tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

自己資本比率から見る日本企業

2021年11月22日 15時00分55秒 | 経営
2021年度の中間決算の数字がそろい始めたようで、証券会社などがコロナの中でも増益の企業が多いといった報道をしています。

この所コロナのせいでいくらか停滞した自己資本比率の改善も多少進むかな、などと思いながら見ています。

自己資本比率というのはB/Sの右側、資産負債のサイドで、総資産(=総資本=資本+負債)の中で、資本(=自己資本)が何%を占めているかという数字です。
企業経営では固定資本、運転資金などのカネが必要ですが、経営のために使っているカネの内、自分で賄っているカネ(自己資金=自己資本)が何%かという事で、あとは外部から借りているカネです。

経営の安定を考えれば、借入金は少ない方が良いのですが、経営者はそのバランスを考えて経営をしているわけです。
早く成長するには借金も活用した方が良いのですが、借入金が多くなると、返済を迫られたりする可能性の大きくなりますから、バランスが肝心です。

会計の世界では自己資本比率は50%(半分は自分のカネ)が標準と言われますが日本企業は戦後ずっと自己資本不足で、高度成長の真只中の1970年代には法人企業統計の全産業(除金融・保険)全規模の平均の自己資本比率が13%などという事もありました。

そんなに低くて大丈夫なのかと思いますが、当時はメインバンク制といわれる企業と銀行の関係が一般的で、土地は必ず値上がりするという土地神話の時代でしたから土地を持っていれば資金繰りは銀行が面倒を見てくれる(融資してくれる)時代でした。

その後アメリカが日本企業に投資するようになって、業績に関係なく土地を持っている会社の株が高いなどという経営は透明ではない、資産は時価表示にすべきだなどと言われ、だんだん自己資本比率も実態を示すようになりました。

私も企業の財務諸表を見るときは先ず自己資本比率を見て50%を超えていれば、まあ確りしているなと思う事にしています。

その後、日本企業は自己資本の改善に努め、特に注目すべきはバブル崩壊後も、長期不況の中で、総資産圧縮努力なども重ねて自己資本比率を高め、経営の健全化に努力し、リーマンショック前には法人企業統計の全産業全規模で37%を超えてきていました。

その後リーマンショックの影響は受けましたが、2019年(統計最新時点)には42%を超えてきています。資本金10億円以上に企業では45%水準に届いてきて、賃金は上がらないのに、資本蓄積偏重などと言われるようです。

ただ、自己資本比率が高い企業は、賃金も高いという傾向はあるようで、そうなるのが理想的でしょう。

蛇足ですが、今でも日本人は、企業の自己資本に直接投資する(株式投資する)という考え方は少なく、どちらかというと銀行に預けて元本の安全を図るという考え方が強いのは変わっていません。

昔は、企業が銀行からどんどんおカネを借りたのでよかったのですが、今は自己資本が充実してきて、企業が銀行からあまりおカネを借りなくなりました。

その結果、借り手の無くなったおカネは何処へ行っているのかというと、今度は政府が巨大な借り手になっています。
結果は、国債残高の著増、財政再建のめどが立たないという財政の現状になっています。

企業は借りた金はキチンと利息も払い、返済もしましたが、国は性悪で、利息は低くして、しかもキチンとした返済計画も立てないようです。
戦後の企業が借金経営だった時代と、今の政府が借金まみれの時代と、どちらが一体まともなのでしょうか。

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