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スティーブ・キューン/忍びよる恋

2005年04月25日 22時06分41秒 | JAZZ-Piano Trio
 冒頭のドラムからしてカマしてくれます。これぞヴィーナスって音のところでしょう。タイコの主はビル・スチュアート。最近はビル・チャーラップのニュー・ヨーク・トリオやちょっと前に書いたピーター・バンースタインなどで、なんとかなくヴィーナスのハウス・ドラマーのような存在になってきてましたが、そもそもはパット・メセニーやジョン・スコフィールドなどと演奏を重ねてきた人ですから、ある意味懐古的な4ビート路線が主体のヴィーナスの作品に名を連ねることの方が違和感を感じるムキがあってもおかしくないヴァーサタイルなドラマーです。

 ともあれ、この人のタイコは甲高いスネアの音、正確無比だがどこか普通と違うリズム・キープ、フィルの入れどころのユニークさあたりが特徴で、この人がタイコで参加すると、ヴィーナスのようなオーセンティックなジャズをコンセプトにしたレーベルの作品でさえ、オーソドックスさからほんの少しユニークな方向へシフトさせてしまうという、特異な才能があります。ヴィーナスではこのあたりの特徴がもっとも出ているのは、ビル・チャーラップのニュー・ヨーク・トリオでしょうが、このアルバムでもプレイもなかなかのものです。

 前述のとおり1曲目の「危険な関係のブルース」はドラムのイントロから、急速調で一点のゆるみもなく、一気にラストまで雪崩れ込む爽快なドラミングやタイトル曲「忍びよる恋」もブラッシュ・ワークからライド・シンバルへ移行するリズムも、きっちりかっちりジャストで、表向きのオーソドックスさとはひと味違うモダンさなどとても良いです。また、「キスへのプレリュード」の区切りとか間合いが絶妙に変な感じのボサ・ノヴァ・リズムとか、これもテンポの早い「オール・アローン」では時折ピアノにまとわりつくようなフィル・インや切れ味抜群のドラム・ソロなどもカッコ良く、とにかくこの人のタイコって、それだけ聴いていてもけっこう楽しめるんですよね。

 などと書きながら、このアルバム、ビル・スチュアートではなく、スティーブ・キューンのソロ・アルバムであること思い出しました(おいおい)。ずいぶんと経歴の長い人のようですが、私は60年代の「スリー・ウェイブス」しか聴いたことありません。ECMなどでも作品出しているようですから、あのレーベルでは、きっと耽美でクールな音楽でもやっていたんでしょう。
 ただし、このアルバムでは基本的にごくごくまっとうなジャズ的なヴォキャブラリーを使い、ハードパップ的演奏に終始しています。ただ、フレーズの節々で高い音でカキーンと響かせて、それをフレーズのアクセントするあたりには、なにげに耽美的なムードが滲み出てますから、おそらくこのあたり、きっと彼の個性なんでしょうね。ただ、それが強烈な個性になっているかといえば、どうもそうでもなさそうなんで、この人、ちょいとキャラクターとしては掴みがたい....ってのが正直なところですか。
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