tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

原油価格問題、適切に対処できるか?

2021年11月26日 16時01分21秒 | 経済
アメリカの物価上昇率は6%に達したようです。EUも3%に達したようで、これまで言われていた「物価が上がらない時代」などという言葉は、すでに消えているようです。

アメリカの場合は、ガソリン価格は象徴的ですが、新車・中古車を始め多くの食料品、日用雑貨の値上がりもあるようで、景気の急速な立ち上がりで物流が追い付いていかない事が大きいとなど言われています。
当局は一過性のものと言っているようですが、それで済んでくれることを願うところです。

EUでは、イタリアが3%、スペインが4%に達し、何時も物価安定のドイツが3%を越え年内に5%を予測するなど、EUの2%インフレターゲットは一転して物価引き下げの目標になりそうです。

こうした物価上昇の各国の波が、原油価格の上昇をきっかけにしたという事はあるかもしれません。しかし、原油の値上がりだけで、物価上昇が起きているのではないでしょう。先行き要注意のような気がします。

日本はまだ1%以下の上昇率ですが、ガソリン・灯油が上がっているので、政府は慌てています。
バラマキの癖がついた日本政府は、さる17日に書きましたようにガソリンに補助金を出そうとしていますが、取るべき政策は、そんなことではないはずです。

一方、アメリカ、ヨーロッパの方は、物価上昇を賃上げで取り返そうという動きが出ることが懸念されます。
これをやると、かつての石油危機の時と同じく、輸入インフレが賃金コストインフレに転嫁され、一過性でなくなります。

結果はご承知のように、インフレが収まらない、引き締め政策、景気低迷、雇用悪化、スタグフレーションという、いわゆる先進国病、いつか来た道の再発です。

日本の場合は、政府の補助金政策で、表面上の物価は抑えられるかもしれませんが、それは、国債残高の増加となって、結局は回り回って、国民が、所得税、法人税、消費税といった形で「何時か」負担することになるのです。

原油価格の上昇は、日本経済のGDPのなかから、原油の値上がり分だけ産油国に上納金を納めたことになるのですから、日本国内で何をしようが取り返すことは出来ません。

出来るのは、そのうち原油価格が下がって、上納した分が返ってくることを待つしかないのです。そして、経験的には原油価格は上がったり下がったりするのです。

長い目で見れば「再生可能エネルギー」が豊富になって、原油価格が下がる可能性もあるのですから、政府には「補助金を出すなら、再エネの技術開発に出した方が合理的ですよ」と提言しなければならないところです。

 ついでに考えてみますと、アメリカがインフレ高進を抑えるために金融引き締め政策を取り、それによって、ドル高、円安となり、円安で輸入物価が上昇するわけで原油価格も上昇幅がその分大きくなると心配する向きもあります。

これについては、現状の日本経済の実情を考えた場合、今は、円安より円高を警戒すべきと考える範囲にあると考えるべきでしょう。

更にもう一つ付け加えますと日本の原油輸入は年間4.3兆円(2020年:GDPの0.8%ほど)で、これが2倍に値上がりして、全額国内価格に転嫁されても物価上昇は0.8%(GDPデフレーター)ほどだという事も計算しておくべきだろうと思います。