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ポール・マッカートニー/フラワーズ・イン・ザ・ダート

2007年09月21日 00時44分42秒 | Beatles
 「Unplugged-The Official Bootleg」のところで、「ポール最後の大傑作」と書いた作品。自分でそう書いて思いだしたのか、再び聴きたくなってきた。レギュラー・アルバム自体はもちろん持っているのだが、昨日某ショップに赴いたところ、初回限定の2枚組ヴァージョンが700円だか、800円だかで転がっていたので(併せて「オフ・ザ・グラウンド」の初回版も)購入してきたので、久しぶり聴いてみた。うーむ、やはり傑作だ。ポールらしいメロディックなセンスは往年をしのばせるものがあるし、吹っ切れたような躍動感とコンテンポラリーなサウンドに支えられたキャッチーさは、それまでの作品のやや弛み気味だったポップさから、ぴたりとリスナーのツボをぴたりと抑えたものになっていると思う。つまり、このアルバム全体に「華」のようなものがあるのだ。

 さて、このアルバムの「華」といえば、個人的にはなんといってもエルヴィス・コステロとのコラボレーションである。ポールはコステロに前に元10ccのエリック・スチュアートともコラボをしている訳だが、誰もがいうように世代的にも資質的にもポールとあまりといえばあまりに共通点が多いスチュアートでは、「相互作用によるコラボレーションによる妙味」のようなものは生まれにくかったのだろう、「プレス・トゥ・プレイ」あたりがあまり評判がよくないのはそのあたりにも原因があったのだろう。
 そこでエルヴィス・コステロの登場と相成った訳だ。なにしろコステロといえば、ニュー・ウェイブ世代、辛口のポップ・センス、辛辣な批評眼と、万事穏やかなポールとは異質さが際だったミュージシャンな訳で、このあたりの異質さがまさにポールの狙ったところではないだろうか。ビートルズ・ナンバーの全面解禁したところで、ビートルズ的なコラボレーションを狙った訳でもないだろうが、明らかにコステロはジョン・レノン的役割を担って招聘されたのだと思う。

 結果は大成功であった。コステロとの共作は4曲「マイ・ブレイヴ・フェイス」「ユー・ウォント・ハー・トゥー」「ドント・ビー・ケアレス・ラヴ」「ザット・デイ・シズ・ゴーン」の4曲だが、「マイ・ブレイヴ・フェイス」のポール風ではなく、ビートルズ的な賑々しさや「ザット・デイ・シズ・ゴーン」でポールが久々に見せるゴスペル風なドラマチックさなど文句なしポールの傑作といいたいような佇まいがあるが、これらの作品にある微妙な緊張感や陰影といったものは、多分、コステロなしではなしえなかった世界だと思う。特に後者は個人的にポールのベスト10の入れたくなるほど好きな曲だ。
 加えていえば、「ラフ・ライド」等トレバー・ホーンが絡んだダンサンブルな曲も良い意味で刺身のツマとしてメリハリを出しているし、これらの作品にまじって収録されたポールの単独作も「ディストラクション」「ウィ・ゴット・マリード」「プット・イット・ゼア」といた佳曲ぞろいで、ずっと続くと飽きることもあるが、メリハリの中に配置されると「あぁ、ポールだなぁ」と実に心地よく響くのだ。

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