tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「付加価値と利益」再論

2017年12月13日 23時07分05秒 | 経済
「付加価値と利益」再論
 このブログの主要テーマは「付加価値」です。経済を計測する場合、最も大事なのは付加価値だと考えるからです。

 何故、付加価値(Value Added)が一番大事と考えるのかと言いますと、われわれは付加価値で生きているからです。
 これは国レベルで考えればすぐ解ります。どこの国でも政府が最も関心を持っているのは「経済成長率」です。経済成長率如何では、政権交代も起こります。

 経済成長率は、GDPの額が、昨年に比べて何%増えたかです。そしてGDPというはその国の国内で「1年間に生産された付加価値」の事です。国民がそれを創り、それを使って生活します。
 GDPが増えれば国民は豊かになり、国民1人当たりのGDPが大きい国は豊かな国、少なければ貧しい国という事になります。

 一方、企業という生産活動を担う代表的組織について見ますと「あの企業は業績がいい、付加価値が何%増えた」などと言う話はあまり聞きません。「利益が大幅に増えた」というのが一般的です。ここで重要なのは「利益」です。  

 なぜ、国で重要なのは「付加価値」で、企業だ重要なのは「利益」なのでしょうか。理由は多分、国は国民全体の事を考え、企業というのは株主のものですから、株主にとっての一番の関心事は利益だからでしょう。

 ここで基本的なのは「付加価値=人件費+利益」だという事です。国は、国民の生活を一番に考え、それを支えるのが企業と考えます。ですから、国民の生活の原資になる人件費(一般的には賃金)と、企業の生産活動を支える利益の両方を考えなければなりません。

 一方、企業は株主のものと考えられていますから、株主はまず利益が重要です。あまり人件費が多くなって、利益が減るのは好みません。利益が多ければ、配当も多くなるからでしょう。

 稼ぎの良い企業だという場合、稼いだのは付加価値か、利益か、立場によって違うという事でしょう。国にとっては企業の稼ぎは付加価値で、それが人件費に行っても利益に行っても、どちらでも税金(所得税と法人税)が取れるわけです。

 こうしてみると、経済を全体としてみるのには付加価値という視点から見ることが重要で、利益から見るというのは、経済の一部しか見ていないという事が解ります。

 最近はやりのマネー中心の経済学では、圧倒的に利益重視の視点が多く、EVA(Economic Value Added:経済的付加価値)などと言っても中身に人件費が入っていないといったことが起きます。

 マネー経済学が盛んになると、人件費の分析が手抜きになりがちですから、消費不振で、経済が成長しないなどという事の原因追及や対策の立案などは不得手になるのかもしれません。そういえば日本も最近消費不振ですね。