公開会社でない株式会社において,株主が死亡し,株式の遺贈があった場合,遺贈は,株式の譲渡(会社法第127条)に該当するので,公開会社でない株式会社においては,当該株式会社の承認を要する。
この場合における譲渡の承認の請求手続については,会社法の原則どおりであり,株券発行会社である場合に,受遺者が株券を提示して請求(会社法施行規則第24条第2項第1号)することができるときは,受遺者からの単独請求が可能であるが,それ以外の場合には,受遺者は,死亡した株主の相続人と共同して請求しなければならない(会社法第137条第2項)。
この承認の請求を受けて,株式会社は,その承認をするか否かを,取締役会等の承認機関が決定することになる(会社法第139条第1項)。
ところで,株式の遺贈がされた場合,遺言執行者があるときは,遺贈の履行は,遺言執行者のみが行うことができる(民法第1012条第2項)。
したがって,株式の遺贈による譲渡承認手続については,遺言執行者は,受遺者に協力して手続をしなければならない(同条第1項)。
この場合は,問題はなかろう。
しかし,遺言執行者がないときは,遺贈の履行は,共同相続人全員が義務者となって行う。
したがって,相続人の協力が得られないときが問題となるが,「株式取得者が、株主として株主名簿に記載若しくは記録がされた者又はその一般承継人に対して当該株式取得者の取得した株式に係る法第137条第1項の規定による請求をすべきことを命ずる確定判決を得た場合において、当該確定判決の内容を証する書面その他の資料を提供して請求を」することになる(会社法施行規則第24条第1項第1号)。
普通に考えれば,勝訴判決は取れるであろう。
そして,次のステップである譲渡承認請求をした場合,定款で定める承認機関が「株主総会」であるときが,また問題となり得る。
遺贈の対象となっている株式は,当該株主総会において議決権を行使することができ,この場合に議決権を行使するのは,もちろん相続人であるからである。
受遺者が相続人以外の者である場合,共同相続人全員が一致団結して,「承認をしない」に票を投ずることがあるであろう。承認をしない決議がされた場合には,株式会社又は指定買取人による買取り(会社法第140条)の手続に進むことになる。
また,受遺者が相続人の一人である場合,権利行使者の指定等でまとまらず,そもそも議決権を行使することができないことがあり得る。
デッドロック状態で株主総会の承認をすることができない(定足数不足で議案を審議することができない。)場合,株式会社は,会社法第145条第1号の通知をすることができないから,承認をしたとみなされることになる。受遺者としては,ありがたいといえる。
この場合の株主総会の決議は,いわゆる普通決議(会社法第309条第1項)であるから,遺言者が主要な株主である場合には,テクニカルな方法であるが,徒に定足数を排除せずに,「定足数不足で議案を審議することができない」事態が将来するようにしておくことが考えられる。
cf. 平成29年3月15日付け「株主が死亡した場合の株式会社の対応は?」
平成30年8月25日付け「事業承継における株式の相続と改正相続法」
この場合における譲渡の承認の請求手続については,会社法の原則どおりであり,株券発行会社である場合に,受遺者が株券を提示して請求(会社法施行規則第24条第2項第1号)することができるときは,受遺者からの単独請求が可能であるが,それ以外の場合には,受遺者は,死亡した株主の相続人と共同して請求しなければならない(会社法第137条第2項)。
この承認の請求を受けて,株式会社は,その承認をするか否かを,取締役会等の承認機関が決定することになる(会社法第139条第1項)。
ところで,株式の遺贈がされた場合,遺言執行者があるときは,遺贈の履行は,遺言執行者のみが行うことができる(民法第1012条第2項)。
したがって,株式の遺贈による譲渡承認手続については,遺言執行者は,受遺者に協力して手続をしなければならない(同条第1項)。
この場合は,問題はなかろう。
しかし,遺言執行者がないときは,遺贈の履行は,共同相続人全員が義務者となって行う。
したがって,相続人の協力が得られないときが問題となるが,「株式取得者が、株主として株主名簿に記載若しくは記録がされた者又はその一般承継人に対して当該株式取得者の取得した株式に係る法第137条第1項の規定による請求をすべきことを命ずる確定判決を得た場合において、当該確定判決の内容を証する書面その他の資料を提供して請求を」することになる(会社法施行規則第24条第1項第1号)。
普通に考えれば,勝訴判決は取れるであろう。
そして,次のステップである譲渡承認請求をした場合,定款で定める承認機関が「株主総会」であるときが,また問題となり得る。
遺贈の対象となっている株式は,当該株主総会において議決権を行使することができ,この場合に議決権を行使するのは,もちろん相続人であるからである。
受遺者が相続人以外の者である場合,共同相続人全員が一致団結して,「承認をしない」に票を投ずることがあるであろう。承認をしない決議がされた場合には,株式会社又は指定買取人による買取り(会社法第140条)の手続に進むことになる。
また,受遺者が相続人の一人である場合,権利行使者の指定等でまとまらず,そもそも議決権を行使することができないことがあり得る。
デッドロック状態で株主総会の承認をすることができない(定足数不足で議案を審議することができない。)場合,株式会社は,会社法第145条第1号の通知をすることができないから,承認をしたとみなされることになる。受遺者としては,ありがたいといえる。
この場合の株主総会の決議は,いわゆる普通決議(会社法第309条第1項)であるから,遺言者が主要な株主である場合には,テクニカルな方法であるが,徒に定足数を排除せずに,「定足数不足で議案を審議することができない」事態が将来するようにしておくことが考えられる。
cf. 平成29年3月15日付け「株主が死亡した場合の株式会社の対応は?」
平成30年8月25日付け「事業承継における株式の相続と改正相続法」