昨日の当ブログで浜矩子さんが講演で紹介した安倍首相の笹川平和財団米国で行ったスピーチ内容について全文を掲載したいと思います。
浜さんが指摘するように、確かに安倍首相は「私の外交・安全保障政策は、アベノミクスと表裏一体であり」と述べ、GDPを増やしていくことは「当然、防衛費をしっかりと増やしていくこともできる」と宣言しているのには驚きです。
こうしたあからさまな日米同盟強化のスピーチを日本国内ではなく、米国で行うこと自体、安倍首相の姿勢がわかるというものです。
あなたはどう思いますか?
<笹川平和財団米国主催の第2回安全保障フォーラムでの安倍晋三首相のスピーチ内容>
私の長年の友人で、敬愛する笹川陽平会長が、ブレア提督という素晴らしい方を米国笹川平和財団の代表に迎えられ、SPFUSA が目覚ましい活動をなさっていることに対しまして、敬意を表します。本日のお招きに、心から感謝申し上げます。
午前中、議会上下両院合同会議で、日本の総理大臣として初めて演説をする栄誉に浴しました。申し上げたことのエッセンスは、強い日本は米国の利益であり、強い日米同盟は、地域と世界の利益である、という点に尽きます。
強い日本は、安定して成長する経済に土台を置きます。若い世代の日本人が、自分と自分の国と、その両者の将来について、自信をもつところから始まります。私の外交・安全保障政策は、アベノミクスと表裏一体であります。
厳しい財政の中にある日本は、防衛費を劇的に増やすことはできません。それでも、日米同盟をもっと機能させる努力はできます。自分の国を自分で守る意図と能力を持たない限り、日米同盟を強くすることはできません。
それがリバランスを補強し、日米が力を合わせることで、アジア・太平洋、インド洋にかけての地域に、平和と安定を確かなものにできればよい。そう思っています。
私たちを取り巻く安全保障環境は、依然として厳しさを増しています。自衛隊機が南西方面でスクランブルを実施する頻度は、日に日に増えるいっぽうです。海上保安庁も、連日連夜、荒海の中、必死に領海を守っています。南シナ海で起きていることは、多言を要しません。10 年前とは様変わりだと言ってもいいでしょう。
安全保障法制の見直しを、私たちはこの夏までに実行する決意です。これで、平時・グレーゾーンから緊急事態に至るあらゆるレベルの事態に、切れ目のない対応を可能にすることができます。
今までは、例えば日米のイージス艦が日本のそばで弾道ミサイルの警戒に共同して当たっている際、米艦が攻撃を受けても、我が国のイージス艦は米国の艦船を助けることができませんでした。これが、可能となります。
国際平和協力活動を一緒にしている他国部隊が襲われた場合、自衛隊は駆けつけて助けることができませんでしたが、これが可能となります。
日米同盟の意義とは何でしょうか。冷戦に勝利をもたらしたこの同盟は、新たな環境に対応する柔軟性をもっています。なぜなら、それは価値が支える同盟であるからであります。日米が共有する揺るぎのない価値が根底にある同盟であるからであります。
信頼に基づいているからでもあります。あの、日本を襲った災害の後、助けに来てくれた米軍の人たちを動かしていたのは、一片の命令だけだったとは思いません。困った人がいるとき黙過することができないという、米国人の溢れんばかりの善意がそうさせたのだと思います。それが、悲嘆にくれた日本人にどれだけ希望をくれたかもしれません。
このとき受けた恩を決して忘れないよう、そして米軍との「絆」をますます強くするために、私たちは、在日米軍で働いた経験がある人々とのネットワークづくり、またその強化のプロジェクトをSPFUSA と協力して始めます。
在日米軍経験者やそのご家族は、帰国後、全米各地で活躍されています。裾野の広いネットワークで繋げることができるなら、彼らはそれだけ、折に触れ日本のことを思い出し、日米関係を支える力強い母体になってくれるでしょう。
議会の演説で私は、高校生の頃から愛聴してきたキャロル・キングのYou’ve got afriend を引きながら、日米同盟は今や、希望の同盟になるのだと言いました。
希望の同盟は、世界に安心を与える同盟です。希望の同盟は、世界の公共財を進んで守ろうとする同盟です。それは繰り返しますが、民主主義、人権、法の支配といった我々に共通の価値を、増進させようという同盟です。
ブレア提督、ダニエル・ボブ、加藤和世さん、SPFUSA の皆さん。今日は素晴らしい機会をくださり、本当に有り難うございました。
私の祖父がよく言ったのでありますけれども、なぜ日本は1回総理を経験した人物をもう一度総理にしないのか。1回の経験の中で様々な失敗や挫折を経験するわけでありまして、次はこうやれば上手くやると、一番よく知っているのは1回失敗した総理大臣であろうと思います。私はその5年間の間に、なぜ一年間で終わってしまったのか、そのことを常に考えていました。そのことを生かしながら、今政権運営を行っている。これが良かったのかなあと思います。
日本は15年間、1997年からずっとデフレ経済の中に沈んでいました。その中GDP、名目GDP は縮小し、そして世界におけるプレゼンスも小さくなってしまいました。
その間、日本人は自信を失い、もう成長できない、こう思いはじめていました。私はこれを変えなければいけない、デフレから脱却をして、経済を成長させ、そしてGDP を増やしていく。それは社会保障の財政基盤を強くすることになりますし、当然、防衛費をしっかりと増やしていくこともできます。また、海外に対する支援も行うことができる。日本のプレゼンスを引き上げていくことができる。つまり、強い経済はしっかりとした安全保障、安全保障政策の建て直しに不可欠であると、こう考えています。
まず、2020年のオリンピック・パラリンピックは、日本の魅力、そしてテクノロジーを世界に発信できるオリンピックにしていきたいと思います。同時に、オリンピックであり、パラリンピックでもあります。日本においては、障害のある人も、あるいは歳をとった人も、女性の人も、すべての人たちにとって機会がある。チャンスがある。そしてハードルがない世界であることを示していきたいと思います。
そして同時に、世界から沢山の人たちが日本を訪れることになります。その中で、日本はおもてなしで応えたいと思いますが、世界の人々にとって、日本に行くことによって様々な刺激を受ける、そしてまた、あるいは、日本で活動したい、勉強したい、仕事をしたい、と思ってもらえるような国にしていきたいと思いますし、同時に、東日本大震災において多くの人たちの支援をいただきました。あの震災から十分に立ち直った日本の姿をお見せしたいと思います。
(2015年4月29日 ワシントンDC)
【出典】笹川平和財団米国 http://spfusa.org/
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