのブログをミックスさせたものをK文社から発売すれば、売れるんじゃないの?なんて書くのは、あまりに礼を失しているのでやめておこう。たぬきちさんとK文社さんの、これからのご活躍をお祈り申し上げます。

天に唾するような物言いはやめておいて、昨夜は旧友のSS、SG、それにP舎Kさん、マタンゴの5人で新宿で酒を飲む。取材を受けたあとだったので、SSに出版不況についてたずねてみた。「ネットの普及と大不況が出版不況の根底にあることは言うまでもないんだけれど、ほかの原因というのは考えられないかなあ?」「うーん、売れ筋のランキングに出ている本しか、読者が買わなくなってきていることも大きいんじゃないかな」
なるほど。未読であるが『グーグル・アマゾン化する社会』という書名を思い起こさせた。情報社会が進むことで、多様化の果てに一極集中が起こる。つまり、『IQ84』が社会の中で話題になればなるほど、『IQ84』しか売れないという構造になってしまう。書籍という小部数多品種の、多様でなんでもありを売りにしている世界にとって、これは脅威だ。
しかし、酒は楽しく飲んで帰宅することにする。帰りがけ、マタンゴが花園神社に寄っていこうと言い出すので、花園神社へ。桜の木をゆらし花吹雪を起こそうとしたら、雨露を浴びる羽目になった。天罰が下ったのだろう。無事に帰宅し、そのままドロのように寝る。
今朝は7:00起床。そんなにお酒を飲んだつもりもなかったが、いささか残っている。それよりもなによりも、寒い。初夏の陽気になったり冬の寒さにもどったりと、4月に入ってから天候の変化が激しすぎる。おかげで野菜の値段があがってきている。貧乏人には痛い。先週の日曜に、自宅のガスストーブをしまおうかと思っていたのだが、片付けてなくてよかった。こんなに寒暖差があると、体調を崩す人も多いことだろう。小生も本日はのどの調子がおかしい。
9:45出社。M印刷さんからやっかいな仕事が入ってきているので、それを早めにやっつけてしまわないといけない。ところがしかし、ヴォリュームがありすぎてなかなか終わりは見えてきそうにない。さてさて困ったものだ。

グーグル・アマゾン化する社会 (光文社新書)
森 健
光文社

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2010-04-16 21:20:33
出版好況はいつなんですか?
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Unknown (腹巻オヤジ)
2010-04-17 10:32:11
10年前に終わりました。
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