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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

ロッシーニ序曲集/アバド&LSO

2005年05月01日 14時27分43秒 | クラシック(一般)
 そんな訳で、アバドとロンドン・シンフォニーによるロッシーニ序曲集です。結論からいうと、先日のトスカニーニの演奏があまりにも素晴らしかったので、アバドのはちょい霞んでしまったかな?というところですかね。
 これが録音された70年代前半の頃のアバドといえば、イタリアから現れた若手ナンバー・ワン指揮者みたいな感じで、これもその当時から人気の高い、いわば定評ある演奏だった訳ですけど、なんとなく期待したトスカニーニを現代にリファインしたような演奏というより、カラヤンの美麗な演奏を筋肉質にして、いくらか室内楽っぽくコンパクトかつ旋律線をくっきり浮き上がらせた....みたいな印象で、とにかくトスカニーニのような熱狂はなく、むしろ禁欲的といえるような演奏ですね。

 まぁ、もともとアバドって人は若いに似合わず、華美なものを嫌い、音楽はストイック、シャープなリズムで音楽の核心にずばり切り込むみたいなタイプだったハズですから、こういう演奏はむしろアバドらしいのかもしれませんが、もうちょっと遊んでいるかとも思ってたもんで、「やっぱ、この人、こういう曲でも生真面目なんだよなぁ」って感じですかね。
 ただ、まぁ、こういう風にビシバシとリズムがくっきりした演奏は、ロッシーニ的な愉悦感とは別かもしれのせんが、ある種の快感はあります。句読点をきっちりとりつつ、ロッシーニ・クレッシェンドの細部を克明に描写したデジタル的な表現で、ずんずん盛り上げていくあたり、これまで聴いた3種の中ではやっぱ一番モダンな感じがします。例えていうなら、これまで聴いていた演奏が、電車か列車みたいなもんだったとすると、アバドのはいきなり新幹線に乗り換えたみたいな、同じ鉄道でも感覚的にも気持ち良さが違うみたいな感じがするんですよね。(とはいっても、これ35年くらい前の演奏ですから、最近の演奏聴いたら、新幹線どころじゃなくて、リニア・モーターカーに乗ったみたいな感じでもするんだろうか-笑)

 最後に録音。この時期のアバドはボストンとやったチャイコなんかもそうでしたけど、マルチ・マイク録音の極致みたいなものが多くて、これもまるでオーケストラのど真ん中で、特に弦楽器群を至近距離で聴いているような感覚あります。
 「自然な録音=ホールトーンまるごと」みたいな観点からすると、人工的な音には違いありませんけど、これはこれでハイファイ録音のひとつの形ではあると思います。まぁ、私はこの手の直接音主体の録音が一世を風靡している時期にオーディオに目覚めた人なので、こういう音の方がしっくりくるということも否定できませんが。 
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ブラッド・スウェット&ティアーズ/血と汗と涙 (SACD)

2005年05月01日 13時55分39秒 | ROCK-POP
 ブラッド・スウェット&ティアーズ(BST)は、シカゴと並んで70年代初頭くらいの頃、「バンドの中に管楽器をやるメンツがいる」という理由で、ブラス・ロックなどと形容され、当時勃興していたニュー・ロックの旗頭的存在として一世を風靡しました。シカゴと違って彼らは、あっという間にシーンから消えていきましたが、69年に出した「血と汗と涙」というアルバムだけは、昔からロックのヴィンテージ・アルバムとして非常に高い評価を受けているものです。

 このアルバム、両端にサティの有名なジムノベティを配したトータル・アルバムとして体裁。既成曲をアレンジでリニューアルしていく手法、演奏テクニック、ロック的なダイナミックさ等々、様々な要素が非常に高いレベルで音楽に結実した完成度を誇るアルバム....というのは周知の事実ですが、現在このアルバムの音楽聴いて感じるのは、そういうテクニカルな面よりは、むしろ「このバンド昔から大人だったんだねぇ」って、割とミもフタない印象(笑)。

 例えば、「神よ祝福を」とか「ユーヴ・メイド・ミー・ソー・ヴェリー・ハッピー」なんて、今聴くとスティーリー・ダンに先駆けること数年という、ほどよくジャズのテイストを取り入れた極上のAORですし、当時大ヒットしたロック的な「スピニング・ホイール」「モア・アンド・モア」にしてから、豪快ではあるが、若気の至り的ロックとは対局にある、けっこう大人のロックなんですよね。
 こういうセンスって、今から思えば当時バンド居た2人のアレンジャーのものだったんでしょうが、普通ならそのままCTIやヴァーブ・レーベルのような音楽になってしまうところを、とにもかくにもロックにできたのは、やはりデビッド・クレイトン・トーマスのヴォーカルが、極めてロック的スピリットに溢れていたからなんでしょうね。職人的に完璧なアレンジとソウルフルなロック野郎のヴォーカルが出会った時、なんともいえない音楽マジックが発動したってところですかね。

 さて、今回、この名作をSACDで聴きました。前述のとおりAORとして聴けそうなくらい完成度が高く、情報量満載な音楽ですから、SACDのようなメディアがよく似合います。アナログ盤や従来のCDではややナロウ気味な音質でしたが、リマスタリングが巧くいったのか、音の立体感や抜けは従来に比べてかなり向上しているという印象です。具体的にはベースの音程が良くわかり、手数の隠れて従来聴きとりにくかったバスドラムも存在感が伝わってきますし、左右のチャンネルくっきり振り分けられたライド・シンバルやピアノやオルガンの粒立ちもくっきりしていて、鮮度感のようなものが感じるあたり、その最たるものでしょう。

 こうなると、ほぼこのアルバムに準じた完成度を持つ「3」、少々渋いが味わい深い「4」、もちろんアル・クーパー在籍時のファーストも、ぜひぜひSACD化願いもんですが、たぶん無理だろうなぁ(笑)。
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