透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「血族」読了 次は・・・

2011-01-26 | A 読書日記



 歌手の菅原洋一は ♪あなたの過去など知りたくないの と歌った。でも作家の山口瞳は違った・・・。

**母は、とにかく、私には、何もかも、なにも言わなかった。隠したままで死んでいった。**(322頁)  山口瞳は母親が黙して語ろうとしなかった「過去」を知りたかった、知らなければならなかった・・・。

およそ30年ぶりに読んだ『血族』 山口瞳/文春文庫。

山口瞳は時に**「母の隠していたことを、周りの人たちが隠していたことを掘り起こして、それが何になるのだろうか」**(247、8頁)と思いつつ母親の過去を解明していく。

父母の結婚式や母の花嫁姿の写真がアルバムに一枚もないのはなぜか・・・。**大正十五年十一月三日に私は生まれた。戸籍上はそういうことになっている。(中略 )私は、早くから、この生年月日に疑念を抱いていた。**(16頁) 生年月日を変えて届出をしたのはなぜか・・・。優れた推理小説のような山口瞳の謎解きを読み進んだ。

この私小説の最終章はたった二行で終わっている。上手い終わらせ方だと思うが具体的には書かないでおく。この文庫本には再読を要すというメモ書きがある。なぜそう思ったのか、定かではない。でも再読してよかったと思う。

さて次は『成熟と喪失〝母〟の崩壊』 江藤淳/講談社文庫 これまた30年ぶりの再読。


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