今日(3月31日)は風の冷たい一日でした。雑用を済ませて夕方帰ってきましたら、「さきほど静岡地検が袴田事件再審開始決定に対して即時抗告を行った」とのメールが届いていました
夕刊が来ていました、「飯塚事件、再審認めず、福岡地裁」の文字が目に飛び込んできました。この事件も極めて冤罪の可能性が高い事件です、しかし、袴田事件と大きく異なるのは、犯人とされた久間三千年(くま・みちとし)さんが既に死刑を執行されてしまっているということです、再審請求は遺族によるものです
飯塚事件というのは1992年2月に福岡県飯塚市で起きた女児殺害事件です、久間三千年さんは1994年9月に逮捕され、1999年に福岡地裁で死刑判決を下され、2006年9月に最高裁で死刑が確定、2008年10月、死刑確定からわずか2年後、再審請求を行おうとしていたやさきに処刑されました、再審請求が行われたのは死刑執行後のことです
あきれるのは、この福岡地裁の決定では肝心のDNA鑑定について、当時の警視庁科学警察研究所による鑑定結果について「(現在の鑑定技術からすると)直ちに有罪認定の根拠とすることはできない」としながら、鑑定結果に問題はあっても他の証拠から犯人であることがリッパに立証されているとしていることです、しかし、警視庁によるDNA鑑定が誤りであったならぼ、他にどんな有力な証拠があったとしても、その証拠能力に疑いが生じ、意味をなしません。
確定判決では遺体などから採取された血液のDNA型と久間さんのものとが一致したとして有罪と認定されたのですが、当時用いられたDNA型の鑑定技術は冤罪事件であることが明らかとなった足利事件でも使われた「MCT118型」と称されるものであり、時期も同じこの技術の導入初期のことであったとされています、つまり当時の警視庁の分析技術に欠陥があったことは、すでに足利事件で証明されているのです。
(足利事件というのは1990年5月、栃木県足利市でおきた女児殺害事件であり、犯人であるとして逮捕された菅家利和さんは実刑判決を受け服役していました、2009年5月に行われたDNA型の再鑑定の結果、菅家さんのものと一致しないことが判明、菅家さんはすぐに釈放され、その後の再審で無罪が確定しました。日弁連は袴田事件、名張毒ぶどう酒事件と同様に足利事件も冤罪であるとして支援していました)
そして真偽のほどは明らかでありませんが、警察は血液の試料は分析に使い切ってしまったので存在していないとしています。このため弁護側は再鑑定を行うことができず、当初の鑑定結果を示す写真を分析して反論することしかできません。このような重要な意味を有する分析を行うに際しては、後に再検査や分析が必要となった場合に備えて試料の一部を保存しておくのが化学分析における初歩的な常識ですから、GGIの考えますところ、試料はまだどこかに残されているか、あるいは先に述べましたように足利事件でDNA型の鑑定技術が問題視されたために、あわてて捨ててしまったのではないかと思われます
弁護団の岩田務弁護士は「決定はまったく予想外の許し難い暴挙、再審を開始すれば、死刑制度の問い直しにつながるという重大性に目を奪われている」と述べています(3月31日付け毎日新聞)
この岩田弁護士の言葉は飯塚事件の再審請求が突き付けている問題の本質を示してしています、すでに処刑してしまったあとで冤罪であることが明らかになったならば、司法への信頼が根底から覆され、死刑制度そのものが問われることになるからです
この意味から、飯塚事件の再審は袴田事件以上に困難なものとなるでしょう、検察だけではなく、裁判所も必死で、司法の権威を危険にさらすことになりかねない再審開始に反対することになるのではないかと懸念されるからです
今日のNHKは、袴田事件の即時抗告のことも、飯塚事件の再審請求棄却のこともロクに報じておりませんでした・・なかなかの「公共」放送であります
よろしければ写真をクリックしてご覧くださいませ、よくは写っていないのですが八重葎庵ノーザンガーデンにはいま椿がたくさん咲いております
みなさま、グッドナイト・グッドラックでありますように