透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「繰り返さないという美学」へ

2009-01-03 | B 繰り返しの美学

 同一形を等間隔に並べるという単純な数理的規則に拠って構成されている「繰り返しの美学」。その構成が美しいことについて、何度も書いてきました。以下のことについても既に書きましたが・・・。

脳科学者の茂木健一郎さんは『「脳」整理法』ちくま新書 に「規則性は歓びの感情を引き起こす」と興味深い指摘をしています。また、建築史家の藤森照信さんは繰り返しのパターンのひとつ、左右対称が美しいのは何故かについて、人が生まれてまず目にするのが母親の顔で、左右対称。それで左右対称を美しいと思うようにプログラムされている」のだ、と雑誌「モダンリビング」に書いていました。

『NHK夢の美術館 世界の名建築100選』新建築社を見ていると、選ばれている建築にはファサードや内部空間が左右対称のものが多いことに気が付きます。

やはり茂木さんや藤森さんが指摘するように人を感動させる建築には左右対称という単純な幾何学的ルールに則ってデザインされたものが多いようです。

100選に選ばれている日本の建築でも、広島の厳島神社や日光東照宮の陽明門などは建築正面にカメラを正対させて左右対称であることを強調して撮った写真を載せています(ただし、中には平等院鳳凰堂のようにそのように撮っていないものもあります)。

日本人にもこのように単純な規則性に反応し、美しいと思う美意識は当然あるのでしょう。その一方で規則性が隠されていて読み取れないものにも反応する感性を持っているんですね。その代表例として和風庭園を挙げるとすれば、龍安寺の石庭が直ちに浮かびます。

15個の石の布置は黄金比という規則に基づいている、という説もあるようですが、作庭者はそのような知的な美学ではなく、感性に拠っていたのではないか、と私は思います。

この石庭が何故美しいのか、京都大学の謎解きの試みが数年前だと思いますが、新聞に載っていました。残念ながら内容を覚えていません。やはり気になる記事はスクラップ、最近ではスキャンして画像データ保存ですか、しておくべきだと思います。

今年はこのような美について「繰り返さないという美学」というテーマ(繰り返さないというキーワードが最適だとは思いませんが)を据えて取り上げたいと思います。

多様な解釈が可能だと思いますので、珍説をでっち上げようと思います。分析的なアプローチでは無理でしょうから、難しいとは思いますが。


「桂離宮」

2009-01-03 | A 読書日記


桂離宮 『NHK夢の美術館 世界の名建築100選』と「建築トランプ」

■ 建築トランプ。あと10数枚残すのみ、となった。今年は桂離宮から。といってもこの数奇屋風書院造りの名建築については知識がない。ドイツから亡命してきた建築家、ブルーノ・タウトが「泣きたくなるほど美しい」と絶賛したと書いて、後が続かない・・・。でも何かもう少し知っているだろう。知識を搾り出せ。

桂は月の名所、桂離宮には月に関わるデザインがあちこちに施されている。襖の引き手。月見台、確か床には竹が使われている。そして、松琴亭には青と白の市松模様のモダンなデザインの襖がある。

これ以上書けないのでチラッとカンニング(日本名建築写真選集19 桂離宮/新潮社)。



月波楼というユニークな平面形の茶屋がある。月を鑑賞するのにもっとも適したロケーションだそうだ。この建築の平面形を説明するのは難しい。**床と付書院を備えた四畳の一の間、この東に鉤の手に続く七畳半の中の間、(後略)**と平面形が同書に説明されてはいるが、それを全て引用しても伝わらないと思う。

ユニークな平面形だが、外観は端整にまとまっていて美しい。こけら葺きの寄棟造りで瓦棟。松琴亭の外観の方がまとまりに欠けている。

今からおよそ400年前、元和初年に天皇の弟宮である八条宮初代智仁親王によって別荘として草創され、第二代智忠親王によって完成された、ということだ(前掲書の大和 智氏の解説による)。元和初年っていつ? 調べてみて1615年と分かった。

日本人の美意識ってやはりすごいと思う。「繰り返しの美学」にとどまっていてはいけない。感性が創りだす「繰り返さないという美学」に学ばなくては・・・。

この桂離宮を紹介するテレビ番組が明日(4日)ある。必見!!