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司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

会社の「本店」とバーチャルオフィス

2021-03-09 12:45:04 | 会社法(改正商法等)
日経記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJB085DZ0Y1A300C2000000/?fbclid=IwAR1xKkn12SEu5F1cp_QYbPUaZdJ3ib8ACjFuHj5rs5oPGo9xVYsPOPPe2fI

「法人登記に使える住所を貸し出すサービス」(上掲記事)?

 会社の「本店」について,明確な定義はないが,一般的には,会社の主たる事業所であって,その事業活動の中心となるものであり,対外的にも本店として取引ができる人的及び物的組織を備えることを要すると解されている。

 どの程度の本社機能(本社としての実体を備えた人的及び物的施設)を有すれば,本社の所在場所ということができるかは,事実認定の問題とされる。

 ところで,会社法においては,株式会社は,本店の所在地において設立の登記をすることによって成立するものとされ(会社法第49条),本店の所在地は,様々な訴えの専属管轄となる(会社法第835条第1項,第848条,第856条等)。

 また,株式会社は,定款,株主名簿,株主総会議事録,取締役会議事録,計算書類等の会社法が作成を要求する書類については,その本店及び支店に備え置かなければならない(会社法第31条第1項等)。定款等が書面をもって作成されているときは当該書面,電磁的記録をもって作成されているときは当該電磁的記録を常時備え置いて,株主,債権者又は親会社社員からの閲覧又は謄写の請求があれば,これに対応しなければならない(同条第2項,第3項等)。株式会社は,定款等を常時備え置く必要がある。

 会社の「本店」とは,このような意義を有するものであるから,簡単に「登記上の本店を貸します」といえるものではないはずであり,そのような実体を備えていないのであれば,会社法違反(会社法第976条第8号等)や電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法第157条第1項)に該当する可能性がある。記事にあるようなサービスを提供する会社も,幇助にあたる可能性がある。

 自宅マンションの住所を登記上の本店にすることがマンションの管理組合規約に違反する云々の議論があるが,「居住の用」に供する以外のことが管理組合規約に違反するのであれば,そもそも自宅を拠点としてビジネスを行うこと自体に問題があるのであり,登記を置く,置かないとは関係がないはずである。会社の従業員がいわゆる在宅ワークをすることが禁止されるものではないのは自明であることからすれば,仮に自宅マンションの住所を登記上の本店にしたとしても,不特定多数の来訪者がない等,マンションの平穏が害されないようなケースにおいては,管理組合規約の違反の問題は生じないと解されよう。

 さて。
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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2021-03-09 14:16:00
現実的にはVRなどを用いて各人が一定の場所に集うことなくあたまも面前にいるような会議など対面と同様の物が可能。
本店という物理的な場所が不要になるのはもはや未来の話ではない。
法律が現代技術に追いついていない感じは否めない
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Unknown (Unknown)
2021-03-10 18:14:42
詐欺の温床にならなければ良いがと願う。
実体のない法人、実在しない個人が役員。

規制しなければ、きっと悪用される、と思う。
簡単にできそう。

しかし、利用者多いですね・・
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社長の自宅になるよね (みうら)
2021-03-14 11:58:23
当然に
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破綻時に債権者が押しかけたりするから (みうら)
2021-03-14 14:18:12
登記禁止規約は合法と解しますがね。
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