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ナット・キング・コール/ヴォーカル・クラシックス

2007年09月28日 23時28分16秒 | JAZZ
 ナット・キング・コールというと思い出すのは、小学生にもならない頃、我が愚兄が聴いていたビートルズのLP盤の袋のこと。あの頃の東芝のLPの中袋は紙でできた四角いもので、それが両面ともに既発盤のカタログのようになっていたので、私は見るともなくよく眺めていたんだろうと思う。あんまり記憶にないけれど、確か片面はクラシックで、もう片面がポピュラーというような構成だったと思う。クラシックの方はクリュイタンスが振ったフランス物とか、マリア・カラス、ポピュラーだとビートルズ、ベンチャーズあたりの当時のドル箱スターはいわずもがなだが、ビーチボーズなんかに混ざって、ナット・キング・コールがけっこう入っていたような気がする。私は小さなジャケ写真をみならがら「この冷酷そうな黒人のオッサンはいったいどんな曲を歌っているのだろう?」と思ったものだ(笑)。

 ちなみにそこに出ていたのは、コールが50年代後半以降にキャピトルで録音し、ネルソン・リドルをアレンジャーに擁した、それこそ「ポピュラー・ミュージック時代」のコールの作品「恋こそはすべて」「モナリザ」みたいなものばかりだったはずだが、しばらくして、こうしたアルバムから聴ける音楽が、金ぴかのオーケストラをバックに甘ったるく歌う音楽であること知って(いつ頃知ったのだろう?)、私はナット・キング・コールなと興味の範囲の他となった。ちなみに彼に再び興味を持つことになるのは、1991年、娘のナタリー・コールが出した「アンフォゲッタブル」のラストで、彼女のボーカルのデュエットの相手にコールの声が突如登場し、「なんて素敵な声なんだろう!」と感嘆してからである....などと、いつになってもこのアルバムの話が出てこないので、無理矢理このアルバムに話題を移す。

 このアルバムはコールが前記のようなポピュラー寄りの活動にスタンスを切り替える以前の40年代に録音したものである。当時のコールはジャズ・ボーカリストとしても売れていたが、ピアノ弾きとしても有名だったため、このアルバムはボーカル・クラシックスというタイトルになっている。音楽はシンプルな自前のピアノ・トリオ(ドラムレスでギターが入るパターンの方)をバックに、コールがじっくりと歌っているが、とにかくボーカルがサイコーである。コールのボーカルはキャピトル時代のメロウに歌い上げるのもいいが、やはりこうした場末な感じのバッキングで、アーシーかつやくざなところをちらほらざせながらも、表向きはソフトな歌い方をする複雑系の方が良く似合うと思う。1曲目の「スイート・ロレイン」なんぞ聴くと、まるでモノクロ製のギャング映画のキャバレーシーンにでも紛れ込んだような気にさせてる。悪役なのか、正義の味方なのか分からないところが、この時期のコールの魅力とでもいったらいいか。
コメント
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