透明タペストリー

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「はやぶさ」

2011-01-04 | A 読書日記

 『生命を捉えなおす 生きている状態とはなにか』清水 博/中公新書  年越し本を読み終えた。

あとがきからの引用。**「生きている状態」とはどのような状態だろうかと、私は心に思いつづけてきました。そして現段階でそれに答えるとすれば、「生きている状態にあるシステムは情報を生成しつづける」ということになるでしょうか。私はここに生命の普遍性、つまり物質レベルの法則性の上からは異なるさまざまな「生物」に共通する「生命の論理」の原点があると考えています。**(349頁)

さまざまなレベル、階層で捉えることができる生命システムの普遍性をこのような観点から追求している、と分かったようなことを書いておく。




 『太陽系大紀行』野本陽代/岩波新書   『小惑星探査機はやぶさ 「玉手箱は開かれた」』川口淳一郎/中公新書

2日、善光寺初詣の帰りに長野駅前の大型書店に立ち寄り、この2冊を買い求めた。昨年最も印象に残った国内の出来事は「はやぶさ」の帰還だった。でもこのプロジェクトのことは何も知らない。いくつものトラブルが発生したというのだが、具体的にどのようなトラブルだったのか・・・。そこでこの2冊を読んで、「はやぶさ」の誕生から帰還までを少し勉強しよう、というわけだ。

まず、『太陽系大紀行』を読んで、「はやぶさ」以前の探査機やそれらが伝えた惑星や衛星、小惑星などの情報を得た。著者は過去のプロジェクトの内容について、そして探査した惑星や小惑星の姿について、淡々と綴っている。読み物としては少し物足りなさも感じるが、冗長な文章を読むよりはずっといい。

「はやぶさ」については**降りる場所がどんな地形かわからないため、地上からいちいち指示を出していたのではまにあわない(*1)。そこで光学的な情報に基づく自律的な誘導、航法が力を発揮することになった。**と書かれている(110頁)。

うっかり読み過ごすと「はやぶさ」の凄さに気がつかない。「はやぶさ」はイトカワの地形に関する情報を自分で収集し、自分で取るべき行動を考えて実行したのだ。この自律的な機能の搭載がはやぶさの大きな特徴のひとつだった。

さて、『小惑星探査機はやぶさ』。

この本の著者の川口淳一郎氏は「はやぶさ」プロジェクトマネージャ(*2)。技術者らしい冷静な筆致だが、どことなくユーモアも感じる。このような本の出版を望んでいたのでうれしい。「はやぶさ本」が新書で出るとしたら中公新書だと思っていたが、やはりそうだった。

「はやぶさ」!  小惑星サンプルリターンという困難なミッションの全貌。まさか新書を読んで涙が出るとは思わなかった。新年早々、いい本に出会った。


メモ)
*1:地球とイトカワは着陸のミッションの時点で約3億km(地球から太陽までの距離は約1億5千kmだから、その2倍!)離れていた。運用室からの指令が「はやぶさ」に届くのに17分もかかるから、「はやぶさ」自身が判断して行動しなくてはならなかった。
*2:最近はコンピューターはコンピュータ、エレベーターはエレベータというように最後を伸ばさずに表記することが多い。この本ではマネージャ、ディレクタと表記されている。



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