とだ九条の会blog

「とだ九条の会」公式HPに併設=「とだ九条の会ブログ」でネットワークを広げます。

9・11以後の空気(3)

2007年07月17日 | 国際・政治
昨日に引き続き『この時代に生きること、働くこと~9・11犠牲者遺族とジャーナリストのメッセージ』から、「9・11以後の空気」を引き続き見ていきたいと思います。

前回、国民の精神構造まで変えてしまう雇用破壊の主要な原因として「労働コストの削減」を指摘しました。島本さんは、この「労働コストの削減」の問題点として次の3点を紹介しています。
一つは、このコスト削減が「政治不在で進められている」ということ。つまり経営者の意向だけが労働行政に反映されているという問題です。島本さんは、その例として小泉構造改革のとき、小泉首相の諮問機関として「総合規制改革会議」(のちに「規制改革・民間開放推進会議」に改組)が小泉構造改革の具体化を方向づけましたが、このメンバー15人の内10人が民間企業の経営者(のちの「規制改革・民間開放推進会議」でも13人が民間企業の経営者)であり、労働者代表は1人も委員に入っていなかったことを指摘しています。現在のアメリカが“コーポレート・アメリカ”=「企業が支配するアメリカ」と言われているといいますが、日本もアメリカ追随で“コーポレート・ジャパン”=「企業が支配する日本」になりつつあるのだと。こんな流れの中で九条改憲なんかやられたら、この行き着く先は軍産複合体ができてしまうだろうと警鐘を鳴らします。
問題の二つ目は、「規制緩和の政策」が労働者の命をも脅かしているという点です。「規制緩和の政策」とは、「規制をはずして会社を競争させれば、いい会社は生き残り悪い会社はつぶれる、そして経済は発展する」という競争促進の政策のこと。島本さんはこの政策を批判して「経済のために人間がいるのではなく、経済は人間のためにある」という当たり前の考えを早く取り戻さないと、この国は大変なことになる」と警告してきましたが、その例としてJR西日本の福知山線での列車脱線事故を挙げ、問題点を指摘しました。
問題の三つ目は、「もの言えぬ社会をつくる」ということ。「有期雇用」でも、「派遣労働」でも、「隠れ従業員」(個人請負)でも、「下請け」(子会社)でも、収入格差と連動して今、「人権格差」が進行していることが深刻だと言います。「食べていくためには、つまり生きたいと思ったら上にさからってはいけない」という状況が現実に生まれているのです。日本の雇用労働者は約5000万人。その家族も含めたら日本人の約8割は雇用労働に依拠して生きているわけですから、“会社の中のムード”は確実に“社会のムード”を決めていくだろうと。
このように「9・11以後の空気」、人々の暮らし、どちらを見ても今の日本は危機的な状況にあると島本さんは言います。それをくい止めるには、これはもう「戦争の現場をよみがえらせることしかない」、戦争の核心は人が死ぬことだから「戦争で死ぬ」ということの実態をできるだけ生々しくよみがえらせたい――それが『戦争で死ぬ、ということ』という書物を書いた理由だということです。

私も確かに9・11以後「空気」は変わったと思います。軍事の動きは経済の動き、政治の動きと密接に関係しています。島本さんが今回言いたかったこと(今回紹介した部分は全講演のほんの一部ですが)――「労働・テロ・戦争」の関係が少しはわかった感じがしました。同時に、「何を語るか」という語る側(労組)の視点は、私たち国民の側の視点でもあることも痛感させられました。


【出典】『この時代に生きること、働くこと~9・11犠牲者遺族とジャーナリストのメッセージ』(中村佑・島本慈子著、岩波ブックレットNo.702.480円+税)


※このブログをお読みの方で、「私も九条の会のアピール(「とだ九条の会」HPをご覧ください。)に賛同し、憲法九条を守る一翼になりたい」という方は、 「とだ九条の会」HPに「WEB署名」がありますので、「賛同署名」にご協力ください。
■「とだ九条の会」公式ホームページもご覧ください。
http://www15.ocn.ne.jp/~toda9jo/

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする