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ストラヴィンスキー 三大バレエ/アンセルメ&スイスロマンドO

2008年10月23日 21時43分58秒 | クラシック(20世紀~)
 こちらはアンセルメが50年代後半に、当時彼が手塩にかけて育成した手兵、スイスロマンド管弦楽団を振ったストラヴィンスキーの三大バレエである(他に「結婚」もはいっている)。アンセルメといえば、後に喧嘩別れしてしまうとはいえ、ストラヴィンスキーと親交もあり、名実ともにストラヴィンスキーのスペシャリストとして名を馳せた人だから、おそらくここに収録された演奏も、私がクラシックを聞き始めて80年代くらいまではまだまだスタンダードな演奏として価値があったように記憶している。が、ストラヴィンスキーの三大バレエのようなオーケストラのテクニックが巧ければ巧いほど聴き映えするような曲だと、なにしろ次々に巧い演奏が出てきしまうせいか、さすがに最近はこれらの演奏もほとんど忘れられられかけているのではないか。忘れられられ....といえば、「80年代のアンセルメ」として、デッカが大々的に売り出したデュトワとモントリオールのコンビすら、今は忘れさられようとしている気がする。時の経つのは早いものだ。

 さて、久方ぶりに聴くアンセルメの三大バレエだが、予想通り....いや、予想以上に古色蒼然とした演奏に感じられた。昔はもっと整然とした、やや温度感は低いものの、端正な演奏というイメージがあったのだが、今聴くと熱演しているのは分かるのだが、オケの鳴りきっていないは、リズムの縦線は豪快に不揃いだはで、気合いというかテンションの高さは伝わってくるだけに、逆に大昔のオーケストラの限界みたいなものを感じてしまうのだ。もちろん作品自体が当時生乾きだったこともあるだろうが....。
 「春の祭典」の前半「春のきざし」など、正体不明な異形の音楽をおそるおそる演奏しているという風情で、聴いているこちらまも、まるでモノクロのゴジラ映画を観ているような気がしてしまう。また、全編を通じ随所の鳴るシグナル風な金管モチーフなども、音楽のパートというより、まるで効果音のように聴こえてしまったりする。「ペトルーシュカ」は、おそらくこの曲の沢山含まれるロシア民謡の旋律だとか、リズムチェンジのようなものを、おそらく扱いあぐねているのだろう、いかにも昔堅気な律儀さがあってちと窮屈に感じてしまったりもす。リズムの切れ、推進力、ドライブ感といった点でいうとまさに隔世の感があるといったところか。

 その意味で一番違和感がないのは「火の鳥」か、ムーティのところにも書いたけれど、この曲はまだまだ伝統的ロシア音楽みたいなイメージが強いので、オケの技量、リズムのモダンさみたいなところばかり解決できないのが幸いしているのだと思う。詩的なリリシズムや各場面の描き分けなどさすがアンセルメである。声を荒げることなく実に老獪に仕上げている。ただ、「火の鳥」はこの録音から数年後、フィルーハモニアと再録があって、こっちは演奏も録音もこれの更に上をいく演奏なのがたまにキズなのだが....。

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