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ワン・フォー・オール/情事の終わり

2005年05月19日 12時52分35秒 | JAZZ
 ワン・フォー・オールはニューヨークの若手ジャズ・ミュージシャンにより結成された三管のコンボです。メンバーはエリック・アレキサンダー(ts)、ジム・ロトンディ(tp)、スティーブ・デイヴィス(tb)、デヴィッド・ヘイゼルタイン(p)、ピーター・ワシントン(b)、ジョー・ファンズワース(ds)で、中ではサックスのエリック・アレキサンダーとピアノのデビッド・ヘイゼルタインがソロ・アルバム何枚か出してますから有名な方ですかね。あっ、あとトロンボーンのスティーブ・デイヴィスはチック・コリアのオリジンのメンバーですから、案外この人が一番有名かも.....。ともあれ、こうした若手によるグループでによるヴィーナス・レーベルでのデビュー作です。

 このグループはこのアルバム以前にもクリス・クロスとかシャープ・ナインといったマイナー・レーベルで既に何枚のアルバムを出している訳ですが、そこでのアルバムは良く言うと新主流派風、悪くいうと考え過ぎ、こねくり回し過ぎた音楽をやってたと思うんですが、ここでの音楽はもう少し先祖返りしているというか、早い話がイケイケなハード・バップ演奏に終始しているのが特徴でしょう。
 このあたりはヴィーナスというレーベルの意向が強く反映したもと考えれますが、今時の若手ミュージシャンは知識もテクニックも豊富なかわりに、あまりに向いている方向がヴァーサタイル過ぎて、いったい何をやりたいんだかよくわからない場合もあるので、予め方向性をレーベル側で決めてしまい、バンド全体はいわばタガをはめた状態で制作したのは、こういうインテリ集団の場合、案外正解だったのではないでしょうか。

 収録曲では、1曲目の「情事の終わり」でキマリですかね。ドラム・ソロをイントロにお馴染みのテーマを高速で演奏すると、すぐさまアドリブに突入する訳ですが、その奔流の如きその勢いと、強烈なスウィング感には圧倒的されますし、テーマに戻る前のリフの部分のシャープさなど、もはやロック的とすらいいたいようなダイナミズムが感じられます。他の曲では「ストールン・モーメンツ」、オリバー・ネルソンの演奏を下敷きにしているようですが、あの演奏の黒っぽいところはかなり後退しているものの、非常に各人のアドリブは充実しています。続く「コルコバド」はデイビスの編曲のようですが、クラウス・オガーマンのものを下敷きにしているは一聴瞭然でしょう。ただ、3管でこうした色彩感を出しているのはさすがです。あとオリジナル曲も数曲収められていますが、中ではヘイゼルタインお得意の込み入ったリズムパターンで演奏「ハウ・アー・ユー」がおもしろかったですかね。

 という訳で、数あるワン・フォー・オールの作品ではまずは筆頭に来るべき傑作だと思います。ついでながらブルーノート的な音を現代のテクノロジーで再現したようなヴィーナスらしい音質も優秀です。数あるヴィーナスの作品でも上位にランキングしうる音の良さじゃないですかね。
コメント
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