tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

国民が能天気の方が経済が活性化する?

2021年11月12日 13時21分05秒 | 経済
今回の表題は些か問題かもしれませんが、世界の経験から見るとそうでもないのかもしれません。

個人の場合も、国民と纏めて見た場合も、同じように「アリ(蟻)型」と〔キリギリス型〕があるようです。

このブログでは「アリ型」の例として日本、「キリギリス型」の例としてアメリカを挙げたりしていますが、これはイソップ童話になぞられたもので、日本は冬に備えて備蓄する国、アメリカは稼ぎ以上の生活を謳歌して赤字を垂れ流す国という趣旨です。

赤字を出しても、アメリカは基軸通貨国で、例外ですが、普通の国では、かつてのギリシャやイタリア、ポルトガル、韓国などのように、IMF(国際通貨基金)が赤字を出さないようにと厳しい管理をして、黒字になるまで経済の緊縮を要請します。

〔キリギリス型〕の場合は、政府も国民もいわば能天気で、ついつい稼ぎより良い暮らしをして赤字を出してしまうという事です。
結局そのツケを、IMF管理になって、緊縮生活で何年も苦しんで正常化するのです。

日本の場合はどちらかと言うと、過度に心配性で、将来に備えて備蓄をすることにばかり熱心になり過ぎているように見えます。

外から見れば、そんなに生活を切り詰めて、節約しても楽しくないでしょう、「もっと現在の生活を楽しんだ方が良いんじゃないですか」などと言われそうな感じです。

そう言われて、「そういえばそうですね。あんまりしこしこ溜め込むのはやめて、少しパット行きますか」と言うためには、人間少し能天気になって、「明日は明日の風が吹く」と呑気に構え、駄目になったら、その時はその時で考えようといった処世哲学に頭を切り替えなければならないのでしょう。

さて、そんなことが今の日本人に出来るでしょうか。
財政赤字の解決のめども立たないし、「公的年金はこのままでは次第に目減りして、老後には最低3000万円必要だと言われる中ですよ。そんな能天気になれるはずがない」とお考えの方が多でしょう。

だからこそ、今の日本はこんな状態なのですが、現状の日本経済の状態から判断すれば、日本がIMF管理になるまでには、まだかなりの段階があり、そこに至る間には、確り計画すれば、日本をアリでもキリギリスでもないバランスのとれた状態に作りかえていく余裕は十分あるように思っています。

岸田政権の新政策がそうした方向を向いていることを願うところですが。日本経済にはまだ余裕があるとうのは、次のような点です。

コロナ明けを待って、日本人が少しキリギリス型になって、もっと生活を楽しもうと消費性向を上げる余裕は5~6%はあるでしょう。それだけでGDPは 3~4%成長します。

余り消費を増やすと経常収支が赤字になるかもしれませんが、そうなると円が弱くなり円安になって、その結果は、国際競争力が強化され、貿易やインバウンドで赤字国になるのを食い止めてくれるでしょう。

多分、こんな状態が繰り返されて、巨大な日本の対外債権もバッファーになり、IMFにご迷惑をおかけする事にはならないでしょう。

これは日本経済正常化のプロセスで、その間に金利も次第に正常化し、貯蓄にはまともな利息が付くようになるでしょう。

金利が正常化するといことは年金財政にはまさに干天の慈雨で、公的年金も、企業年金なども、かつての「確定給付」に復帰する可能性が大きくなります。

国家財政は利払いが大変でしょうが、国債の半分以上を日銀が持っているといった状態ではかなり日銀経由でカネは帰ってきますので、負担は軽減されます。

一番問題は、これまでのアベノミクスで、所得格差がかなり拡大していますので、これを税によって(所得税制の累進強化、金融収益への適切な課税など)適切に再配分する事は、大前提です。一時金のバラマキではだめです。これが一番重要で、早急の課題でしょう。

岸田内閣は、どこまで国民の意識を変えられるでしょうか。