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トミー・フラナガン/オーバー・シーズ

2005年05月23日 19時03分32秒 | JAZZ-Piano Trio
 トミー・フラナガンの傑作のみならず、ピアノ・トリオによるジャズの傑作として屈指の1枚です。私もピアノ・トリオに開眼したアルバムの一枚ですが、もう20年近く、たまに取り出してはその度に聴き惚れてしまう作品でもあります。この作品の凄いのは、とにかくトリオ全体がドライブしまくっていること。そしてそれが単に緊張感をギスギスと出すのでなく、ジャズ的なリラクゼーションと表裏一体になって、両者が絶妙なバランス保っているあたりでしょうか。

 さて、フラナガンは日頃のおとなしめで、サイドメンでのプレイに名演が多いとの定評があるのは有名ですか、どういういきさつでこうなったのか、日頃とは人が違ったように小気味よいノリで疾走感溢れるプレイをを披露しているんですよね、まずはそこがいいです。2曲目の「チェルシー・ブリッジ」とか、ラストの「ウィロー・ウィープ・フォー・ミー」あたりは、いつもトフラナガンならもう少し角のとれた、割と穏やかで緩い、オシャレなプレイをしそうですが、このアルバムだと割とピーンと張ったような緊張感がそこはかとなく感じれるのがいつも違う点ですかね。割とこのあたりを捉えて、否定的にこの作品を捉える向きもあるようですが、個人的にはこういうフラナガンもありありあり(笑)。

 次にドラムスのエルヴィン・ジョーンズのプレイ、特にブラシのキレが特筆もので、大昔「このアルバムはエルヴィンのドラムにトミフラのピアノという豪華なオマケがついた作品だ」旨の記事を読んだことありますけど、それも納得できる凄さまじさです。1曲目の「リラクシン・アット・カマレロ」からテンションが凄まじく高くて、中間部でベース相手にフレーズ交換するあたりは、なんか爆発寸前って感じすらします。ブラシで爆発寸前って形容もおかしいですが、本来軽快にリズムをキープするハズのブラシがまるで、鉈をブンブン振り回しているような重量感あるんですよ、凄いです。5曲目「ビーツ・アップ」や7曲目の「ヴェルダンディ」も同様な感じで、この3曲については、確かに主役はエルヴィン・ジョーンスかもしれません。

 ちなみにこのアルバム、ご存じのとおり1957年にJJジョンソン・クインテットの一員としてヨーロッパツアーをした時に、ストックホルムで吹き込んだアルバムで、時期的にはぎりぎりステレオ録音に間に合わず、モノラルなのが残念ですが、ある意味、ジャズ特有といってもいい、非常にオンな音で収録されているせいで、あまり不足を感じません。自宅のJBLでも非常に生々しい臨場感のある音で再生され、しばしモノラル録音であることを忘れてしまうほどです。1957年のモノ録音というと、クラシックではかなり貧弱に聴こえてしまいますが、プレスティッジとかブルーノートの作品はモノでも極めて良質な録音が多いのは驚きます。機器のグレード上げれば上げるほど、実は素晴らしい録音だったことが分かるなんていう現象を楽しめるというのは、よくありますが50年代の前記レーベルの音というのもそういうものの最たるソース群じゃないでしょうか。もちろんこのアルバムはそのレーベルの作品ではありませんが、それらに準じた音質で、とても楽しめます。

コメント (1)
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