司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

「詐害的会社分割」と破産法による否認権の行使

2011-06-27 17:17:09 | 会社法(改正商法等)
 日司連第74回定時総会において,組織員から,「詐害的会社分割を可能とする現行会社法を早期に改正するための具体的活動をする決議」の承認を求める議案が提出されたが,過半数の賛成を得られず,否決という結果に終わった。

 日司連の定時総会における決議としての適否の観点からは,私も賛成し難いと考えていた(議事運営委員の関係で,自席にいなかったので,表決には参加していない。)。


 ところで,旬刊商事法務2011年6月25日号「新商事判例便覧」に,「2968 会社分割を原因とする個々の財産移転行為が否認権行使の対象となるとされた事例」として,福岡高裁平成22年9月30日判決(判例タイムズ1341号200頁)が紹介されている。

 上記福岡高裁判決は,会社分割自体が破産法による否認の対象となることを認めたわけではなく,会社分割による個々の財産移転行為が否認の対象となることを認めたものである。

 会社分割において,分割会社に対し債務の履行を請求することができる債権者は,会社分割につき異議を述べることができず(会社法第789条第1項第2号等),それゆえ会社分割無効の訴えの原告適格も有しない(会社法第828条第2項第9号等)ことから,「詐害的会社分割」に対して抗うことが難しい債権者が存するわけであるが,上記裁判例によれば,そのような債権者も破産法による保護を受けることはできることになる。

 すなわち,民法上の詐害行為取消請求のほかに,債権者による破産手続開始の申立てが可能である場合には,破産法上の否認権行使を期待することも考えられるわけである。
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会社法等の研修会

2011-06-27 14:24:03 | 会社法(改正商法等)
 今後の講師等の予定は,次のとおり。

 6月29日(水) 大阪司法書士会会員研修会(大阪市)※会社法
 7月27日(水) 東京司法書士会港支部会員研修会(東京)※法人制度
 8月20日(土) 千葉県司法書士会会員研修会(千葉市)※会社法
 9月 8日(木) 京都司法書士会会員研修会(京都市)※公益法人制度
10月 1日(土) 某会会員研修会 ※会社法
12月 7日(水) 某会会員研修会 ※公益法人制度
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士業団体が成年後見分野に乗り出す

2011-06-26 15:39:48 | いろいろ
 平成23年6月25日付日本経済新聞夕刊記事に,「高齢者らの財産管理、成年後見人増やそう 税理士・社労士の全国団体が推進機関設置」がある。

 日税連が来月「成年後見支援センター」を設立するとのことで,また,全国社会保険労務士会連合会も「成年後見推進委員会」を設置するそうだ。

 受け皿が拡がるのはよいことであるが,「財産管理」といっても,単なる「財産」の管理ではなく,法律的に被後見人等の利益を擁護する「後見」等を行うのが第一義である。

 各士業団体が成年後見分野に乗り出すにしても,「事業者」の意識を捨て去り,「後見」等の意識の刷込みを行うことが最初の一歩であろう。
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マンション管理費の滞納者氏名の公表

2011-06-26 09:52:01 | 不動産登記法その他
朝日新聞記事
http://www.asahi.com/housing/soudan/TKY201106240174.html

 いずこの団体も会費の滞納者には頭を痛めているものと思うが,間接強制としての滞納者氏名の公表には難しい側面があるというコラム記事。
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京都司法書士会の法教育連続講座

2011-06-25 20:54:09 | 法教育
京都新聞記事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110624-00000028-kyt-l26

 京都司法書士会では,平成12年度から法教育事業を実施しているところですが,平成23年度は,東稜高校において,連続講座を実施します。

cf. 京都法教育推進プロジェクト
http://www.siho-syosi.jp/houkyouiku/index.htm

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日司連第74回定時総会,終了しました

2011-06-25 08:17:11 | 司法書士(改正不動産登記法等)
 日司連第74回定時総会が,平成23年6月24日16:00,終結した。執行部提案の議案が一部否決される等の波乱も。

 今回の総会では,議事運営委員長を務めたが,想定以上に・・・とまれ,総会組織員の皆さん,執行部の皆さん,お疲れさまでした。

 東日本大震災の影響で,例外的に京都で開催されたわけですが,記憶に残る総会になりそうですね。
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分配可能額を超えた剰余金の配当(3)

2011-06-25 07:52:38 | 会社法(改正商法等)
改善状況報告書
http://www.ose.or.jp/f/news/21571/wysiwyg/news20160_01.pdf

 分配可能額を超えた剰余金の配当を行ってしまった上場企業が証券取引所に提出した「改善状況報告書」である。

 一度ミスをすると,たいへんである。

cf. 平成22年9月7日付「分配可能額を超えた剰余金の配当(2)」
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「債務整理事件における報酬に関する指針」の制定について

2011-06-25 07:42:02 | 司法書士(改正不動産登記法等)
「債務整理事件における報酬に関する指針」の制定について by 日司連
http://www.shiho-shoshi.or.jp/association/info_disclosure/info/info_detail.php?article_id=94

 日司連が,「債務整理事件における報酬に関する指針」を公表している。

cf. 平成23年4月6日付「日弁連『債務整理事件処理の規律を定める規程』」
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債権者に対する債務の返済が困難となった被災者の方へ

2011-06-24 06:31:55 | 東日本大震災関係
債権者に対する債務の返済が困難となった被災者の方へ by 法務省
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00093.html

 特定調停の申立手数料の特例措置等も紹介されている。
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新生銀行がレイクの事業を譲受け

2011-06-23 01:08:03 | 消費者問題
朝日新聞記事
http://www.asahi.com/business/update/0622/TKY201106220652.html

 株式会社新生銀行は,新生フィナンシャル株式会社から個人向け無担保ローン事業の一部事業譲渡を受ける。ただし,「新生フィナンシャル株式会社が貸金業者として締結した貸付契約に係る債権債務(過払い金返還債務を含む。)及び同契約上の地位は譲り受けない」だそうで。
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現下の厳しい経済情勢及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律が成立

2011-06-22 11:09:53 | 司法書士(改正不動産登記法等)
日経記事
http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819481E0E0E2E29B8DE0E0E2E4E0E2E3E39790E3E2E2E2

 ようやく成立した。記事中「来年3月まで継続」とあるが,「平成25年3月31日まで」の間違いである。

 施行日は,「公布の日」であり,現時点では未定であるが,租税特別措置が失効しないように,6月中には公布されるものと見られる。



現下の厳しい経済情勢及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案
http://www.mof.go.jp/about_mof/bills/177diet/index.htm#sy5

 登録免許税の特例については,次のとおりである。

・住宅用家屋の所有権の保存登記の税率の軽減(措法72の2)→平成25年3月31日まで延長
・住宅用家屋の所有権の移転登記の税率の軽減(措法73)→平成25年3月31日まで延長
・住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記の税率の軽減(措法74)→平成25年3月31日まで延長。条数が「第75条」に。
・特定農業法人が遊休農地を取得した場合の所有権の移転登記の税率の軽減(措法76)→削除
・利用権設定等促進事業により農用地等を取得した場合等の所有権の移転登記の税率の軽減(措法77)→平成25年3月31日まで延長。第2項削除。その他文言修正あり。
・信用保証協会等が受ける抵当権の設定登記等の税率の軽減(措法78)→平成25年3月31日まで延長。税率が,「1000分の1.5」に。経過措置があり,改正後の規定は,施行日の翌日以後にされる登記に係る登録免許税について適用され,施行日までにされる登記に係る登録免許税については,なお従前の例(1000分の1)による。
・勧告等によってする登記の税率の軽減(措法79、81)→第79条は,文言修正あり。第81条は,変更なし。
・関西国際空港株式会社等の登記の税率の軽減(措法82)→平成24年3月31日まで延長
・認定民間都市再生事業計画等に基づき建築物を建築した場合等の所有権の保存登記等の税率の軽減(措法83)→平成25年3月31日まで延長。文言修正あり。
・特定目的会社が資産流動化計画に基づき特定不動産を取得した場合等の所有権の移転登記等の税率の軽減(措法83の2)→文言修正あり。
・電子情報処理組織による登記の申請の場合の登録免許税額の特別控除(措法84の5)→平成24年3月31日までは,控除額の上限が4000円,その後平成25年3月31日までは,控除額の上限が3000円となる。後記の経過措置あり。

 その他,法第82条の3の規定が新設。



 ただし,法第84条の5の規定に係る経過措置が要注意である。

附則第79条第7項
 新租税特別措置法第84条の5の規定は,施行日の翌日以後に電子情報処理組織を使用して同条第1項各号に掲げる登記の申請を行う場合における当該登記に係る登録免許税について適用し,同日前に電子情報処理組織を使用して旧租税特別措置法第84条の5各号に掲げる登記の申請を行った場合における当該登記に係る登録免許税については,なお従前の例による。

 施行日は,「公布の日」(附則第1条柱書本文)であるから,例えば,「公布の日」が平成23年6月30日であるとすると,同日までにオンライン申請した登記に係る登録免許税については,軽減額の上限は,5000円であるが,7月1日以後にオンライン申請した登記に係る登録免許税については,軽減額の上限は,4000円となる。

 したがって,株式会社の設立の登記に係る登録免許税が本則金15万円である場合,6月30日までにオンラインで申請すると金14万5000円であるが,翌7月1日以降に申請すると金14万6000円となる。

 とまれ,「公布の日」は,要チェックである。
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日司連第74回定時総会

2011-06-22 10:16:53 | 司法書士(改正不動産登記法等)
 本年,日司連第74回定時総会は,6月23日(木)及び24日(金)の両日,京都市において開催される。

 いつもながらの,2日がかりのロングラン総会。平穏理に終わりますように。
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東日本大震災の被災者である相続人について,相続放棄等の熟慮期間を延長する法律が成立しました

2011-06-21 19:03:32 | 民法改正
東日本大震災の被災者である相続人について,相続放棄等の熟慮期間を延長する法律が成立しました by 法務省
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00092.html

cf. 平成23年6月17日付「東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をすべき期間に係る民法の特例に関する法律」が成立
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簡易合併の要件を満たすことの証明書

2011-06-20 11:12:37 | 会社法(改正商法等)
 合併による変更の登記を申請する場合に,簡易合併であるときは,「会社法第796条第1項本文又は第3項本文に規定する場合には,当該場合に該当することを証する書面」(商業登記法第80条第2号)を添付しなければならない。

cf. 平成23年4月15日付「簡易合併の可否」

 そして,「会社法第796条第3項本文に規定する場合に該当すること」というのは,「会社法第795条第1項から第3項までの規定は・・・適用しない」場合であることである。これは,「5分の1以下である」こととイコールではない。

 また,「会社法第795条第1項から第3項までの規定は・・・適用しない」場合であるということは,会社法第796条第3項ただし書に該当しない,すなわち「差損が生じない」場合であることを要するので,結局上記証明の内容としては,「差損が生じない」場合であることも含むと解するべきである。

 しかし,法務省HPの書式例が単に「5分の1以下である」ことの証明にとどまっているように読めるためか,巷間「5分の1以下である」ことのみの証明書がまかり通っているようである。さらに,無対価合併の場合に,証明書を添付せずに,申請書に「合併契約書の記載を援用する」旨を記載することで通用しているケースもあるらしい。不可解な話である。

 商業登記法第80条第2号書面に「差損が生じない場合である」ことが明示されていなくても,「会社法第796条第3項本文に規定する場合に該当することを証明する」とあれば,同項ただし書に該当しないことも証明していると善解することもできようが,単に「5分の1以下である」又は「無対価である」ことが判じるだけでは,「会社法第796条第3項本文に規定する場合に該当すること」を証明することにはならない。したがって,無対価であるからといって,申請書に「合併契約書の記載を援用する」旨を記載するだけでは,証明にならないというべきである。

 商業登記法第80条第2号書面は,本来「簡易合併の要件を満たすことの証明」のために添付しなければならないものとされているのであるから,要件を充足していることにつき,必要にして,十分な内容であるべきである。しかし,現状まかり通っている書面では,「証明」にならないことは言うまでもない。

 申請人側は,とかく負担が軽いことを喜ぶ嫌いがあるが,(資格者代理人としての司法書士は)商業登記法が「証する書面」の添付を要求している趣旨に鑑みて,「証する書面」として適格性を有する内容を盛り込むようにすべきであろう。法務省の書式例や登記所での通用如何にかかわらず,である。
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オンライン申請における登記完了証の書面交付の開始

2011-06-19 09:11:54 | 不動産登記法その他
オンライン申請における登記完了証の書面交付の開始(平成23年6月27日)について
http://www.touki-kyoutaku-net.moj.go.jp/information/info_201106.html#HI201106160303

オンライン申請における登記完了証の書面交付の開始に係る6月27日前後の取扱いについて
http://www.touki-kyoutaku-net.moj.go.jp/information/info_201106.html#HI201106160304

 不動産登記規則の一部改正によるものである。

cf. 平成23年3月25日法務省令第5号(一部未施行)
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