京都文化博物館で『百花繚乱ニッポンXビジュツ展』が開催(8/25ー9/29)されています。
9月1日から7日に開催されているICOM(国際博物館会議)京都大会を記念して、東京富士美術館が所蔵する3万点のコレクションの中から、日本美術の名品が展示されています。
展示会の構成は絵画、浮世絵版画、漆工、刀剣、武具甲冑40点の名作を「キモカワ」「サムライ」「デザイン」「黄金」「四季」「富士山」の6つの章に分類しています。
刀剣を実際に手に持つようなスタイルで鑑賞できる刃文鑑賞特設ケースや、江戸時代に室内で灯明をあてて金屏風を鑑賞した様子を、VR技術を元にシミュレーション体験もできます。
作品は全て撮影可能です。
1章 キモカワ
円山応挙の描く犬や長澤蘆雪の描くウサギは、「カワイイ」魅力を放っています。
一方、曾我蕭白の描く仙人、東洲斎写楽の描く人物は今でいう「キモカワ」です。
これは日本美術の特徴の一つです。
猛虎図[重要美術品]
狩野尚信 江戸時代前期(17世紀)紙本墨画淡彩 軸装
右奥から流れる水流の緑に手をかけて佇む虎。
その口元を見ると薄く彩色があり、水にありつこうとする瞬間をとらえています。
周囲を窺うような視線を送る表情は、まるで猫のようでかわいらしい印象を与えます。
象図
伊藤若冲 寛政2年(1790)紙本墨画 軸装
象を画面いっぱいに真正面から描いています。一目で若冲と分かる作品です。
享保13年(1728)第8代将軍徳川吉宗の要請で実際の象が日本に持ち込まれており、若冲はおそらく京都でその象を実際に見たと思われます。
本作はおそらくその記憶をもとに、大迫力で描いたと考えられます。
若冲が手がけた「正面書きの象」は、代表作として名高い「樹下鳥獣図屏風」「鳥獣花木図屏風」を合わせて、現在確認できるのは5点のみ。本作はそのうちの稀少ない1点です。
狗子之図
円山応挙 享保18(1733)-寛政7(1795)
寛政年間初め(1790前後)頃 紙本墨画着色 軸装
3匹の仔犬が可愛らしい表情を見せながら佇んでいます。
画面左側になにか興味をそそがせるものがるのでしょうか。2匹は左視線を送っており、その心の動きをも感じ取ることができます。
応挙の狗子図は人気を博し、多く描かれました。
南天に雪兎図
長澤蘆雪 宝暦4(1754)-寛政11(1799)
天明1年(1781)頃 絹本着色 軸装
雪の中、2羽の可愛らしい兎がいます。
この作品は落款印章の特徴から、蘆雪の作画の最初期にあたる天明1年(1781)頃の作と考えられます。
この頃の蘆雪は師である円山応挙の画風に忠実に描くことが多く、本作も応挙の作品を参考に描いと考えられます。
蝦蟇仙人図
曾我次郎暉雄 款(曾我蕭白) 享保15(1730)-安永10(1781)
江戸時代中期(18世紀) 紙本墨画 軸装
蝦蟇仙人は中国の仙人で、3本足の蝦蟇(ヒキガエル)を操るとされています。
仙人はお腹の着衣の中にヒキガエルを抱き、西王母と蝦蟇との逸話にちなみ仙桃を想起させる桃の枝を手にしています。
蕭白30代前半頃の比較早い時期の作と考えられます。
市川鰕蔵の竹村定之進
東洲斎写楽 生没年不詳、作画期:寛政6(1794)-寛政7(1795) 寛政6年(1794) 木版多色刷 大判錦絵
寛政6年(1794)の5月に河原崎座で上演された「恋女房染分手綱」の一場面で、前半の山場・道成寺の主役である能師役の竹村定之進を描いたものです。
演ずる市川鰕蔵は5世市川団十郎のことで、当代随一の名優と謳われました大ぶりの体格、彫りの深い顔と顔全体を使った豊かな表情が、この役者がもつ堂々たる風格を伝えています。
里すずめねぐらの仮宿
歌川国芳 寛政9(1797)-文久1(1861)
弘化3年(1846) 木版多色刷 大判錦絵三枚続
本図は弘化2年(1845)の暮れ、吉原が火災に遭い、仮宅(吉原以外の仮の営業所)での営業を余儀なくされた模様を描いています。
天保の改革によって役者絵や遊女に関わる絵が禁止されたため、国芳は人物を雀に見立てて描き、その規制をかいくぐり、ユーモア溢れる世界を創出しました。
相馬の古内裏
歌川国芳 寛政9(1797)-文久1(1861)
弘化2-3年(1845-46)頃 木版多色刷 大判錦絵三枚続
相馬の古内裏は、相馬小次郎こと平将門が下総国に建てた屋敷で、将門の乱の際に荒れ果ててしまっていた廃屋です。
妖術を授かった将門の遺児はこの廃屋に仲間を募り、やがて妖怪が出没するようになります。それを知った源頼信の家臣が妖怪を退治してその陰謀を阻止するという説話を描いています。
みかけハこハゐがとんだいゝ人だ
歌川国芳 寛政9(1797)-文久1(1861)
弘化4-嘉永5(1847-52)年 木版多色刷 大判錦絵
戯画のうち「寄せ絵」と呼ばれるものです。
人間の目、鼻、口から眉毛、丁髷にいたるまで、さまざまな姿態の人間を組み合わせて表現するというユニークな趣向に富んだ作品です。
また着物の文様から鎌倉時代の武将・朝比奈義秀の関係性も取り沙汰されています。
名所江戸百景 浅草田圃酉の町詣
歌川広重 寛政9(1797)-安政5(1858)
安政4年(1857) 木版多色刷 大判錦絵
格子の外を見つめる猫の後ろ姿が可愛らしい。
飼い主の遊女は接客中のようで、畳には客が持参したのでしょう、浅草の鷲神社の酉の市土産の熊手型の簪が転がっています。
猫は縁起物の熊手を買い求める参詣客で賑わう酉の市の喧騒に耳をそばだてているようです。
鯱形兜
江戸時代中期(18世紀) 鉄、張懸、革、絹、漆
鯱をデザインした変わり兜です。
兜鉢は薄鉄の五枚張りで、その上に鯱の形を和紙で厚く張り抜いています。
全体を厚く漆で塗り固め、口と鼻孔は朱漆塗りです。
武士の好みを反映した奇抜なデザインながら、和紙の張り抜き技術や漆塗りの仕事も優れています。
明日に続きます。