G20が行われたワシントンで、終了後、加藤財務相がアメリカのベッセント財務長官と会談した結果が日本時間の今日早朝のニュースでした。
自由貿易を主張してきたアメリカが世界中の国からの輸入に関税をかけるという中でのG20ですから、何も発表されずに解散です。
トランプさんは、多国間交渉は嫌いですので、日本としても重要なのは加藤=ベッセント会談の結果です。
その中でも最大の関心は為替レートの問題です。具体的には、アメリカが関税問題とセットにしてドル高是正を言ってくるかという事だったのでしょう。
元々トランプさんの目的は、アメリカの貿易赤字削減(解消?)のようですから、日本からの輸入品には関税をかけて、同時にドル高になっている状態を早期に是正して、この2つの合わせ技で対日貿易赤字をなんとしてでも減らそうという事ですから日本も身構えます。
日本には苦い経験があります。1985年の「プラザ合意」です。これはG5の席でしたが、日本はアメリカの円高要請を受け入れ、その後の長期不況の原因を作りました。
身構えた加藤さんに対し、ベッセントさんは為替問題には触れなかったという事でした。
理由は、円安ドル高の原因はアメリカ自身にあるので、言うだけ不利と読んだのでしょう。
トランプさんがFRB議長(日本の日銀総裁に相当)のパウエルさんを辞めさせると息巻いたものの結果は折れて留任を認めたというのが数日前です。
ご承知のように、今、ドルが高いのは、FRBが政策金利水準を下げないからで、これを下げれば忽ちドルは安くなるのですが、それをやると、ドルも下がるがダウ平均も下がりアメリカ国債の値段も下がるといった連鎖の気配があったからのようです。
特に日本はアメリカ国債を1兆ドル(140兆円)以上も持っている世界一の保有国で、もし日本がアメリカ国債を売ったら、アメリカの財政も権威も失墜の可能性があるという国なのです。
加藤さんは職責上、これで一安心ということかもしれませんが、これで円高はないという事にはならないでしょう。
というのは、FRBと日銀の政策が、基本的には円高になる方向を向いているからです。FRBはアメリカ経済が安定すれば政策金利の引き下げを考えていますし、日銀は、日本の物価の安定(経済の安定)次第で政策金利を上げようとしています。
両方が行われるとダブルで円高ドル安効果が出るのです。アメリカは、政策金利の変動による為替レートの変動は経済現象で、為替操作とは考えていませんが、実はこの方が為替レートには圧倒的な影響があります。
もう一つ付け加えれば、いま日本経済と為替レートのバランスは、過度に円安に振れています。インバウンドが増え、日本は物価の安い国と言われるのがそれを示しています。輸入品や人件費が高騰してインフレ気味になっていることも過度の円安を示しています。
経済学的に見ても、現実の日本経済の状況から見ても、150円台の円レート
は超行き過ぎで、実態も今は140円台まで円高になってきています。
実体経済から見れば110円~120円というのが当面の購買力平価から見た適切な為替レートでしょう。現実に、コロナ直前の円レートは110円でした。
その意味では日本経済にはまだ余裕があります。これは、関税、為替組み合わせのアメリカの対日政策への貴重な交渉上の余裕でもあります。
自己都合しか目に入らないようなトランプのアメリカに対応するのは大変ですが、日本にとって大事な事は、プラザ合意の二の舞をしないという確固たる態度でしょう。そしてそのための理論武装と戦略構成でしょう。