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エラ・フィッツジェラルド/ザ・ロシャース&ハート・ソング・ブック vol.1

2007年05月19日 23時21分14秒 | JAZZ
 エラ・フィッツジェラルドは50年代後半から60年代にかけて、いわゆる「ソング・ブック」シリーズとして、アメリカン・スタンダードの作家をアルバム単位で取り上げ、名実ともジャズ・シンガーとしての絶大な評価と人気を得た訳だけれども、このアルバムはそのシリーズでも初期のもので、確かコール・ポーターのの次に発表され、まさにポーターと並び称されるロジャース&ハートを取り上げた作品集である。私がこれをCDで購入したのは80年代後半の頃で、CDで2枚に分割されて発売されていた。取り上げている曲は35曲だから、LP2枚に収まるはすはないので、オリジナルはいったいどんな配分でアルバムを切り分けていたのか興味あるところである(オリジナルがSPだとしたら何枚組になていたのだろう?)。

 ロジャース&ハートの作品はメロディックなものが多く、また、都会的でチャーミングな雰囲気に満ちたものが多いので、曲といえばまずは旋律に注目する日本人にはとても親しみやすい作家だと思う。アンケートをとった訳じゃないから、断言できる訳ではないけれど、ガーシュウィンを別格とすすれば、例えば、都会的といってもやや硬質でシニカルなコール・ポーターなんかに比べると、日本人にとっては一聴して気に入るような楽曲が多いのではないだろうか、まぁ、少なくとも私にとってはそうだ。
 このアルバムでのエラ・フィッツジェラルドはあまたのライブ盤とは違って、スキャットのアドリブは全くないし、ジャズ特有の歌のインプロヴァイズ、あるいはデフォルメと呼ぶべきような「崩し」はほとんどなく、まさに企画に沿って、曲の良さ、素性を伝えるべく、瀟洒なオーケストラ・サウンドをバックにポピュラー・ミュージック寄りといってもいいくらいにストレートに歌っている。なにしろそれがいい。

 1曲目の「ジョーンズ嬢に会ったかい」では、ファンタスティックなオーケストラのイントロから、まるで夢見るような雰囲気で進んでいくのだけれど、サラ・ヴォーンなどに比べるとバタ臭さがなく、明るい歌いっぷりがいかにもロジャース&ハートに合っていると思うし、5曲目「レディ・イズ・ア・トランプ」の都会的なムードと天衣無縫なスウィング感はさすがだ。10曲目の超有名曲「イット・ネバー....」や12曲目「リトル・ガール・ブルー」は、さしずめこのアルバムの白眉といいたいようなしっとりした歌い振りに思わず聴き惚れる。この2曲などこの録音から四半世紀を経て、リンダ・ロンシュダットとネルソン・リドルによって、私のような後発のリスナーに知らしめることになるのだけれど、彼女の歌のモデルになったのは間違いなくエラ・フィッツジェラルドだったことは、この録音を聴けばあきらかだろう。

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