tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

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2018春闘、奇妙な展開になりそうですが?

2017年12月22日 15時09分37秒 | 労働
2018春闘、奇妙な展開になりそうですが?
 マスコミによれば、経団連が2018春闘で、参加企業に3%賃上げを呼びかけるという事のようです。
 経団連の「経労委報告」は、1月になって出されるのが通例ですから、マスコミ報道はスクープなのか、それとも経団連が意図的に漏らしたものかわかりませんが、政府の「賃上げした企業には法人税を負ける」という発言と、平仄があっているので、「フェイク」ではないかななどと納得しています。

 政府が春闘に介入するのも異常ですが、経営サイドが賃上げのガイドラインを数字で示すというのは、日本でも滅多にないことで、昭和50年春闘で、当時の日経連が15%以下という数字を示して以来2回目です。

その時は、第一次オイルショック(昭和48年秋)のあとゼロ成長だった昭和49年春闘で32.6%の賃上げが行われ、日本経済が年率22%にインフレになり、一部にパニック状態が起きた時で、インフレ抑制が目的でした。

 今回は日本経済はほぼ順調で、しかし、消費不振が経済成長の足枷になっており、政府の掲げたインフレ目標の2%まで物価を上げるために、先ず賃上げ率を高めようという事のようです。

 一方、労働側の連合は「ベースアップ2%」という要求で、数字だけ並べれば、組合に要求が低く、経営者側の回答方針の方が高いという、逆立ち賃金交渉になっています。
 連合に言わせれば、ベースアップは2%だが、定期昇給2%相当があるので合計4%という事で、しかし定期昇給はすでに賃金制度・賃金協約などで決まっているものですから、要求はしないという事でしょう。

 政府はこの辺りの細かいことは多分解っていないので、毎年発表になる「春闘賃上げ率」(ベースアップ+定昇)を3パーセントに引き上げて、インフレ・ターゲットに繋げたいという事でしょうが、「なぜ」ターゲットが2%なのかこれは誰も知りません。

 2%ターゲット決めた経緯から言えば、アメリカのFRBがゼロ金利政策をとる際2%と決めたのをそのまま借用、という事のようですが、インフレ率とか失業率というのは、国によって正常とする水準が違うのが普通です。日本やドイツなどはインフレ率が低い国、アメリカやイタリア、フランスなどは高くなりやすい国というのが常識です。

 マスコミに出る専門家が、「インフレ率2%は国際標準」などと言っていますが、どこの経済学にも、そんなものはありません。
 失業率ならば、アメリカは5%台なら完全雇用状態、日本では2%台で完全雇用常態というのが常識でしょう。

 問題はいろいろありますが、一番解らないのは、3%賃上げをした企業に税金を負けるとした場合の3%とは何かという問題です。

 経団連の3%の背後には、安倍さんの3%賃上げがあるのでしょうが、政府からすれば、経済成長促進のために賃上げを奨励しているのでしょう。ならば、企業の払う人件費が増えなければ効果がありません。
 残業代が減ったから3%賃上げしました。賃金の高い高齢者の退職が多かったので3%賃上げの原資が出ました。人減らしをして3%賃上げしましたでは効果はありまあせん。
 逆に、賃上げは3%に届きませんでしたが、採用を増やしたので人件費は5%増えましたといった場合は、経済成長には貢献大でしょう。

 賃上げした企業には税金を負けるというのでしたら、賃上げに税金の補助金を出すという事ですから、誰もが納得する基準が必要でしょう。
 多分、各産業・各社各様の労使交渉に、政府が介入するからこうしたことになるのでしょう。

 賃金決定は労使の専管事項というのが「国際標準」と言えば、多分異議はないはずです。と言う事で政府は労交渉などに介入しないというのが、世界の常識なのではないでしょうか。 政府の仕事は別にあるように思います。