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マイルス・デイヴィス/イン・ヨーロッパ

2006年03月24日 23時02分08秒 | JAZZ
 ジョージ・コールマン、ロン・カーター、ハービー・ハンコック、トニー・ウィリアムスが揃い踏みした黄金時代前期のクインテットの初のライブ。前作の「Seven Steps to Heaven」は、一応のこのメンツは集まっていますが、約半分に当たる部分しか参加していなかったですし、スタジオ録音ということもあり、やはり黄金時代のクインテットの幕開けというと、このアルバムからという感じになるのではないでしょうか。収録は1963年7月フランスはパリで、「Seven Steps to Heaven」での初顔合わせから約2ヶ月後の演奏ということになりますが、このクインテットらしいモダンなスピーディーさは既に発揮されています。

 特に凄いのは「マイルストーンズ」「ジョシュア」「ウォーキン」の3曲で、これら早いテンポでの演奏された曲は、インタープレイの緊密さという点ではいくらか劣るものの、迫力や圧倒的な流れという点では、既に「フォア&モア」にも劣らないものになっていて、このクインテットの凄まじさを充分に満喫できるパフォーマンスになっています。「マイルストーンズ」では、最初にラインナップされたマイルスのソロの時点で既に過激なくらいホットなテンションで、マイルスとトニーは炸裂するようなキメのフレーズ連打してますし、前作で初めて披露され早くも再演となった「ジョシュア」では、三人のリズム隊が途中何度もフックを絡めて、まさに緩急自在縦横無尽に駆けめぐっています。更にアルバム・ラストを飾る「ウォーキン」は16分にも及ぶ長尺演奏で、わずか20秒足らずでテーマを切り上げ、怒濤のインプロに突入していく様は、後年の「プラウドニッケル」すら思わせるテンションを感じさせる凄い演奏。特にトニー・ウィリアムの暴れ具合はひょっとすると「フォア&モア」より、ワイルドかなと思わせたりもします(ドラム・ソロはあんまりおもしろくないですが)。

 という訳で、文句なく凄いライブなのですが、非常に残念なのはモノラルで音が悪いこと。いや、ジャズの場合、モノラルでも音がいいのは沢山あるので、別段モノラルだから悪いというつもりはないんですが、どういう訳だか音のバランスがとても悪いんです。二本の管は非常にオンでくっきり録られているものの、ベースとドラムの音像がやけに腰がなく遠いので、まるで中域しか聴こえないAMラジオのような、デッドで潤いのない音とになってしまっているんですねぇ。どうしてこうなったのかは分かりませんが、ひょっとすると放送音源かなにか起こした作品なのかもしれません。ともあれこの録音状態のせいで、この作品大分損をしているんじゃないですかね。

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