なぜ物価は上がらないのか:1
長いサラリーマン生活の中で、好況不況の景気の波、その反映でもあるインフレ、デフレ、スタグフレーションといった物価の変動、そして、そうした経済の波への対策としての、経済政策、具体的には金融政策、財政政策、さらにそれらに絡む、労使関係、労働政策などの動きを経験しながら分析してきました。
そうした経験を、折に触れてこのブログの中でも書いてきました。インフレの原因や問題点、デフレの経済活動への打撃、1970年を境に代わった固定相場制と変動相場制と、経済活動や物価との関係。高度成長やバブル景気、その崩壊、さらには基軸通貨国発の金融恐慌・・・、本当にいろいろあった時代でした。
今、先進国で、なぜ物価が上がらないのかという疑問が提起されています。前々回書きましたように米FBRのイエレン議長も「なぜ?」と言っています。
しかし、経済活動の現場でよく観察すれば、その理由もある程度理解できるのではないでしょうか。そんなことを少し書いてみたいと思います。
先日、少し長い距離、タクシーに乗りました。「 街角景気」ではありませんが、運転手さんと話をしました。「給料安くて、大変だけど、小さな会社だし、無理言って会社がなくなれば、元も子もないからね。」一言で言えば、そんな心情を話してくれました。
これは、物価がなかなか上がらないという問題についての素晴らしいヒントです。
2014年の7月に「 インフレの原因1,2,3」を書きましたが、戦後の主要国の経済の中で、インフレの最大の原因は「賃金コストインフレ」でしょう。国民経済の7割前後を占める賃金が上がれば、企業は値上げをしないと潰れます。
賃金が上がるきっかけになるものはいろいろあります。日本では、昭和30年代から春闘が始まり、合言葉は「大幅賃上げ」で、戦後の貧しさからの脱却が試みられ、経営側も高度成長予測の中で、毎年払い過ぎ、あとから値上げでしのぐ状況でした。
1973年には、オイルショックがあり、原油価格が4倍に上がるという輸入インフレの中で74年春闘では、経済ゼロ成長の一方、33%の賃上げが行われ、一時消費者物価は前年比26%も上がりました。
このインフレは数年かけて 労使の努力で正常化し、日本の労使は、賃上げとインフレの関係を理解することになりました。
第2次オイルショックでは、日本労使はこの教訓に学び、賃金コストインフレを起こさず、世界から驚嘆の目で見られました。
当時欧米主要国は、相変わらず高賃上げを続け、経営サイドの物価引き上げも限界に達し、コストアップが価格転嫁できずに減益を重ね、 スタグフレーション(先進国病と言われた)に呻吟しました。
この脱出のために、英国のサッチャー政権は、4回の労働法改正を行い、労働組合の力を殺ぐことに注力、漸くスタグフレーション脱出を果たしています。最低賃金制も一時はなくしました。
近年では、先進諸国は途上国に企業進出、先進技術と安価な労働の組み合わせで、安くて良い商品を輸入するようになりました。この経営政策は、どうも裏目に出ました。
新興国との競争に敗れた名門企業は、GMやコダックをはじめバタバタと倒産です。自国内の賃金水準の高い労働力は失業、ラストベルトの出現です。アメリカでは、AFL-CIOも、昔のように賃上げ要求をすれば、会社が倒産することを知っています。賃上げには慎重になりました。失業が怖くて、賃上げに及び腰、という所でしょう。
賃金コストインフレを起こしてきた労働組合の力は大きく落ちました。
一方、金融の世界では、金融(通貨)とインフレの関係を昔の儘に信じている様子が見られます。この点は次回にします。
長いサラリーマン生活の中で、好況不況の景気の波、その反映でもあるインフレ、デフレ、スタグフレーションといった物価の変動、そして、そうした経済の波への対策としての、経済政策、具体的には金融政策、財政政策、さらにそれらに絡む、労使関係、労働政策などの動きを経験しながら分析してきました。
そうした経験を、折に触れてこのブログの中でも書いてきました。インフレの原因や問題点、デフレの経済活動への打撃、1970年を境に代わった固定相場制と変動相場制と、経済活動や物価との関係。高度成長やバブル景気、その崩壊、さらには基軸通貨国発の金融恐慌・・・、本当にいろいろあった時代でした。
今、先進国で、なぜ物価が上がらないのかという疑問が提起されています。前々回書きましたように米FBRのイエレン議長も「なぜ?」と言っています。
しかし、経済活動の現場でよく観察すれば、その理由もある程度理解できるのではないでしょうか。そんなことを少し書いてみたいと思います。
先日、少し長い距離、タクシーに乗りました。「 街角景気」ではありませんが、運転手さんと話をしました。「給料安くて、大変だけど、小さな会社だし、無理言って会社がなくなれば、元も子もないからね。」一言で言えば、そんな心情を話してくれました。
これは、物価がなかなか上がらないという問題についての素晴らしいヒントです。
2014年の7月に「 インフレの原因1,2,3」を書きましたが、戦後の主要国の経済の中で、インフレの最大の原因は「賃金コストインフレ」でしょう。国民経済の7割前後を占める賃金が上がれば、企業は値上げをしないと潰れます。
賃金が上がるきっかけになるものはいろいろあります。日本では、昭和30年代から春闘が始まり、合言葉は「大幅賃上げ」で、戦後の貧しさからの脱却が試みられ、経営側も高度成長予測の中で、毎年払い過ぎ、あとから値上げでしのぐ状況でした。
1973年には、オイルショックがあり、原油価格が4倍に上がるという輸入インフレの中で74年春闘では、経済ゼロ成長の一方、33%の賃上げが行われ、一時消費者物価は前年比26%も上がりました。
このインフレは数年かけて 労使の努力で正常化し、日本の労使は、賃上げとインフレの関係を理解することになりました。
第2次オイルショックでは、日本労使はこの教訓に学び、賃金コストインフレを起こさず、世界から驚嘆の目で見られました。
当時欧米主要国は、相変わらず高賃上げを続け、経営サイドの物価引き上げも限界に達し、コストアップが価格転嫁できずに減益を重ね、 スタグフレーション(先進国病と言われた)に呻吟しました。
この脱出のために、英国のサッチャー政権は、4回の労働法改正を行い、労働組合の力を殺ぐことに注力、漸くスタグフレーション脱出を果たしています。最低賃金制も一時はなくしました。
近年では、先進諸国は途上国に企業進出、先進技術と安価な労働の組み合わせで、安くて良い商品を輸入するようになりました。この経営政策は、どうも裏目に出ました。
新興国との競争に敗れた名門企業は、GMやコダックをはじめバタバタと倒産です。自国内の賃金水準の高い労働力は失業、ラストベルトの出現です。アメリカでは、AFL-CIOも、昔のように賃上げ要求をすれば、会社が倒産することを知っています。賃上げには慎重になりました。失業が怖くて、賃上げに及び腰、という所でしょう。
賃金コストインフレを起こしてきた労働組合の力は大きく落ちました。
一方、金融の世界では、金融(通貨)とインフレの関係を昔の儘に信じている様子が見られます。この点は次回にします。