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イヴォンヌ・ウォルター/アイ・ウィッシュ・アイ・ニュー

2009年12月28日 00時05分02秒 | JAZZ
 オランダ出身の女性ジャズ・ヴォーカリスト、イヴォンヌ・ウォルターの本邦デビュー作。いろいろ話題になったのでご存じの方もいるとは思うが、本作はジョン・コルトレーンの「バラード」の収録曲をまるごと歌ってしまうという一種の変形トリビュート・アルバムになっているのである。コルトレーンの「バラード」といえば、「疾風怒濤なジョン・コルトレーンがつかの間見せたリラクゼーション」という希少価値も手伝って、他のアーティストの同種のアルバムとは、ほとんど隔絶したオーラが漂っているアルバムだが、このアルバムではその額縁を借りつつ、ヴォーカル・アルバムとして作り替えてしまおうというところだろう。コルトレーンの「バラード」はタイトルからも分かるとおり、スタンダードのバラード物を取り上げたアルバムだから、同じセレクションで歌物のアルバムを作ること自体はそれほど難しいことでもないだろうが、この種の企画が近年まで出てこなかったのは、やはり「バラード」というアルバム自体が古典として生乾きであったからだろう。逆にいえばこういう作品が出てくること自体、「バラード」という作品が、ジャズ史上の完全なる古典となったということの裏返しなんだろうと思う(ジャズ・ベスト25みたいな意味ではなく)。

 さて、本作だが、収録されたのは全部で12曲、まずは「バラード」の曲を1曲目から7曲目までをそのまま歌い、後の5曲は、コルトレーンのもうひとつの古典「ウィズ・ジョニーハートマン」から3曲と「バラード」の残り1曲、そして「ネイマ」が歌われている。全ての曲がピアノ+ベースというシンプルなバックで歌われているが、これは「バラード」のコルトレーンをそのまま彼女に置き換えた....というコンセプトなのだろう。なにしろオリジナルが巨人コルトレーンだからして、いろいろ文句をつける向きもあるだろうが、「バラード」のワン&オンリーな世界というか、あの静謐なムードをそれなりに再現していると思う。彼女の声は同郷のアン・バートンに似ているといわれているそうだが、私はアン・バートンを聴いたことがないのでよく分からない。あまりフェイクしたり、デフォルメせず、噛んで含めるような歌い方をしつつ、どこかドライな風情が漂っているのは、「バラード」的な世界にけっこう合っていると思う。普通ならバックがピアノとベースだけだと、バラードとはいえ退屈してしまう私だが、あまりそう感じなかったところにこのアルバムの説得力があると思う。いずれにしても、オッサンが夜に飲む酒のお供にぴったりのアルバムだ。もっとも聴いていて、オリジナルはどうだったかな?....と、寄り道したくなるアルバムでもあるが。

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2009-12-28 16:51:00
カーリン・アリソンの「パラッズ」もお忘れなく!
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re;Unknown (BlogOut)
2009-12-28 23:01:51
はい、そちらも既に購入済みです。
今年中にはレビュウできるといいですが。
どうなることやら。
返信する

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