tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

クロネコヤマト春闘に見る労使交渉の姿

2017年03月17日 11時38分33秒 | 労働
クロネコヤマト春闘に見る労使交渉の姿
  ヤマト運輸の春闘が決着しました。 
 報道機関のニュースでは、ほとんどが配送時間関係の結果を報じ、通常、春闘の主要問題である賃上げや労働時間については最後に、去年の実績の月額5,024円を上回る6,338円(ベアや手当見直しなど含んだ数字です)の改善で決着した事、労働時間については10時間のインターバルの導入した旨を書いています。

 中には、配送時間に関連した事だけを書いて、賃金や労働時間についての妥結結果には触れていないところもあったりします。
 春闘と銘打っての記事ですから、どうかなと思ったりしますが、それだけヤマト運輸の春闘・労使交渉は多くに人の関心事で、事の中心は、労働条件より、配送時間の問題に(マスコミの)関心が強かったという事でしょう。

 荷受け抑制や、配送時間帯、大口顧客の料金見直しなどの問題は、基本的には「経営方針」の問題でしょう。しかしそれが、労働組合から言われ、経営側も理解し、労使交渉で取り上げられ、マスコミが、ほとんど、そちらの方に注目した報道をしていたという事は、何を意味するのでしょうか。

 すでに書いてきましたように、宅配便は 社会インフラの重要な要素になっています。問題は、そうした人間(ザービスドライバー)の生身の活動が支えるインフラについては、労働条件の改善は、状況によっては経営改革なしには不可能という現実です。

 ヤマト運輸の労働組合は、労働条件改善のために、あえて経営改革に関わる問題にまで要求を広げ、経営側は、それに正面から答えて、経営改革、労働条件改善の一体的な交渉、そして回答、妥結が実行されたという事でしょう。

 いろいろな見方はあるかもしれませんが、これは日本的労使関係一つの典型だと思います。欧米で伝統的な「労使は対立関係でなくてはならない」という考え方は日本にはありません。日本の労使関係は「信頼関係」が基調で、企業の永続的な発展のために労使がチェック&バランスの役割りを果たすことが望ましいとされてきました。

 だからこそ、企業に不祥事などがあった時、「労働組合は何をしていなんだ」といった意見が出たりするのです。

 多言は省きますが、今回の妥結に世論は殆どが好意的です。住宅用宅配ボックスの開発も進むようです。便利な生活のために労働に皺寄せがいくのでではなく、生活は便利に、労働も楽に、という事で初めて社会のサステイナビリティーが可能なのでしょう。
 日本人の合理的な知恵が、こうした問題を柔軟に解決していくのでしょう。