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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

ジョン・ピザレリ/ミーツ・ザ・ビートルズ

2005年05月06日 19時12分14秒 | JAZZ
 ジョン・ピザレリは弾いて歌えるジャズ・ギタリストということで、最近でも快調に活動を続けていますが、このアルバム1988年のビートルズ集です。この人、レギュラーはピアノ・トリオ、それもギター、ピアノ、ベースという、ナット・キング・コールばり古いタイプのトリオで活動しているようで、ここでは様々な編成をとってはいるものの、基本的にはこのトリオをベースに録音されているようです。編曲はなんとドン・セベスキー!。彼はオガーマンやネルソンあたりと並んで60年代のヴァーブやCTIでイージー・リスニング・ジャズの編曲で、健筆をふるってきた人ですが、この人の参加が光ってます。なにしろ表ジャケの下部には誇らしげに、Arranged And Counduct by Don Sebeskyとクレジットされているくらいですから....。

 さて、内容ですが、選曲はメジャーなものから渋目のものまで多彩。アレンジもけっこう多彩で、聴く前は全編スウィング・ジャズ的なものに染まっているのかとも思っていたのですが、さすがにドン・セベスキーのクレジットは伊達じゃないというか、セベスキーならではの曲もけっこう入っていたのはうれしい驚きでした
 まず、ジョン・ピザレリらしいスウィング・ジャズ的なものとしては、レギュラー・トリオのみによる演奏による「夢の人」、あとはドラムやビッグ・バンドを加えての「キャント・バイ・ミー・ラヴ」「ホエン・アイム・シックスティ・フォー」あたりがいかにもそれ的なアレンジです。あっ、あと「エリナー・リグビー」もそういった路線ですがインストゥルメンタルです。

 また、セベスキー編曲によるオーケストラが帯同としたゴージャズ路線としては、「ヒア・カムズ・ザ・サン」,「アンド・アイ・ラヴ・ハー」,「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」,「フォー・ノー・ワン」の4曲が極めつけですかね。まさに懐かしのCTIかヴァーブのアルバムでも聴いているような感じがします。ヴァーブといえば、思わずニヤリとしたのが「ゲット・バック」。ウェス・モンゴメリーの名作「ムービン・ウェス」を思わせるビッグ・バンド・アレンジにのって、リズムを刻むギターまでウェス・モンゴメリー風なのは笑ってしまいましたが。
 あと、アルバム中では異色だと思いますが。アコギだけをバックにしっとり謳う「悲しみをぶっとばせ」もなかなか味わい深いものがありました。

 全般的に手垢のついた名曲ほど、サビから歌ってみたり、表情やテンポを大きくかえてみたりとあれやこれやと手を加えているようですが、ともあれ旋律の加工だけに依存していないアレンジは、まさしくジャズのもので、ナット・キング・コールが歌ってるみたいな「キャント・バイ・ミー・ラヴ」、ボサ・ノバ調の「ヒア・カムズ・ザ・サン」、ゴージャス極まりない「フォー・ノー・ワン」などを、オリジナルと様変わりさせて聴かすあたり、ジャズの妙味が味わえたようでとても楽しかったです。
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渡辺香津美/Mo' Bop II (SACD)

2005年05月06日 17時59分00秒 | JAZZ-Fusion
  渡辺香津美のニュー・エレクトリック・トリオ第2作です。ジャズの場合、こうしたスーパー・グループ的な組み合わせというのは、大体1作目は非常に斬新かつ新鮮だが、2作目以降は洗練やまとまりは出てきても、マンネリズムに陥ることが多いのは周知の事実。今回の作品の場合、例えば、かつての「スパイス・オブ・ライフ」とその続編に比べれば、格闘技的なスリルと緊張感のようなものは依然として健在ですから、まぁ、あれほどの落差はありませんけど、インパクトという点では、やはりちと落ちるというのが正直なところです。ただ、例の不気味なくらいヘビーな重量感のようなものは、1作目以上かもしれませんし、完成度は当たり前のように高めてますから、どっちをとるかは、まぁ、人それぞれだとは思いますが....。

 で、今回の作品いきなり「クレオパトラの夢」から始まるの意表をついてます。この曲、もちろんバド・パウエルの作ったジャズ・スタンダードな訳ですが、これをメカニカルなファンクで料理しているあたり、最初からこのトリオのヴァーサタイルさ全開という感じで楽しいです。
 3曲目「Mystic Sand」は4ビートを複雑なキメが交錯しつつ、徐々にトリオ全体がテンションを上げていくという、いかにも渡辺香津美が仕掛けそうな曲でスリリングさではアルバム随一ですかね。5曲目は隙間だらけで、時に弛緩しそうになるすれすれなところで緊張感を誘う、調度「MOBO」をコンセプト再現したような音。「MOBO」といえば、アルバム・ラストは「遠州つばめ返し」の再演で、これは前作の「ROBO」並に強烈なテンションを楽しませます。
 あと、6曲目「Cry Me A River」はお馴染みの大スタンダードで、こっちは同じスタンダートでも「クレオパトラの夢」のような仕掛けはなく、ストレートにこの大バラードを情感深く歌い上げてるあたり、しばらく続いたアコスティック路線の成果なんでしょうね。

 という訳で、前作の「ROBO」みたいな、圧倒的スピード感でぶっち切るような曲が、オーラスの「遠州つばめ返し」まで出てこないため、アルバム全体の印象としては、疾走感のようなものはちと控え目、そのあたりがちょいと残念でした。あと、前作に比べると全般的にジャズ的なオーソドックスさに回帰しているような印象もあり、まぁ、そのあたりでこのアルバム、多少落ち着いた雰囲気を醸成しているのかもしれません。
 ちなみに今回もSACDで、音質的にはほぼ前作を踏襲している感じですが、低音の量感が大分アップして、前作にも増して重量感ある音になっているという感じです。低音がきちんと再生できるシステムでこれを鳴らすと、このアルバムのヘビーさは、確かにただごとではありません。 
コメント (1)
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ティエリー・ラング/プライベート・ガーデン

2005年05月06日 00時07分37秒 | JAZZ-Piano Trio
 2月に取り上げた、「ビトウィーン・ア・スマイル・アンド・ティアーズ」に続く93年の作品です。基本的には前作と同様な路線、つまりキース・ジャレット的な透明感や叙情をベースに作られた、いかにもヨーロッパナイズされた端正で静謐なジャズという感じですが、前作から2年間という時の流れがきっとそうさせたんでしょう。独特な透明感にせよ、ジャズ的なプレイにせよ、前作に比べより深みを増した表現になっているのは、注目していいでしょう。

 収録曲では1曲目の「A Star To My Father」や2曲目の「Nunzi」、あと6曲目のタイトル曲などは、ラングならではの既視感を誘うような音楽で、相変わらずうっとりとさせられるほどの素晴らしさですが、今回はそれにも増して、3曲目の「星影のステラ」がいいです。
 おそらくスタンダーズの同名アルバムでの名演にインスパイアされて取り上げたものと思われ、思索的なムードから徐々にテーマを明らかにしていく冒頭部分や、テーマの後、テンポを上げトリオ・ミュージックに雪崩れ込んでいき徐々に熱っぽくなっていくあたりに濃厚な影響を感じさせますが、それでいて彼特有の「淡さ」のようなものが、きちんとオーソドックスなジャズの中に聴こえてくるのがいいんですよね。
 コルトレーンの4曲目の「Giant Steps」では、最後にテーマを演奏してあっけなさみたいなものもカッコいいですし、7曲目の「I Hear A Rhapsody」も「星影のステラ」と同様な意味でもいい感じ。

 それにしても、全く個人的な好みではあるんでしょうけど、ジャズではこの人の音楽くらいしっくり来る音楽もないです。肌に馴染むというか、ジャズという音楽へ対峙の仕方が他人とは思えないというか....とにかく、無性に好きだなぁ、この人の音楽。
コメント (2)
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