司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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事業承継における株式の相続と改正相続法

2018-08-25 21:12:15 | 会社法(改正商法等)
 改正相続法が事業承継における株式の相続に与える影響について,検討を試みる。


1.株式の準共有
 遺言が存在しない場合,被相続人が所有していた株式については,遺産分割協議が未了の間,共同相続人全員の準共有となる点については,変更はない。


2.対抗要件
 株式の譲渡については,会社法第130条の規定により,いわゆる株主名簿の名義書換えが対抗要件となる。

 平成17年改正前商法においては,「株式ノ移転ハ取得者ノ氏名及住所ヲ株主名簿ニ記載又ハ記録スルニ非ザレバ之ヲ以テ会社ニ対抗スルコトヲ得ズ」(第206条第1項)であり,株式の相続についても対抗要件主義が採られていたが,会社法の下では,相続については明文の規定は置かれていない。この点,立案担当者によれば,名義書換えを要することなく,株式会社に対抗することができるものと解されている(相澤哲ほか編『論点解説 新・会社法』(商事法務)139頁)。

 もっとも,株式の共有者は,権利行使者の指定をして,株式会社に対し,その通知をしなければ,株主として権利行使をすることができない(会社法第106条本文)。

 改正民法は,共同相続における権利の承継の対抗要件に関する第899条の2の規定を新設し,自己の相続分を超える部分については,対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない旨を定めているので,株式の相続においても,この規定が適用されることになる。


3.遺言執行者
 株式の遺贈がされた場合,遺言執行者があるときは,遺贈の履行は,遺言執行者のみがすることができる(改正後の民法第1012条第2項)。

 したがって,株式の遺贈による名義書換えについては,遺言執行者は,受遺者に協力して手続をしなければならない(同条第1項)。

 特定財産承継遺言(いわゆる「相続させる遺言」)により株式の承継がされた場合,遺言執行者は,承継した相続人が上記第899条の2第2項に規定する対抗要件を取得するために必要な行為をすることができる(改正後の民法第1014条第2項)。

 したがって,遺言執行者は,この場合の株式の名義書換えについて,手続をすることができる(承継した相続人が自ら手続をすることができるのは,もちろんである。)。


4.遺留分を算定するための財産の価額
 従来,事業承継のための株式の生前贈与に関しては,相続開始前の例えば30年前にされたものについても,特別受益に該当するものとして,遺留分を算定するための財産の価額に算入すべきものとされていた。そのため,贈与の時点では株価が低くても,相続開始の時点で株価が高騰している場合に,大きな問題となっていた。

 この問題を解決するために,いわゆる中小企業経営承継円滑化法が制定されたのであるが,税務上の問題があるとして,なかなか活用されないままであった。

 改正後の民法第1044条第3項は,この点を「10年」に限定するものであり,事業承継のための株式の生前贈与を安心して行うことができることになったといえよう。


5.遺留分侵害額の請求
 現行民法において遺留分減殺請求がされた場合,現物返還が原則(民法第1036条)であり,例外的に金銭による返還をすることができる(民法第1041条第1項)ものとされている。

 改正後の民法第1046条第1項は,遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求権を定め,例外を認めていない。

 したがって,受遺者又は受贈者である後継者は,遺贈又は贈与された株式を返還することを要しないこととなった。

 また,株式の遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。)又は贈与に対して遺留分侵害額の請求がされた場合に,受遺者又は受贈者は,裁判所に対して,負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限の許与を請求することができる(改正後民法第1047条第5項)。

 よって,直ちに負担額の支払をすることができない場合にも,将来の利益等で分割払をすることが,明文で認められたといえる。

 なお,改正後の民法においては,例外はなく,金銭請求とこれに対する金銭支払のみであるから,合意により現物を返還するとしても,法的には代物弁済契約という別個の契約に基づく履行行為となる。


6.配偶者居住権
 中小企業の事業承継においては,相続財産がその会社の株式と事業用不動産しかないケースが多く,そのため,遺産分割の場面で,事業用不動産の売却を余儀なくされることがネックとなるとされてきた。

 改正後の民法で新設される配偶者居住権(改正後の民法第1028条以下)を活用すれば,当該建物を売却することなく,円満に遺産分割をすることができる場合もあるであろう。


7.自筆証書遺言の方式の緩和
 株式を遺贈しようとする場合,株券発行会社にあっては「株券」の写しを,株券不発行会社(定款に株券を発行する旨の定めがない株式会社に限る。)にあっては「株主名簿記載事項証明書」(会社法第122条第1項)を,自筆証書遺言に添付する財産目録として利用することができる(改正後の民法第968条第2項)。
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