「Live at the Village Vanguard」の翌年、つまり昨年の作品である。こちらはヴィーナスから出ているので、チャーラップ、レオンハート、スチュアートによるニューヨーク・トリオ名義となる。今回の作品は、もう何度目かになるお得意のソングブック・シリーズで、今回はリチャード・ロジャースの作品を取り上げている。チャーラップはこれまでバーンスタイン、エリントン、ガーシュウィン、ポーターとこのアメリカの大作曲のスタンダードを中心とするシリーズを延々と続けてきたが、単発では彼の作品を何度も取り上げてはいるものの、リチャード・ロジャースの作品集は、そういえば未だだったのか....という感が強い。なにしろリチャード・ロジャースの作品はコール・ポーターのようにひねったところがなく、素直で愛らしいメロディと軽妙な都会的センスが特徴な訳で、こうした特徴はまさにチャーラップの資質にぴったりと一致するように感じるからである。
セレクションされた曲では、2曲目の「マイ・ファニー・バレンタイン」が印象に残る。なにしろ耳タコの名曲だし、このトリオ自身も「夜のブルース」で既にレコーディング済みであったりするのだが、だからこそというべきなのか、この「またコレですかい」といわれかねないところを、チャーラップは冒頭3分近くをかつての名演「いそしぎ」を思わせる静謐な美しさをもったピアノ・ソロで演奏し、その後、お得意の「遅い曲をもっと遅く」のパターンで演奏してみせる。1回目のレコーディングでは、この曲をミディアム・テンポでちょっと明るく演奏したが、今回のはその演奏の力のいれようからして、これぞ本番といったところだろう。名演だと思う。他の曲は比較的渋めの選曲だが、どの曲もかなりクウォリティの高い演奏だ。3曲目の「時さえ忘れて」はこのトリオらしい、ごりごりとした個性のぶつかり合いが楽しめるスウィンギーな演奏、一方、4曲目の「いつかどこかで」もミディアム・テンポで、ほどよく軽快、ほどよくしっとりしたシックな演奏になっていて、なかなか味わい深い演奏になっている。他もパラード・タイプの5曲目「息もつまって」や10曲目「一度彼女をみてごらん」などを始めとして、おしなべて演奏のクウォリティは総じて高い。
以前のアルバムでは非常に出来の良いパフォーマンスと、やとわれ仕事的な安全運転の演奏の落差が大きいような気がしたが、このアルバムではそろそろこのトリオも例の「ミスマッチング的なスリルやおもしろさ」から、チャーラップのレギュラー・トリオに迫る阿吽の境地というか、一体感のようなものが出てきたところから感じられ(7曲目の「ミス・ジョーンズに会ったかい?」などレギュラー・トリオのコンセプトがこちらに浸食してきているように感じられる)、音楽的なクウォリティがぐっと向上したように感じられるのだ。レコーディング用の臨時編成だったこのトリオも、結成して10年近く経過したこともあり、さすがに熟成の時期を迎えたというところだと思う。この編成でライブをしているのかどうかは知らないが(おそらくしてないだろう)、レギュラー・トリオがライブは傑作だったし、そろそろこちらのトリオでもライブ盤など出してもいいのではないだろうか。そんなことを感じさせる良い出来のアルバムだ。
セレクションされた曲では、2曲目の「マイ・ファニー・バレンタイン」が印象に残る。なにしろ耳タコの名曲だし、このトリオ自身も「夜のブルース」で既にレコーディング済みであったりするのだが、だからこそというべきなのか、この「またコレですかい」といわれかねないところを、チャーラップは冒頭3分近くをかつての名演「いそしぎ」を思わせる静謐な美しさをもったピアノ・ソロで演奏し、その後、お得意の「遅い曲をもっと遅く」のパターンで演奏してみせる。1回目のレコーディングでは、この曲をミディアム・テンポでちょっと明るく演奏したが、今回のはその演奏の力のいれようからして、これぞ本番といったところだろう。名演だと思う。他の曲は比較的渋めの選曲だが、どの曲もかなりクウォリティの高い演奏だ。3曲目の「時さえ忘れて」はこのトリオらしい、ごりごりとした個性のぶつかり合いが楽しめるスウィンギーな演奏、一方、4曲目の「いつかどこかで」もミディアム・テンポで、ほどよく軽快、ほどよくしっとりしたシックな演奏になっていて、なかなか味わい深い演奏になっている。他もパラード・タイプの5曲目「息もつまって」や10曲目「一度彼女をみてごらん」などを始めとして、おしなべて演奏のクウォリティは総じて高い。
以前のアルバムでは非常に出来の良いパフォーマンスと、やとわれ仕事的な安全運転の演奏の落差が大きいような気がしたが、このアルバムではそろそろこのトリオも例の「ミスマッチング的なスリルやおもしろさ」から、チャーラップのレギュラー・トリオに迫る阿吽の境地というか、一体感のようなものが出てきたところから感じられ(7曲目の「ミス・ジョーンズに会ったかい?」などレギュラー・トリオのコンセプトがこちらに浸食してきているように感じられる)、音楽的なクウォリティがぐっと向上したように感じられるのだ。レコーディング用の臨時編成だったこのトリオも、結成して10年近く経過したこともあり、さすがに熟成の時期を迎えたというところだと思う。この編成でライブをしているのかどうかは知らないが(おそらくしてないだろう)、レギュラー・トリオがライブは傑作だったし、そろそろこちらのトリオでもライブ盤など出してもいいのではないだろうか。そんなことを感じさせる良い出来のアルバムだ。
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