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ENRICO PIERANUNZI / Special Encounter

2010年01月16日 16時34分07秒 | JAZZ-Piano Trio
いつものジョーイ・バロンとマーク・ジョンソンではなく、チャーリー・ヘイデン、ポール・モチアンという重鎮を迎えてのトリオによる作品だ。ピエラヌンツィはヘイデンやモチアンともアルバムでもけっこう共演しているようで、私が持っているアルバムでも、しばらく前に取り上げたフェリーニのトリビュート・アルバムでも共演していた。ヘイデンやモチアンといえば、60年代後半からフリー・ジャズ的ムーブメントの一翼をになかったり、かのビル・エヴァンスやキース・ジャレットとの共演歴などもある「生きるジャズ・ヒストリー」的な人達だから、ピエラヌンツィと比べれば「格上」になると思うのだが、そのせいか、ここでのピエラヌンツィは決して萎縮している訳でもないだろうが、けっこうおとなしい....いや、おとなしいというので語弊があるというのなら、非常に静的、スタティックなプレイが続くアルバムである。

 ピエラヌンツィというのは、基本的にオーソドックスな4ビートからアブストラクトなフリージャズまでスタイル横断的なプレイをする人だけれど、自らが完全に主導権を握れる(のだろう、多分)「+バロン&ジョンソン」のトリオに比べると、あんまり両巨匠に「あぁせい、こうせい」とはいえなかったような事情もあるのかもしれない。本作では従来の自由闊達でトリッキーなところはあまり出さず、比較的オーソドックスなヴォキャブラリーを使い、ヨーロッパ・ジャズ的なトーンでもって、ヘイデンやモチアンと隠微な音楽会話をしているような印象である。要するにかなり枯れた「大人のジャズ」といった風情なのだが、これか実にいいムードを醸し出している。日本のアルファ・ジャズで作った2枚のアルバムも比較的スタティックなピエラヌンツィが出ていたアルバムだと思うけれど、こちらは受け狙いのスタンダード作品も少なくとも、ピエラヌンツィを主体にとしたオリジナル作品ばかりでアルバムを構成しているのも、そうした印象を倍加している。

 収録曲ではヘイデン作の「Waltz For Ruth」「Hello My Lovely」「Secret Nights」あたりは都会的なセンスをもったミディアム・テンポの演奏で、アブストラクトなプレイまでスポーティーに感じさせてしまうピエラヌンツィらしいピアノの片鱗が多少味わえる他は、ほぼ総体的にほの暗い内省的な抒情と、硬質なリリシズムがベースにした作品がずらりと並んでいる。「Miradas」 「Nightfall」など深い幻想が実にしっとりとした感触の音楽からわき上がり独特なムードを醸成している。うーむ、こういうピエラヌンツィも悪くない。調度、今みたい休日の午後のリラックスタイムにゆったりとして聴くにはもってこいの作品だ。ちなみにヘイデンとモチアンは、かつのフリー時代が嘘のような枯れたプレイだ。特にヘイデンはいくたの修羅場を越えて、完全に先祖返りした枯淡の境地といった感じのベースになっている。

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