tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

国際貢献の役割を大切にしよう

2017年03月13日 20時49分21秒 | 国際経済
国際貢献の役割を大切にしよう
 サウジアラビアの国王が来日しました。王子、閣僚、財界人など多くの人たちを同伴、総勢ほぼ1000人という報道です。
 サウジアラビアの国王の来日は46年ぶりとのことですが、報道によれば、今回の来日は、日本からの技術援助が主眼という事です。

 世界第二の産油国の王様としても、今後、長い目で見て、産油国というだけでは永続的な経済発展は望めないかもしれない、今から持てる資源を有効に使って、科学技術立国を目指さなければならないとお考えなのでしょう。
 そして、今回、訪日という選択をされたのだと拝察するところです。

 サウジアラビアが日本に目を付けたという事は、諸種の事情はあるでしょうが、日本にとっては大変有難いことだと思います。
 権力を持たず、人畜無害で平和の希求し、無資源国にもかかわらず世界有数の経済大国、科学技術、文化、芸術からアニメまで世界有数の実績を上げている国日本が、サウジアラビアに協力できることは沢山あると思います。

 戦後、平和国家になった日本は、アジアにおいては、文化交流、経済協力、技術協力を通じて、21世紀はアジアの世紀と言われるアジアの発展にそれなりの貢献をし、ともに発展をしてきたと思います。
 こうしたチャンスが、はからずも今回は中東の雄、サウジアラビアとの間で進む可能性が出てきたという事ではないでしょうか。

 もう1つの大事なニュースは、岸田外相が、5月にPKOの自衛隊が撤収する南スーダンに600万ドル(6億9000万円)の人道援助をすると記者会見で発表したことです。
 人道援助はもちろんカネは必要ですが、同時にその金には心がついていなければなりません。

 南スーダンに平和をもたらすことが最高の人道支援でしょうから、岸田外相も、今回に援助については、単に食糧援助の資金といったものではなく、政治的なプロセス、包括的な国民対話、人材育成も重視したものと言われたようです。

 国内的には現状の日本経済はいろいろと大変です。しかし、客観的に見れば、日本には卓越した技術もあり、国民の貯蓄に支えられた資金もあるのです。
 こうした日本特有の資源を有効に使うチャンスが、恐らく次第に増えてくるでしょう。その中で、(出しゃばることの嫌いな日本ですが)次第に、前回も触れましたように、触媒的な役割、仲介者としての役割を果たしうるチャンスも増えるでしょう。

 アジアの中でも、日本は平和な国か、好戦的な国か未だ評価は分かれるようです。国際理解には色々な要素もあり、定着には長い時間がかかるでしょう。しかし、日本がその道を進むことに、何かフォローの風が吹いてきているように感じられます。

仲介役(触媒)の重要性

2017年03月12日 12時14分32秒 | 国際関係
仲介役(触媒)の重要性
 自然界には色々なものがあります。その中でも「触媒」というのは「本当に不思議だな、しかし巧いものがあるものだな」と感心させられる物質です。

 最近注目を集める燃料電池は水素と酸素を化合させて水になる過程で発生する電気と熱を利用するものですが、その場合、触媒として白金などが使われるとのことです。
 家庭用の発電給湯器「エネファーム」、昨年あたりから走り始めている燃料電池車などは白金がないと機能しないのですが、白金は希少金属で高価ですから、如何に少ない白金で済ませるかとか、何とか白金に代わる物質がないかなど研究は大変なようです。

 人間社会でも「触媒」の役割をする人間がいます。
 昔会社のテニス部でテニスをしていたころ、若い部員で全く何の気配もなかった2人が、何年か後、結婚したというので、「テニスがきっかけですね」と言ったら、全然違って、偶々世話好きの上役から話があって「ああ彼女なら知ってますよ、以前一緒にテニスをしてました」という事で決まったというのが真相です、という事でした。

 国と国でもそういう事はあるのではないでしょうか。
 今朝の報道では、トランプ大統領がパレスチナのアッバス議長と電話会談をし、ビジネスマンらしく「取引で解決する時期ではないか」と早期の訪米を要請、イスラエル、パレスチナ問題の仲介に意欲を示し、アッバス側は、二国家共存方式を主張したとのことです。

 事の行方がどうなるかはわかりませんが、こうした仲介の努力をすることは大事なことと言えるでしょう。
 国家間でも、内戦・内紛でも、通常それにこだわっているのは一部の人で、大多数の人は紛争のない平和な状態を心から望んでいるのでしょう。
 こだわっている紛争当事者にしても、出来れば平和に共存したほうがいいのと頭では解っている事もあるのではないでしょうか。

 そういう心の奥底にある願望(水素と酸素が化合して水を創る潜在力)は、なかなか表面に出て来ませんが、高性能の触媒が介在ると、そこに変化が起きるのです。

 この場合、触媒はその性能が良いものでなければなりません。そして触媒の性質として、「相手は変化(化合)しても、触媒自身は全く変わらない」のです。

 スーダンの自衛隊は撤収するそうですが、PKOも国連への貢献ですが、本来「人畜無害」で平和を希求するのが日本の立場でしょう。ならば、国連の場も含めて、和平への触媒になるような強い意欲を持ってもいいのではないでしょうか。 
 触媒国家には、一朝一夕になれるものではないでしょう。しかし日本はそういう国だという事を、世界に理解してもらえるような行動を、先ず始めてみるのです。
 
 日本にはその資格があると思います。多分、今の日本には似つかわしい役割でしょう。そしてそれは、平和憲法を持つ日本の権利であり、義務かもしれません。

「言葉」の重さを考える

2017年03月11日 11時49分41秒 | 社会
「言葉」の重さを考える
 最近、公人を含めていろいろなところで嘘がつかれることが多くなってきているような気がしています。
 アメリカのトランプ大統領は、繰り返しマスコミの報道をFAKE(捏造・嘘)だと言いますが、大統領就任式の聴衆が少なかったというマスコミに対して、過去最大だったという自分たちの数字を alternative fact (互換性のある事実・もう一つの事実)だといったのは「物は言いよう」と面白おかしく取り上げられました。

 トランプさんも、選挙戦最中から今まで、いう事が随分変わってきているようですが、良い方に変わってきているようなので、アメリカの多少安心しつつあるのではないでしょうか。

 日本の場合もいろいろあります。
 安倍総理がオリンピック誘致の際、福島原発の汚染水は湾内で完全にコントロールされている、と発言した時、そこまで言ってもいいのかと、何か言いようのない違和感を感じましたが、その後もいろいろあって、気になり続けています。

 国会審議については、強行採決など一度もしたことはない、という発言もありました。今回の森友学園に関わる発言では、同学園に関する発言の内容やトーンも事件の進展とともに評価から批判に大きく変わってきています。

 アメリカ発の現象が、忽ち日本に入ってくることはよくありますが、この件はそういう事ではないようです。
 日本社会自体の中で、発言がコロコロ変わることが何となく見過ごされてしまう風潮が強くなってきているように感じられて仕方がありません。

 第三者から見れば嘘としか言えないようなことが、本人の頭の中では正当化されているという事は往々あるようですが、いろいろ正当化を考えているうちに、「嘘を言うことは恥ずかしいこと」といった日本の貴重な伝統文化が希薄化していくように感じるのは私だけではないようです。

 「言葉」は、往々その人の本質を表します。法律では、口頭で言ったことはあまり意味がないようですが、それは法律の限界でしょう。
 人間同士の信頼関係がなければ、まともの世の中は成り立ちません。まさに「信なくば立たず」です。法律は「最低限」を規定するものです。

 公人が、「法に触れるようなことはしておりません」などと言うのを聞きます。日本の社会・文化はそこまで落ちたのでしょうか。時は春ですが、何か寒々としてくる世の中です。

労使の主体性奪回に期待:労働時間問題が契機!

2017年03月10日 11時32分59秒 | 労働
労使の主体性奪回に期待:労働時間問題が契機!
 政府の推進したい働き方改革は、すでにこのブログでも論じて来ましたように、 大変問題が多いものですから、今後も労使間の賢明な話し合いが必須だろうと思っています。いずれにしても、労働問題は全て労使間の問題なのです。

 改革の皮切りになったのは労働時間問題です。残業規制、インターバル問題などですが、残業の上限規制については、労使の話し合いはかなり煮詰まってきたようです。
 報道によれば、月平均60時間、繁忙期の上限特例は100時間という所に収斂しているようですが、経団連100時間に対し、連合は100時間未満でさらに話し合いという事のようです。

 常識的に見れば、連合が100時間レベルまでよく妥協したという事でしょう。企業の現場で考えても、如何に繁忙とはいえ、1か月100時間の残業を回避する雇用・人事管理の方策などは管理者が知恵を絞れば不可能などということはあり得ないはずです。
 まさに長時間労働は、経営者、管理者の能力が問われる問題ですから、経営側が恥を晒していることにもなるのではないでしょうか。

 36協定を結んでいない企業が大企業でも6%、中小企業では50%超という統計がありますが、これで残業をさせたら違法だと知ってでしょうか。
 失われた20年の中で労使ともに経営者・管理者教育、従業員教育がなおざりにされたためでしょうか、労働基準法を知らないでは、まともな労使関係は成り立ちません。

 高度成長期には、小さな職場でも、36協定拒否が従業員の経営への対抗手段として生きていました。その評価は別として、現状は労使はともに恥ずべき状態ではないでしょうか。

 労働時間問題はこれから、労使のトップ同士で詰めるという事のようですが、これを契機にして、労使が真剣に企業における人間と労働の問題、労使関係、労働問題について、相互に理解を進め、深く考え、的確に行動出来るような、信頼関係の深化が必要でしょう。

 企業という組織の 主人公は資本ではなく人間です。かつて日本の労使関係は、相互信頼に基づく労使関係の見本として、世界から評価されていました。
 今また人手不足、雇用逼迫の状況の中で、いかに効率的な、生産性の高い職場を実現するかは、経営管理者と働く人たちの相互信頼に基づいた知恵と行動と協力体制に頼る以外にありません。

 労使が確り取り組まないから政府が口出しするのでしょうか。政府には、生きた企業の現場の知恵はありまあせん。
 今回の問題を契機に、労使は労働問題、労使関係におけるその主体性を確りと取り戻してほしいと強く感じています。労働問題、労使関係については、 政府はあくまで第三者でしかないのです。

地域の銀行は地域経済発展の旗手に

2017年03月09日 12時42分31秒 | 経済
地域の銀行は地域経済発展の旗手に
 「地方銀行などの地域金融機関が中小企業の新たな事業への融資を増やさないといった指摘を受け、金融庁が異例の実態調査を始めた」 これは、一昨日、3月7日の朝日の朝刊の記事です。

 昨年の7月、このブログは「金融システムが有効に存在するのは、実体経済が発展し、資金需要が起きることが必須の条件です。ならば、金融システムは実体経済の発展を単に資金面で援助するだけでなく、実体経済、産業・企業を積極的に育てる必要があるのではないでしょうか」と書きました。

 金融業がマネー資本主義に汚染され、金融危機が繰り返された結果、銀行経営も不安定なものと認識されたのでしょうか、ペイオフ制度から確定拠出年金制度まで、「リスクは預金者・拠出者にパスします」といった認識が一般的になったようです。

 加えてゼロ金利政策の長期化です。銀行預金の意味はなくなったかと思いきや、家計の貯蓄性向は上昇しています。利息の付かない銀行預金に自分で利息をつけるような気分で、預金を積み増しているのでしょうか。

 一方銀行の方はどうかと言うと、新聞報道の様に、貸出のリスクに極めて臆病になっているようです。地価は下がっていますし、最新の技術やノーハウを生かしたビジネスには担保に入れるような土地はないのが普通です。

 特にここでも問題になっている中小企業、ベンチャー型企業への融資は問題が多いようです。
 銀行業務検定協会の試験科目の中に「経営支援アドバイザー」というのがあります。そこで重視しているのは、担保ではなく、事業そのものの収益性です。銀行員にはその目利きの能力が必要なのです。

 中小企業金融機関が「担保、担保」というのはバブル時代までの土地神話の時代の名残りでしょうか、事業そのもの価値・将来性、経営者の資質などを的確に読み取る能力が劣化してしまったのでしょうか。それでは銀行業務は衰退でしょう。

 日本に存在する企業の90パーセント以上が中小企業です。そして、経営者の年齢構成や、産業自体の新陳代謝から見ても、これからの地域経済発展を支えるのは、斬新な分野、今までなかったタイプの企業の役割が大きいのです。

 さらには、銀行は、単に資金需要に応えるだけではなく、地域経済の発展を構想し、資金需要を創造し、その実現のために預金者の提供する地域資本を最も有効に使い、そのリターンを享受し、地域と共に発展するだけの力を持つことがその使命ではないでしょうか。

 日本経済の底辺、基盤を支える地域経済の発展こそが、日本経済不振の原因である消費低迷や格差社会化を現場から立て直し、日本経済成長の基盤を創る仕事となっていくのではないかと思うところです。

クロネコヤマト料金改定の意味するもの

2017年03月08日 11時21分42秒 | 社会
クロネコヤマト料金改定の意味するもの
 過日、ヤマト運輸の労働組合が、今春闘で、 荷受けの抑制を要求するという報道から、これはネット通販時代の社会インフラに関わる重要問題という気持ちを書きました。

 春闘で、労組が経営の在り方にたいして発言をするのは異例かもしれませんが、日本的労使関係の中では、状況に応じてあって然るべきと考えています。
 一方、ヤマト運輸の方も、現状の社会情勢に鑑み、自社の経営・労使関係も十分に考慮したのでしょう、早速に料金改定も含む、対応策を打ち出したことは、評価されるべきでしょう。

 消費者・利用者の方も、それなりに納得するところがあるのでしょうか、極めて冷静に受け止めています。
 業界の巨大リーダーのこうした動向は、業界全体としても、等しく歓迎する所のようです。
 序に言えば、パナソニックが、家庭用宅配ボックスを開発するなど、宅配システムの高度化・先進化を支援するといった動きなど、多面的な前進の兆しがあります。

 自動車や電子・電気機器などの生産に比べ、宅配といった仕事は簡単に生産性は上がりません。残念ながら日本の道は、特に都市の住宅地域では狭いところが多く、駐停車などの規制もますます厳しくなり、利用者の私から見ても、担当者の仕事は激務です。

 担当者の仕事と利用者の利便とは相反の関係にあります。特に宅配の場合は、顧客満足は、担当者の仕事の仕方や態度、その努力にかかっています。相反する関係の解決には双方の折り合いが必要です。

 「お客様は神様」など言われたりしますが、お客様も、担当者も実は同じ人間です。社会全体の持続可能なシステムの在り方を考えれば、矢張り全体システムの最適化を考えなければなりません。

 幸いなことに、日本人、日本社会はそうした思考方法に 大変優れているのです。自分の都合とともに相手の都合も考える「おもいやり」、結果も考えて行動する「先見性」、日本人の行動が往々世界から注目称賛される原因もそこにあります。

 料金改定、配送時間帯の合理化についても、ほとんど異論は聞こえてきません、両方の折り合いをつけやすくする技術革新(宅配box?)なども進化するでしょう。
 行政が自家用車と宅配車両の駐停車規制に差を設けても多分世論は納得するでしょう。

 高速道路も新幹線も大事ですが、宅配便も、考え方によっては、さらに重要な社会インフラになりつつあるのではないでしょうか。
 社会全体の利便性を考えつつ、この問題の今後の進展に注目しましょう。

移民・難民問題と人類社会のガバナンス

2017年03月07日 12時44分36秒 | 国際政治
移民・難民問題と人類社会のガバナンス
 前回、移民・難民問題に発した国境を越えた人間に移動が主要国の国政選挙にまで影響しつつあり、戦後築き上げてきた国際秩序にも影響を及ぼしかねない現状を見て来ました。

 この問題をもう少し考えてみたいと思います。
 難民の問題は基本的には生命にかかわる問題でしょう、移民の問題は主として経済的動機によるのもと言えるでしょう。両社の性格は基本的に違います。

 難民の問題について見れば、多くは内戦(隣国等との戦争の場合もありますが)が原因の場合が多いでしょう。
 緒方貞子さんも苦労された国連難民高等弁務官事務所もありますが、現在の国連の出来ることは限られています。

 内戦と言っても、典型的にはシリアに見られるように、政府側にロシアが付き、反政府側にアメリカが付くといった形で単なる「内戦」でない場合もあります。しかも、ロシアもアメリカも、国連の常任理事国です。 
 人類世界の安定を目指す国連の、最重要な当事者たちに全く人類社会ついてのガバナンス意識がないことが丸見えです。(ISに対する米ソの一致は問題を解く鍵でしょう)

 難民の問題は、国連の常任理事国(もちろん国連全体の意思として)が、一致協力して、当事国にあらゆる手段を通じて自主解決を迫るのがその役割でしょう。
 拒否権乱発で往々機能しない国連常任理事会は、自己のガバナンスの欠如を自覚し、本気で国連の機能の充実に努力すべきです。

 一方移民の問題は、経済的動機が主だとすれば、これは二国間の問題です。
 より豊かで、よりチャンスがある国に移住したといいう願望にどう対処するかという問題です。

 経済的に言えば、ヨーロッパや日本のように、社会保障制度を完備(?)した国と、アメリカのように、アメリカンドリームの魅力で、貧富の格差を放置できる国(程度問題ですが)では、移民に対する態度は違って当然です。

 かつて書きましたように、人類社会で最も小さい組織単位と最も大きい組織単位、つまり、 「家族」と「国」では、勝手に帰属を選べないというのが原則です。
 「裕福な家の子になりたい」といってもかないません。双方の家が納得した場合だけ可能という事でしょう。国の場合も同じです。

 最も寛容だったアメリカでも、今、雇用問題から、移民の制限に動いています。まして、社会保障制度を整備しているヨーロッパ緒国においておやでしょう。
 移民の問題は主として経済的動機ですから、経済構造の許容範囲の問題として、また文化的包摂の問題として、当事国間で十分に話し合うことが最も重要しょう。

 政治も経済も基本的には国単位です。内戦も、経済格差や貧困の問題も、それぞれの国単位の努力で解決するというのが、本来の人類社会の基本なのでしょう。
 そしてそのための教育をはじめ、経済的援助も含めて、国の発展を援助するのが国連の役割でしょう。人類社会のガバナンスは、先ず、国連の機能回復からです。

 そして各国、特に大国には「 NGR」の原則を徹底して尊重してもらいたいものです。

移民、難民、経済問題から見る国境問題

2017年03月06日 10時43分51秒 | 政治
移民、難民、経済問題から見る国境問題
 トランプ大統領のメキシコ国境の「壁」建設問題がヨーロッパに飛び火したという事ではないでしょうが、EU諸国でも、首長選挙などで、移民流入問題もからんで国境線重視の考えが強まり、フランスでもルペン候補はイギリス続くEU離脱に積極的にまで言及しているようです。

 日本は島国なので、かつてのベトナムのボートピープル問題はありましたが、こうした問題に直面することは少なく、難民認定も、国際的にも難しい国と認識され(技能実習生の逃亡問題などはありますが)問題はあまり大きくない国でしょう。

 世界の人類社会には人種、宗教から貧富の差までいろいろな対立要因があります。その中で、国際的な統合の動きは、国連の活動からEUその他、地域統合の問題まで第二次大戦後次第に進んできました。

 今、何かその動きに対する反作用が広がりつつあるようです。アメリカでもヨーロッパでも、急進派と穏健派があり、行方は選挙が決めるわけですから結局は国民のより多くが急進派を選ぶか穏健派を選ぶかで決まることになるのでしょう。

 という事は、国民1人々々が、この問題に対して合理性のある、的確な考え方を持っていなければならないという事に帰着することになります。
 然し選挙は往々ムードに影響されることがあります。イギリスのEU離脱も、アメリカのトランプ大統領誕生も、結果は僅差で、多くの人が「予想外」と驚いたということは、冷静な判断力だけが支配したのではないのではないかとも感じさせるものでした。

 選挙の中では、「マル」か「バツ」か、コンピュータではありませんが「ゼロ」か「イチ」化の二分論の世界が一般的になりがちです。
 しかし、経済や移民、難民の問題は、二分論で解決できるほど簡単なものではありません。例えば、移民問題と難民問題とは大きく異なります。
 今、ヨーロッパに押し寄せているのはその混合のようです。

 移民は、目的とする国に定住しようという人たちです。難民は、今、難を逃れて他国に安全を求めますが、本来は自国に戻りたい人たちです。
 これに、時に、人種や宗教も絡んできます。

 NAFTAのような、経済的統合を目的とした経済的な連携協定は広まって来ていますが、これはモノや資本だけに関わるものです。一方、EUのように、経済的統合だけでなく、人の往来など社会的統合に踏み出しているものもあるわけです。

 最近のトランプ政策では、モノや資本の移動から人間の移動まで、皆ひっくるめて「アメリカ・ファースト」といった印象です。

 繰り返しますが、選挙は国民一人一人の知性の判断の結果です。最近のような、民主主義そのものが混乱した如き情勢の中では、選挙の結果を生み出す選挙権を持つ国民そのものが問われているのです。心しなければと思うところです。

異次元金融緩和の副作用に要注意

2017年03月04日 11時59分09秒 | 経済
異次元金融緩和の副作用に要注意
 政府・日銀は相変わらずインフレ率2パーセントになるまでは異次元緩和を続けるという方針を変えていないようです。最近政治の分野では特に「説明責任」という言葉が流行りますが、なぜ2パーセントがいいのか、なぜそこまで行かなければ駄目なのか、異常な金融緩和の副作用が出たらどうするのかといった問題について、政府・日銀から納得いく説明を聞いたことはありません。

 私自身は、アメリカが為替レートにうるさい中で(トランプ政権以前からですが)円高を回避するためにはアメリカと同じ2パーセントインフレ目標に固執することが最も簡便だから、まあいいかと思っていたのですが、対アメリカでは、 2パーセントインフレ目標だけでは言い訳にならないような雰囲気も出てきています。
 アメリカはそろそろ2パーセントインフレ目標を卒業するようで、あの国は自分が卒業してしまえば、後は勝手なことをどんどん言うきらいがありますので、日本の円高阻止戦略が2パーセントインフレ目標だけでは役に立たなくなる恐れも十分ありそうです。
 同時に、日本の国内で、異次元金融緩和の副作用が出始める様相が、いろいろなところで見られるように思います。こちらはもっと危険です。

 1985年のプラザ合意の後、アメリカに唆された「新前川レポート」などで政府は金融緩和を主導し、その結果がバブル経済となり、バブルの崩壊で酷い目にあった経験はまだ多くの日本の経済人の頭の中には残っているはずです。

 あの時は、日本人(特に日本の労使)の頭の中には、オイルショックによる深刻な賃金インフレがあり、その失敗の経験から、いくら金融を緩和しても、賃上げにはつながらず、従ってインフレにはなりませんでしたが、 あり余った金は土地に向かい、土地神話(地価は上がり続けるという神話)に後押しされて、地価は暴騰、土地本位制と言われた日本経済ですから日経平均は37,000円まで上昇,序にゴルフ場会員権やリゾート会員権、さらには書画骨董まで価格暴騰、投機の宴は1991年の土地暴落まで続きました。

 宴の後は、円高との「 ダブルデフレ」で日本経済は「失われた20年」に入ります。この失敗の記憶は、極めて強烈で、その後、地価は長期下落傾向、株価の低迷も深刻でした。

 然しこの所、些か様子が変わりつつあるのではないでしょうか。のど元過ぎれば何とやらでしょうか、一部立地の良い所の地価が上昇傾向にあるようです。転売目的の購入も増えるようで、REIT市場も活発化しています。私の住む都下国分寺市の土地・住宅の折込広告でも、坪100万円を切っていた地価が、100万円を切り上げてくる様子が見られます。

 株価の世界では日銀がETFを買うから下げは限られるといった解説も聞かれ、GPIFは前四半期の利益10兆円で過去最高などと発表します。何か、まともな経済状態ではなく、バブルでもいいから景気を刺激しようという政策の匂いが強く匂ってきます。

 かつてのバブルの折、有り余るカネはインフレを起こさずバブルを起こしたのと同じように、今回も、異次元金融緩和で余ったカネは、2パーセントインフレには無縁で、上がるのは株価や地価、つまり実体経済でないマネー経済だけの活況を生むという事では、日本の政策当局は過去の経験から何も学ばなかったという事になってしまします。

 バブルは一種の心理ゲームです。走り出したら奈落に落ちるまで止まらないのです。政府・日銀の真剣な対応を願うところです。

 

上昇に転じるか、消費者物価

2017年03月03日 11時06分45秒 | 経済
上昇に転じるか、消費者物価
 今年1月の消費者物価指数が今日、総務省から発表になり、マスコミは、「季節変動の大きい生鮮食品を除く総合」で、1年1か月ぶりプラスになり、対前年同月で0.1%の上昇と報じています。
 政府・日銀が2%の消費者物価上昇を目指しながら、なかなか上昇に転じない消費者物価ですが、漸く上昇に転じてくるのでしょうか。

 勿論庶民の願望は政府と違って、消費者物価はあまり上がらない方がいいという事ではないかと思いますが、物価が下がるのはデフレ経済を連想させ、気分を滅入らせる要因でもあるので、上昇要因を覗いてみたいと思います。

 まず基本的な3つの指標を見てみますと、
「総合指数」が+0.4%、「生鮮食品を除く総合」(コア指数)が+0.1%、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」(コアコア指数)が+0.2%となっていて、「総合」の+0.4%が最も高くなっています。
 という事は、生鮮食品の価格が上昇して、「総合(全体)」を押し上げているという事でしょう。

 確かに生鮮食品は昨年1月の指数は100.8で今年1月は108.8です。上がっていますね。
 エネルギーの価格は、同じ期間に92.1から91.4に下がっていますが、月々の動きを見ますと昨年10月の88.3が底で、その後急速に上げてきています。

 こう見て来ますと、昨年1月からの物価の動きは生鮮食品のせいでプラスになったように見えますが、基本的にはもう少し底辺の動きもあるようです。
 例えば、生鮮を除く食品(加工食品)は同じ期間にコンスタントに上昇、100.9から101.5、 その他、保健医療サービスは100.6から101.6、教育費は100.4から101.9、教養娯楽費は99.3から100.2と上昇、一方、耐久消費財、情報通信関係などは相変わらず低下傾向です。

 生鮮食品は天候などにより乱高下ですが、一般的に見て、人手のかかる所では価格は上昇傾向、技術革新などで生産性が向上するモノやサービス分野は、相変わらず価格は低下傾向という事が見えてきます。

 これまで、こうした上がる分野、下がる分野のバランスで、コアコア指数といわれる、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は殆ど安定という状態だったと思います。
 しかし、人手不足がますます深刻化する様相があり、またエネルギーを含む資源価格の上昇が予想される状態になってきました。
 消費者としては、今後の消費者物価の動向には要注目といったところではないでしょうか。

1兆ドル必要はトランプのアメリカの話、日本は・・・

2017年03月02日 11時23分14秒 | 国際経済
1兆ドル必要はトランプのアメリカの話、日本は・・・
 昨日はトランプ大統領の両院議会演説に影響される前にと急ぎ、午前中に「トランプのアメリカ」を書きましたが、午後報道されたトランプ演説の内容からも、矢張り、本当の問題点は消えないように感じられます。

 演説そのものは、極めてまともだったように思います。特に脱線もなかったようで、名前はドナルドですが、今回の演説は説得調で「それが出来れば素晴らしい」という理想も随所にちりばめ、最後には「夢」を語り、「演説としては」素晴らしかったように思います。

 “America first” “ Make America great again” といった繰り返されるフレーズは、アメリカ人のプライドをくすぐる「殺し文句」でしょう。
 トランプ大統領自身の変化、共和党内の結束、アメリカ国民の融和、の3条件が、この演説で見れば、一歩前進と思われるところですが、その実現を願うところです。

 「言うは安く、行うは難し」です。演説の内容をどう実践していくかですが、経済・経営的な目から見れば、減税や画期的な医療システムなど収入減、コスト増に関わることは具体的中身は示されず、1兆円のインフラ投資といった支出増が目玉に置かれていることです(その分、他の財政支出が減るとのことですが、その中身は不明)。

 本来なら、そのためには「アメリカ人が勤勉に働かなければならない」という指摘になるはずです。アメリカを「偉大な国に再建」と言っても、それは、アメリカ人が働いて、「生産性」を上げなければ万年赤字国脱出不可能です。しかしトランプさんの頭の中には「生産性」という言葉はないようです。

 トランプさんの望みの綱は、海外企業がアメリカに投資し、その力で、アメリカの経済が活発化することのように見えます。人は入れないが、カネは入れる。これは確かにアメリカにとっては合理的です。しかし、コスト高のアメリカでどこまで可能でしょうか。

 生産性を上げず、コスト高を放置して「偉大な国」になるには、 ドル安でコスト高を消すか、他国のカネを上手に(安価に)活用するといった方法しかないでしょう。
 現状、マネーマーケットはアメリカの「まだ見ぬ将来」を買ってドル高、株高、日本もの円安で株高と快調の走り出しのようですが、長い目で見れば、まだ何もトランプ構想を支える経済基盤はないのです。

 日本としては、アメリカの実体経済の動きを見極め、アメリカは日本の巨大な貯蓄をどう見ているのか(ロス財務長官の日本の 年金基金に関する発言なども含めて)に十分注意を払いながら、アメリカが本当の「健全で」偉大な国になるように協力することが必要なように思われるところです。

トランプのアメリカ、予想される今後は?

2017年03月01日 12時07分50秒 | 国際経済
トランプのアメリカ、予想される今後は?
 トランプ大統領は、お得意のツイッターを中心に、矢継ぎ早に政策の方針を打ち出しています。
 「有言実行」か「論より実行」か解りませんが、成果が上がったと強調することは確りとやっているようです。

 日本としての関心は「それで日本への影響はどうなるの」という事でしょうが、読み方は大変難しいとしても、これまでの様々な状況から、何か見えてくるものがあるような気がします。

 まず「アメリカ・ファースト」は基本的に変わらないでしょう。「トランプ・安倍会談」でも、それを理解してくれる日本には最大の好意を持つのかもしれません。
 台湾問題でぎくしゃくした対中関係も、今修復に動いているようで、具体的な個別問題は別として緊張緩和を目指す方向にあるようです。

 ロシアとの問題は、少し冷却期間を置くのかもしれませんが、緊張緩和、友好の方向を模索しているのではないでしょうか。
 ヨーロッパにはNATOの強化を要請しましたが、それはヨーロッパ体制の補強が必要と考えているのでしょう。

 この2つは相矛盾するようですが、トランプ大統領のアメリカとしては、もう「世界の警察官はやめる」、「アメリカはアメリカ自身の問題に専心する」というが本来のスジだとすれば、それなりに理解できると思います。端的に言えば、国内に専心するためには、海外での金がかかることは出来るだけ減らそうと考えるのが自然でしょう。

 今回は防衛予算の1割増額を打ち出しました。オバマ大統領の時代に2割ほど削減したのを逆転させたという事ですが、これは多分、世界の紛争に積極的に介入しよう(世界の警察官)ではなく、国内に専心するためには、防衛力を圧倒的に強くすることが必要、という甲殻類的な発想の結果ではないでしょうか。

 であれば、これは当面国内産業を潤します。ある意味では「アメリカ・ファーストのためのインフラ投資(劣化した軍隊の再編と言っています)」でもあるわけです。そう考えれば、「老朽した」国内インフラへの積極投資の一環とういう意味合いを持つのでしょうか。

 FRBとの関係はまだわかりませんが、政権の中にはマネーマーケットの手練れが増える様相です。高コスト国アメリカのファイナンス戦略は予断を許さないものになるのかもしれません。

 こんなアメリカの姿を想像すれば、国内経済は繁栄(繁忙)を続けながら、実体経済面におけるアメリカの国際的プレゼンスは次第のその比重を小さくするという結果になっていくのではないでしょうか。この辺のアメリカも為替戦略との組み合わせは正直現状では予測できません。

 実体経済に軸足を置いた日本経済は、こうしたアメリカの動きの中で、いかなる経済戦略を立てていくか、RCEPへの取り組みも含めて、難しい局面での真価が問われそうです。