合併による変更の登記を申請する場合に,簡易合併であるときは,「会社法第796条第1項本文又は第3項本文に規定する場合には,当該場合に該当することを証する書面」(商業登記法第80条第2号)を添付しなければならない。
cf. 平成23年4月15日付「簡易合併の可否」
そして,「会社法第796条第3項本文に規定する場合に該当すること」というのは,「会社法第795条第1項から第3項までの規定は・・・適用しない」場合であることである。これは,「5分の1以下である」こととイコールではない。
また,「会社法第795条第1項から第3項までの規定は・・・適用しない」場合であるということは,会社法第796条第3項ただし書に該当しない,すなわち「差損が生じない」場合であることを要するので,結局上記証明の内容としては,「差損が生じない」場合であることも含むと解するべきである。
しかし,法務省HPの書式例が単に「5分の1以下である」ことの証明にとどまっているように読めるためか,巷間「5分の1以下である」ことのみの証明書がまかり通っているようである。さらに,無対価合併の場合に,証明書を添付せずに,申請書に「合併契約書の記載を援用する」旨を記載することで通用しているケースもあるらしい。不可解な話である。
商業登記法第80条第2号書面に「差損が生じない場合である」ことが明示されていなくても,「会社法第796条第3項本文に規定する場合に該当することを証明する」とあれば,同項ただし書に該当しないことも証明していると善解することもできようが,単に「5分の1以下である」又は「無対価である」ことが判じるだけでは,「会社法第796条第3項本文に規定する場合に該当すること」を証明することにはならない。したがって,無対価であるからといって,申請書に「合併契約書の記載を援用する」旨を記載するだけでは,証明にならないというべきである。
商業登記法第80条第2号書面は,本来「簡易合併の要件を満たすことの証明」のために添付しなければならないものとされているのであるから,要件を充足していることにつき,必要にして,十分な内容であるべきである。しかし,現状まかり通っている書面では,「証明」にならないことは言うまでもない。
申請人側は,とかく負担が軽いことを喜ぶ嫌いがあるが,(資格者代理人としての司法書士は)商業登記法が「証する書面」の添付を要求している趣旨に鑑みて,「証する書面」として適格性を有する内容を盛り込むようにすべきであろう。法務省の書式例や登記所での通用如何にかかわらず,である。
cf. 平成23年4月15日付「簡易合併の可否」
そして,「会社法第796条第3項本文に規定する場合に該当すること」というのは,「会社法第795条第1項から第3項までの規定は・・・適用しない」場合であることである。これは,「5分の1以下である」こととイコールではない。
また,「会社法第795条第1項から第3項までの規定は・・・適用しない」場合であるということは,会社法第796条第3項ただし書に該当しない,すなわち「差損が生じない」場合であることを要するので,結局上記証明の内容としては,「差損が生じない」場合であることも含むと解するべきである。
しかし,法務省HPの書式例が単に「5分の1以下である」ことの証明にとどまっているように読めるためか,巷間「5分の1以下である」ことのみの証明書がまかり通っているようである。さらに,無対価合併の場合に,証明書を添付せずに,申請書に「合併契約書の記載を援用する」旨を記載することで通用しているケースもあるらしい。不可解な話である。
商業登記法第80条第2号書面に「差損が生じない場合である」ことが明示されていなくても,「会社法第796条第3項本文に規定する場合に該当することを証明する」とあれば,同項ただし書に該当しないことも証明していると善解することもできようが,単に「5分の1以下である」又は「無対価である」ことが判じるだけでは,「会社法第796条第3項本文に規定する場合に該当すること」を証明することにはならない。したがって,無対価であるからといって,申請書に「合併契約書の記載を援用する」旨を記載するだけでは,証明にならないというべきである。
商業登記法第80条第2号書面は,本来「簡易合併の要件を満たすことの証明」のために添付しなければならないものとされているのであるから,要件を充足していることにつき,必要にして,十分な内容であるべきである。しかし,現状まかり通っている書面では,「証明」にならないことは言うまでもない。
申請人側は,とかく負担が軽いことを喜ぶ嫌いがあるが,(資格者代理人としての司法書士は)商業登記法が「証する書面」の添付を要求している趣旨に鑑みて,「証する書面」として適格性を有する内容を盛り込むようにすべきであろう。法務省の書式例や登記所での通用如何にかかわらず,である。
条文の解釈は難しいです。勉強になりました。
条文には「前条第1項の場合」という表現と「前条第1項に規定する場合」という表現がありますよね。
これは「前条第1項の場合」は、前条全体を指すのに対し、「前条第1項に規定する場合」は、前条の中に規定されている「~の場合」という一部分のみを指すという違いではないでしょうか。
商業登記法第80条第2号は「規定する場合」という後者の表現を使っているので、同第80条第2号の「会社法第796条第2項本文に規定する場合」とは、会社法第796条第2項本文の「第一号に掲げる額の第二号に掲げる額に対する割合が五分の一を超えない場合」の部分のみを意味するのではないでしょうか。
Unknown (YM)
2020-02-29 11:57:46
さんのとおりにも読めますね。
会社法第795条2項の算定方法は会社法施行規則195条により合併等の直後の額とされており、これを証させることは酷だからというのが理由でしょうか。
ただし、内藤先生が再三ご指摘されている通り、会社法第795条第2項の要件を満たしていなければ登記は通っても合併は無効でしょう。