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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
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CHICAGO V

2007年09月13日 11時04分12秒 | ROCK-POP
 1972年発表の5作目。それまで2枚組アルバム3作、それまでの総決算ともいえるライブ・アルバムは4枚組という大作を出した後の初シングル・アルバム、シングル・カットされ大ヒットした「Saturday In The Park」という曲の存在などから、このアルバム、その後大幅に強まるポップ、AOR的な方向へ路線変更をした作品というのイメージがあったのだが(おそらく巷の評価もそうだと思う)、実際聴いてみると、それほど方向転換した印象はなかった。

 なにしろ1曲目の「A Hit By Varese」はノイジーに始まる、なにやらB級ブリティッシュ・ロックを思わせるオルガンをフィーチャーした5拍子の曲で、「おいおい、何がポップだよ」という感じだし、6曲目の「While The City Sleeps」はインスト指向の強く、ダイナミックなブラスがふんだんにフィチャーされけっこうたヘビーな作品なのである。
 ポップな曲としては、2曲目の「Now That You've Gone」、7曲目のご存じ「Saturday In The Park」といった曲になると思うが、前者のいかにもウェスト・コースト然としたコーラスなどは、別段新機軸という訳でもなく、1作目から聴かせてくれていたし、後者のAOR的なセンスはアルバム中ではむしろ例外的な感じすらあるのだ。

 ともあれ、先に上げた4曲あたりを両極端にして、残りの全ていかにもシカゴらしいというか、70年代初頭の「ニュー・ロック」の香りがプンプンする4曲になっている。シングル・カットされた5曲目の「ダイアローグ」のはつらつした活気はもちろん、3曲目「Now That You've Gone」のくどさやしつこさ(テリー・キャス!)....といって悪ければ、音楽的情報量の濃密さのようなものは、70年代然としたの高カロリーな雰囲気が充満していて、初めて聴くのに妙に懐かしい。クロージングを飾るパラード「Alma Mater」のムードも本当に懐かしい。なんだか、フレアのジーンズをはいたロングヘアーの若者が新宿をたむろしている風景を思い出してしまう(笑)。

 ちなみに、ボーナストラックとして収められた3曲のうち「ダイアローグ」のシングル・ヴァージョンを除く2曲は、このアルバムがいかに無駄を省いてコンパクトにまとめたかがよく分かる「捨て曲」である。おそらくシカゴはこのアルバムを作るにあたっても、2枚組分のマテリアルを用意して、そこには「シカゴIII」までの作品にあったような垂れ流し気味の大作はカットしたことを伺わせるのだ。逆にいえば、そのくらい彼らは変わっていなかったともいえるのもしれない。
コメント
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