とだ九条の会blog

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自民党の「新憲法草案」を読んで

2006年05月24日 | 国際・政治
2005年10月、自民党は結党50年を機に「新憲法草案」を発表しました。
戦後、改憲のたくらみは絶え間なく続けられてきたのですが、このようにまとめて発表されたのは初めてです。それも日本国憲法の一部を「改定」するのではなく、「新憲法」というのです。アメリカのあからさまな九条への攻撃、在日米軍再編強化での要求といい、日米財界の発言といい、また先の選挙で大勝した自民党が民主党と合意すれば、改憲の条件である衆参両院で2/3以上というハードルを越えられる見通しが現実的になったことから、かつてなく現実味をおびてきており危険な状況です。

私たち「とだ九条の会」でも2006年2月10日、戸田市在住の米倉勉弁護士を講師に、自民党の「新憲法草案」を批判的に読む憲法学習会を実施しました。あらめて逐条的に日本国憲法と読み比べて、自民党「新憲法草案」の何と安直で、底の浅いものであるのかが分かると同時に、日本国憲法の何と崇高で格調高いものであるかということがよく分かりました。米倉氏の講演を含めて、自民党の「新憲法草案」の主な問題点を見ておきましょう。

自民党「新憲法草案」の主な問題点は、

1.第一に、そもそも「憲法」とは何ぞやという観点が違います。「憲法」の目的は、立憲主義、つまり国民の自由を守るために、国家権力に制限を加えることです。「新憲法草案」はそうした視点が全くなく、「憲法」の変質でしかないと米倉氏は指摘します。
先に当ブログで紹介した大塚英志氏(まんが原作者・神戸芸術工科大学教授)も言っていましたが、「新憲法草案」の前文には「主義」という言葉が4つも出てきます。一方、日本国憲法には一言も出てきません。「主権が国民にあること、平和を求めるのは人類の普遍的な理念であって、それを他国と協力しあいながら目指そうよ」ということが日本国憲法の前文には書かれているんだ、と言っています。「主義」をいたずらに羅列するばかりで「理想」の語られない「新憲法草案」前文はいかがなものか、と辛辣です。

2.第二に、何と言っても、平和主義の放棄、9条2項の削除、そして全く逆に「自衛軍」を明記した第2項の新設です。
現在の第2項の「戦力不保持」「交戦権否認」に代わって、「自衛軍」を明記しているのですが、その条文に対応する「前文」では、「愛情と責任感と気概をもって」と何とも「九条」改正への根拠が明確ではありません。
大塚氏もいわく、「現行の『前文』が九条における『戦争放棄』に至る前提をきちんと論じている以上、それを改める新しい『前文』は、なぜ今、『自衛軍』が必要なのかを正面から語る必要があるはずだ」と語ります。
全く、その通りだと思います。

3.第三に、米倉氏は、「新憲法草案」には“新自由主義イデオロギー”があちらこちらに見られることを指摘します。
いかにも新しく現実的かのように「新憲法草案」では「環境権」や「知的財産権」を
記述したり、地方自治への「適切な役割分担」などが新設されています。
「環境権」や「知的財産権」など、いわゆる「新しい人権」は「新憲法草案」の“売り”の一つなのでしょう。
規制緩和・自由化・市場原理・自由競争万能論、どれもグローバルゼーションの中で日本が取り残されると煽っているかのようです。
また、「適切な役割分担」などを新設した地方自治に関する変容については、二宮厚美
神戸大学教授(経済学)は、「憲法からナショナルミニマム〔※〕保障を抜き取って、
福祉国家を分権的に制限・解体する意図」があると指摘しています。
※国家が国民に対して保障する最低限の生活水準

自民党の「新憲法草案」は、なんだかんだともっともらしいことを並べて、今風に飾り作っても、「結局『解釈憲法』の積み重ねで生じた自衛隊の実態と憲法九条のずれを修正できればいいという安易さの産物としてこの『草案』はある、と受け止められても仕方ないだろう」とは大塚氏。

あなたも是非、日本国憲法と自民党の「新憲法草案」を読み比べてみてください。


■「とだ九条の会」公式ホームページもご覧ください。
http://www15.ocn.ne.jp/~toda9jo/



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