tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本の元気は戻るか:製造業の付加価値率の推移をみる

2021年11月23日 21時35分14秒 | 経済
企業経営の元気度を見る指標はいろいろ考えられますが、売上や利益の伸び率といった量的なものがまずあげられるでしょう。

では、そうして元気の源になる質的なモノ、例えば技術開発、製品開発といった企業成長の原動力になるようなものは何で見るかといいますとやはり「付加価値率」があげられるのではないでしょうか。

付加価値率はご承知のように 付加価値/売上高 を%表示で示したもので、企業のバイタリティの指標などとも言われます。

人気商品でも時がたてば価格は下がります。新しい人気商品、高性能商品をを出し続けることで付加価値率の維持、向上は可能になります。
それができる企業は元気のある企業ということになるわけです。

日本は最近いくつかの先端技術、先端商品の分野で、何となく後発のアジア諸国、例えば中国、韓国、それに台湾などに後れを取っているように感じられますが、その付加価値率の推移にも出ているのではないかと思い、財務省の「法人企業統計年報」を使って日本の製造業の付加価値率の動きを調べてみました。

その結果を示したのが下のグラフです。日本の製造業の付加価値率はほぼ安定的に20%前後、というのが常識といわれていますが、長期にみると、明らかに変化が出ているようです。

製造業の付加価値率の推移

            財務省「法人企業統計年報」

左端の1979年~80年というのは、日本経済が第一次オイルショックから立ち直る時期ですが、その辺りからグラフは上昇傾向です。

1985年は「プラザ合意」の年で1987年あたりで円レートは$1=240円から120円と大幅円高になりますが、付加価値率は 上がり続けます
1990年まではバブルの時期で、エレクトロニクスや自動車などで日本製品が世界で人気でした。

1990年、91年で土地バブル、株バブルは崩壊しますが、付加価値率は何とか22%水準を維持しています。
しかしこの辺りは円高対応で、日本は徹底したコストカットに呻吟する時期で、企業は体力をすり減らし、次第に前向きの力を失い、技術力も元気も失われていくプロセスでした。

2000年代に入ると、日本企業は守り一方の状況になり縮小均衡で最低限の利益を確保する「好況感なき上昇」と言われる中で、我慢して耐える努力の継続中にリーマンショックでさらに1ドル80円を切る円高となります。

付加価値率の動きを見ますと、縮小均衡の中で前向きの企業力は失われ、じり貧状態になり、リーマンショックの時は16.6%に落ちています。

そこからの脱出は容易ではないようです。2012年から円高解消のプロセスが始まり2013、14年の日銀の異次元金融緩和で為替レートは正常な水準(購買力平価相当)に戻りましたが、一旦遅れた技術開発や製品開発力は容易には戻ってこないようです。

2018年には 一時的に漸く20%に載せましたが、19年には再び割り込んでいます。
その後はコロナ禍で、世界の国々の経済もみな変調ですが、日本の場合、いつになったら、製造業の
付加価値率が、かつての22%水準に戻るのか、それには,日本人自体の長期不況の中で失われた元気な心を如何に取り戻すかという、いわば日本社会全体の意識改革のようなものが必要になってくるのではないでしょうか。新政権はよくその任に応えるでしょうか。日本の元気は戻るか

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