tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

輸入物価、企業物価、消費者物価の関係

2017年12月27日 22時28分36秒 | 経済
輸入物価、企業物価、消費者物価の関係
 一昨日、12月25日のこのブログで、来年度の政府経済見通しを見ましたが、その中で、消費者物価については、前年度実績が-0.1%、今年度の実績見込みが0.7%、来年度の見通しが1.1%になっていることを指摘しておきました。

 年金が目減りするわれわれ高齢者にとっては、多少の貯金があっても、利息は殆どつかない中で、物価が1%以上上がったら、実生活の目減りは些か厳しいことになるな、と感じるところですが、政府の目標は2%ですから致し方ないかとも思うところです。

 そんなことで、今回は物価について少しデータを並べてみました。取り上げたのは輸入物価、企業物価、消費者物価の3つの主要物価です。数字は、各月の対前年同月の上昇率です。グラフを下に掲げました。


 青色が輸入物価指数ですが、昨年12月まではマイナスでした、資源価格の値下がりが中心でした。ところが今年になって上昇に転じ、最近はガソリンスタンドの価格表示も随分高くなりました。11月分は速報ですので、変わる可能性があります。10月は確報で、対前年15.4%の上昇です。

 茶色の企業物価は似た動きで、昨年末を境にマイナスからプラスに転じていますが、上がり下がりの幅はずっと小さくなっています。

 緑色の消費者物価になりますとこれは殆ど安定で、昨年10月は0.1%、だんだん上がってきて、今年の8月9月は0.7%の上昇ですが、10月は0.2%、11月(速報)が0.6%です。

 この3つの物価の関係を考えてみますと、輸入物価は日本の場合、主として資源(原材料)で、これは国際価格で動きます。
 資源価格はマネーゲームの対象になりますから、どうしても高い時はより高く、下げるときはより低くといった乱高下になりやすいものです。

 その影響は、資源の多くを輸入に頼る日本の物価に当然出ます。結果は、企業物価に表れています。しかし企業物価の方が、輸入物価より振れ幅がずっと小さくなっているのは、企業の販売価格に占める輸入原材料価格の比率は、その企業の生産物の加工度が高いほど小さくなりますから、国内の加工コストで薄められることになるからです。

 輸入コストが高くなったと言っても、納入先の企業が、簡単には値上げを認めてくれないという事もあるかもしれません。
 
 消費者物価になりますと、外国産のトウモロコシや、豆、小麦、牛肉などを使っても、コーンスープや、豆腐、パン、牛丼などに占める輸入品の価格は1割以下の場合が多いですし、サービス関連などでは「輸入品?関係ないね」となります。

 日本のGDPに占める輸入の比率は10%強程度なので、GDPデフレータ(総合物価)で見ても、輸入品が1割上がってせいぜい1%ちょっとの影響しかないわけです。
 つまり、輸入品の価格が上がっても、最終製品(サービス)の価格は陸揚げされてから日本の国内でかかる、加工コスト、物流コスト、販売コストの方がずっと大きいので、消費者物価の上昇率を決めるのは、ほとんどが国内価格、その太宗は人件費という事になります。
 それに加えて、生鮮食料品のように天候などによって乱高下するものがありますから、そちらの影響の方が大きく出ます。

 こうした観点から、来年度の政府経済見通しの物価を見てみますと来年度の企業物価は2.3%の上昇で、消費者物価は1.1%の上昇という見通しです。
 多分輸入物価は上がり続け、人件費の方はそれ程上がらないという見通しなのでしょうが、今年度の消費者物価上昇0.7%に対して、来年度は1.1%が見通しという事は、3%賃上げの実現を見通しているのかもしれません。