01. E.S.P. (Shorter) 5:27
これは当時のマイルス・クインテットの王道的な作品といえるだろう。テーマはマイルスとショーターのデュエットで進むキャッチーなもので、すぐさまソロにバトンタッチ、珍しくショーター→マイルス→ハンコックの順で進むが、その阿吽の呼吸はこの時期ならではのもの。長めのソロを展開するマイルスもキメのフレーズを連打、トニー&ロンも快調そのもので、この時期のライブでやっているスタイルをちょっとスタジオで再現してみました....といった作品である。
02. Eighty-One (Carter/Davis) 6:11
マイルス初の8ビート作品らしいが、今の耳で聴くとあまりそういう感じはしない。むしろあまり強烈に8ビートっぽく感じさせないように、細部に渡るアレンジでいろいろ気を使いまくっているあたりに、当時の「ジャズの壁」を感じたりする。マイルスとハンコックのソロの後半は4ビートになったするあたり、まるでアリバイ作りのようだ。ついでにいえば、こうしたソロ・パートのアレンジをあれこれ考え始めたというのは、ある意味フュージョンの先駆的な実験だったともいえやしないか。
ちなみに、V.S.O.P.のアルバム「嵐のコラシアム」でのこの曲は、前述の4ビートによるソロ・パートをふんだんに拡大した演奏で、ほとんど8ビートの部分はテーマだけになってしまっている。その善し悪しはともかくとして、オリジナルのアレンジのおもしろみは後退したものになっているのは確かだ。一方ウォレス・ルーニーを擁したトリビュート盤における演奏は、いきなりルーニーのソロではじまり、その後テーマが現れるのがおもしろい。雰囲気的にはオリジナルに大分回帰しているものの、やっている面々の気分は多分4ビートそのもの、テンポがかなり遅いがそれにそった措置だと思う。。
03. Little One (Hancock) 7:21
新主流派らしいハンッコクらしい理知的なテーマをもったスローな作品。マイルスとショーターが絡み合いながら、徐々に色合いを変えいくテーマは、当時としてはかなり斬新だったはずだ。ソロはマイルス→ショーター→ハンコックの順だが、やはりテーマ同様、色彩感重視のソロで進行する。おもしろいのはドラムもソロに合わせてかなり表情を変えている点で、序盤はブラシから始まり一見おとなしい感じだが、後半はかなりダイナミックなパターンになっていくあたり、よくよく聴くとおもしろい。また、回帰するテーマも周到に考え抜いたアレンジになっている。
ちなみに、トリビュート盤における演奏だが、おそらくオリジナルがかなりスコアリングされていたのだろう、ムードといい進行といい、全体にかなり原点に忠実な演奏となっている。
04. R.J. (Carter) 3:56
こちらは1同様、この時期のマイルス・クインテットの王道4ビート作品。ソロはマイルス→ショーターの順で、ソロそのものはご両人とも常なるペースで進んでいるが、ここではさすがにベーシスト、ロン・カーターの作品だけあって、バッキングではベースが2つのリズム・パターンが交互に演奏しているあたりがポイントか。トリビュート盤における演奏は、テーマとインプロのダイナミズムの緩急を大幅に拡大し、実に大柄な作品に仕立て直している。
05. Agitation (Davis) 7:46
トニー・ウィリアムスのドラム・ソロでスタート。テーマはミュートとそれ追いかけるようなテナーで構成される動きの細かい込み入ったもの。ソロはマイルス→ショーター→ハンコックの順で、これも基本的にはライブと同じような趣。マイルスのソロのパートでは途中、ロンとトニーのリズムが変幻自在の動きを見せるが、このあたりもお馴染みのパターン。ショーターのソロはテーマに付かず離れずな感じで進み、ハンコックはどちらかというとテーマの回帰のためのブリッジという扱いである。コーダはロンのベース・ソロだが、これは冒頭のトニーと呼応させてのことか?。
06. Iris (Shorter) 8:29
いかにもアーシーなジャズ的なムードと新主流派的な知的雰囲気が奇妙に混ざり合ったテーマをもっている。ある意味スロー・テンポのバラードといってもいい感じだが(トニーのブラッシュ・ワークあたりはまさにそれ)、泣きにならないのはいかにもこの時期のマイルスであり、それ故に沈痛で難解な印象も受けるワケだ。テーマはショーターが主導し、ソロはマイルス→ショーター→ハンコックの順で進行、ハンコックのアブストラクトと叙情を行き交う絶妙なソロあたりがハイライトか?。
07. Mood (Carter/Davis) 8:50
マイルスがミュートで吹くテーマは奇妙なムードをもっており、ある意味では5のスロー版のような感じである。ただ、こちらの場合は、冒頭から鳴り続けるハンコックのシグナル風な和音が、良く言うと印象派、悪く言うと少々オカルトっぽい怪しげムードを感じさせ、それがおもしろい隠し味になっている。ソロはマイルス→ショーター→ハンコックの黄金パターン。どのソロもいかにも新主流派的なリリシズムみたいなところを主眼においたものとなっている。
ついでにこの曲、ほとんど前曲と同じようなテンポだが、こちらのリズム・セクションはまるでリズム・マシーンみたいなドライな趣なのが、アブストラクトなソロとあいまって、曲にある種の実験的印象を与えている。その意味では「イン・ア・サイレント・ウェイ」のやり方の予告編であったとも勘ぐれるかも。(2000年7月9日)
※ 長いこと、この時期のマイルスは晦渋でおもしろくないというイメージがありました。数年前、ウォレス・ルーニーを擁したリニューアルVSOPみたいなトリビュート盤が出た時、この時期の曲を多数収録されていたので、これを機会にとばかりに、「ESP」や「マイルス・スマイルス」を改めて聴いてみた時にメモったものです。トリビュート盤やVSOP盤との比較が出てくるのは、こうした経緯からです。
これは当時のマイルス・クインテットの王道的な作品といえるだろう。テーマはマイルスとショーターのデュエットで進むキャッチーなもので、すぐさまソロにバトンタッチ、珍しくショーター→マイルス→ハンコックの順で進むが、その阿吽の呼吸はこの時期ならではのもの。長めのソロを展開するマイルスもキメのフレーズを連打、トニー&ロンも快調そのもので、この時期のライブでやっているスタイルをちょっとスタジオで再現してみました....といった作品である。
02. Eighty-One (Carter/Davis) 6:11
マイルス初の8ビート作品らしいが、今の耳で聴くとあまりそういう感じはしない。むしろあまり強烈に8ビートっぽく感じさせないように、細部に渡るアレンジでいろいろ気を使いまくっているあたりに、当時の「ジャズの壁」を感じたりする。マイルスとハンコックのソロの後半は4ビートになったするあたり、まるでアリバイ作りのようだ。ついでにいえば、こうしたソロ・パートのアレンジをあれこれ考え始めたというのは、ある意味フュージョンの先駆的な実験だったともいえやしないか。
ちなみに、V.S.O.P.のアルバム「嵐のコラシアム」でのこの曲は、前述の4ビートによるソロ・パートをふんだんに拡大した演奏で、ほとんど8ビートの部分はテーマだけになってしまっている。その善し悪しはともかくとして、オリジナルのアレンジのおもしろみは後退したものになっているのは確かだ。一方ウォレス・ルーニーを擁したトリビュート盤における演奏は、いきなりルーニーのソロではじまり、その後テーマが現れるのがおもしろい。雰囲気的にはオリジナルに大分回帰しているものの、やっている面々の気分は多分4ビートそのもの、テンポがかなり遅いがそれにそった措置だと思う。。
03. Little One (Hancock) 7:21
新主流派らしいハンッコクらしい理知的なテーマをもったスローな作品。マイルスとショーターが絡み合いながら、徐々に色合いを変えいくテーマは、当時としてはかなり斬新だったはずだ。ソロはマイルス→ショーター→ハンコックの順だが、やはりテーマ同様、色彩感重視のソロで進行する。おもしろいのはドラムもソロに合わせてかなり表情を変えている点で、序盤はブラシから始まり一見おとなしい感じだが、後半はかなりダイナミックなパターンになっていくあたり、よくよく聴くとおもしろい。また、回帰するテーマも周到に考え抜いたアレンジになっている。
ちなみに、トリビュート盤における演奏だが、おそらくオリジナルがかなりスコアリングされていたのだろう、ムードといい進行といい、全体にかなり原点に忠実な演奏となっている。
04. R.J. (Carter) 3:56
こちらは1同様、この時期のマイルス・クインテットの王道4ビート作品。ソロはマイルス→ショーターの順で、ソロそのものはご両人とも常なるペースで進んでいるが、ここではさすがにベーシスト、ロン・カーターの作品だけあって、バッキングではベースが2つのリズム・パターンが交互に演奏しているあたりがポイントか。トリビュート盤における演奏は、テーマとインプロのダイナミズムの緩急を大幅に拡大し、実に大柄な作品に仕立て直している。
05. Agitation (Davis) 7:46
トニー・ウィリアムスのドラム・ソロでスタート。テーマはミュートとそれ追いかけるようなテナーで構成される動きの細かい込み入ったもの。ソロはマイルス→ショーター→ハンコックの順で、これも基本的にはライブと同じような趣。マイルスのソロのパートでは途中、ロンとトニーのリズムが変幻自在の動きを見せるが、このあたりもお馴染みのパターン。ショーターのソロはテーマに付かず離れずな感じで進み、ハンコックはどちらかというとテーマの回帰のためのブリッジという扱いである。コーダはロンのベース・ソロだが、これは冒頭のトニーと呼応させてのことか?。
06. Iris (Shorter) 8:29
いかにもアーシーなジャズ的なムードと新主流派的な知的雰囲気が奇妙に混ざり合ったテーマをもっている。ある意味スロー・テンポのバラードといってもいい感じだが(トニーのブラッシュ・ワークあたりはまさにそれ)、泣きにならないのはいかにもこの時期のマイルスであり、それ故に沈痛で難解な印象も受けるワケだ。テーマはショーターが主導し、ソロはマイルス→ショーター→ハンコックの順で進行、ハンコックのアブストラクトと叙情を行き交う絶妙なソロあたりがハイライトか?。
07. Mood (Carter/Davis) 8:50
マイルスがミュートで吹くテーマは奇妙なムードをもっており、ある意味では5のスロー版のような感じである。ただ、こちらの場合は、冒頭から鳴り続けるハンコックのシグナル風な和音が、良く言うと印象派、悪く言うと少々オカルトっぽい怪しげムードを感じさせ、それがおもしろい隠し味になっている。ソロはマイルス→ショーター→ハンコックの黄金パターン。どのソロもいかにも新主流派的なリリシズムみたいなところを主眼においたものとなっている。
ついでにこの曲、ほとんど前曲と同じようなテンポだが、こちらのリズム・セクションはまるでリズム・マシーンみたいなドライな趣なのが、アブストラクトなソロとあいまって、曲にある種の実験的印象を与えている。その意味では「イン・ア・サイレント・ウェイ」のやり方の予告編であったとも勘ぐれるかも。(2000年7月9日)
※ 長いこと、この時期のマイルスは晦渋でおもしろくないというイメージがありました。数年前、ウォレス・ルーニーを擁したリニューアルVSOPみたいなトリビュート盤が出た時、この時期の曲を多数収録されていたので、これを機会にとばかりに、「ESP」や「マイルス・スマイルス」を改めて聴いてみた時にメモったものです。トリビュート盤やVSOP盤との比較が出てくるのは、こうした経緯からです。
オレもそうなんですよ。E.S.PとSmilesはまだモダン・ジャズの香りが残っているんでそこそこは楽しめるんだけど
後の2枚になると、未だに面白さがよく分かんないって感じです。
フレッド・ハーシュのアイリスもとてもいいですよ。このピアノの印象変わるかもしれません
「ネフェルティティ」とか「ソーサラー」はほんとうに分かりません。だれかに聴き所解説してもらいたいです。「音楽は魂で聴け!」なんていわないでね(笑)。
いつもコメントありがとうございます。私はショーターが苦手なもんで(だから総体的にはウェザー・リポートもダメ)、ああいう書き方になっちゃうんですが、最近聴いたピエラヌンツィのショーター集はけっこう目から鱗なところありました。もっともIrisは入っていませんでしたが。