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ジャック・ルーシェ/デジタル・プレイ・バッハ

2009年11月29日 14時42分46秒 | JAZZ-Piano Trio
 ジャック・ルーシェといえば、60年代はデッカ、その後、復活してから近年はアメリカのテラークでアルバムを出しているけれど、80年代中盤にスタートというマイナー・レーベルからプレイ・バッハの取り直しをしたアルバムが、実は復活のはじまりだったことを、そろそろみんな忘れてきていると思う。誰の発案だったのか、かつてのプレイ・バッハ・シリーズから十八番の曲をデジタル録音で取り直すというアイデアは、すぐさま続編が続いたくらいだから、けっこう受けたはずだ。思えば、この時期の活動がその後の90年代に、今度はテラークで収録されることになる新バッハ・シリーズ、その他に繋がっていくことになるのだ。

 そえいう経緯で、このアルバムはおそらく単発企画として製作されたものだから、選曲的にはまさにプレイ・バッハ・グレーテスト・ヒッツである。私はこのアルバムを、確か今はもうない千葉市新星堂で、「イタリア協奏曲」がプレイバックされているを一聴して購入したように記憶しているが、この「イタリア協奏曲」のいささか権威主義的な第1楽章をスポーティーかつカジュアルな形で崩して演奏するセンス、いささか辛気くさい第2楽章ここまで洗練されたブルージーなアレンジする垢抜けた感覚、そして第3楽章を豪快なスウィング感と達者なテクニックにいたく感心したのだった。当時の私はオイゲン・キケロは知っていたけれど、多分、ジャック・ルーシェについてはほとんど知らなかったと思う。なので、このオイゲン・キケロより数段洗練されたルーシェの演奏を聴いて、「へー、こんなにお洒落なクラシックのジャズ化があるんだね」と、一聴、惚れ込んでしまったのだ(まぁ、オイゲン・キケロには彼なり良さがあることに後年気がつくのだけれど)。

 という訳で、このアルバム、80年代から90年代にかけてはずいぶん聴いたものだった。一曲目は「G線上のアリア」からスタートするが、この静謐なイントロからしばらく続いた後、あの有名な旋律が登場するアレンジがあまりに印象的だったので、テラークでの「プレイ・バッハ」シリーズのベスト盤が、前奏曲第1番ハ長調から始まることに大きな違和感を覚えたくらいなのである。もちろん、他も曲もいい。「イタリア協奏曲」と並ぶ十八番の「トッカータとフーガ」も、デッカ時代のオリジナルよりコンテンポラリーなセンスを取り入れて、良いアレンジ演奏だと思うし、 このふたつほど有名ではないが、「ピアノ協奏曲第1番ニ短調」も、あまり有名でないからこそ、従来のバッハ的世界を心地よく裏切るインプロビゼーションを楽しめる。また、「主よ、人の望みの喜びよ」「コラール前奏曲第1番~目ざめよと呼ぶ声あり」といった小曲は、この人らしい実にセンスの良いお洒落な演奏で実に心地が良い。

 という訳で、このアルバム、自宅で、車で、結婚式の会場で....と、あのバブル最盛期の頃にはずいぶん活用させてもらったが、今ではそれもずいぶん昔の話となってしまった。今時、結婚式に絵に描いたようなフランス風のルーシェなんか気取って使ったら、ガチすぎて引いてしまう人も多いことだろうな(笑)。ついでにいうと、音質はデジタル録音初期であるものの、ルーシェ諸作ではこれが一番自然だと思う。その後のテラークはちと低音(特にバスドラ)がエゲツなさ過ぎで、その迫力感はさすがテラークという感じ凄いのは認めるが、あまりにスットン、バッタンした音質には少々違和感があった。やはりルーシェにはこういうシルキーな音質が良く似合うと思う。

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